2018年2月17日発売
山男を死に誘ったのは、怪異なのか、山の怒りなのか、それとも自身への過信なのか…… 山でしか起こり得ない人と人の出会い、生きる者と死者の思いをつなぐものーー。恐ろしくも心ゆさぶる山の怪異。 冬の雪山で、小さな避難小屋の静寂を破るけたたましいノックの音と叫び声。だが、その意味を理解した瞬間、恐怖が襲いかかる「雪山の叫び」。雪の大汝山で下着一枚という異様な姿で発見された男性の遭難遺体。残された日記の最終ページに戦慄する「最後の日記」。数々の奇跡的な生還を遂げ、”おれは不死身なんだ”とうそぶく男が屏風岩の登攀で陥った危機ーー彼の本音が哀切な「不死身の男」他、山の怪異を自然の風景描写を織り交ぜながらつづる21篇を収録。現実と地続きでありながらも、異界としての山の風景と霊気を堪能できる、山岳怪談の決定版。
傭兵団同士の抗争に勝利し、ビムラの最大手にまで登りつめた山猫傭兵団。それは業界内の勢力図が大きく塗り替わり、大きな注目が集まることを意味していた。団員たちの生活向上のため、密かに商工ギルドに属さない商売を始めたウィラード。しかし、傭兵が自分たちの既得権益を侵食してくることを権力者たちが許すはずがなかった。ビムラ中央会議議長、エルツマイユが選んだ方法はー「本日はウィラード・シャマリ殿に、おめでたいお話をお持ちいたしました」。持ち込まれた縁談は団員たちを巻き込んでの大騒ぎを呼び起こす。なぜなら、その相手が…。
世界的な台湾女性作家の傑作短篇集 李昂(リー・アン)は、女性の内面や性、社会の伝統との葛藤をテーマに創作を続けている、台湾で最も著名な女性作家である。英・仏・独・蘭・伊・韓・スウェーデン語など、世界各国で作品が翻訳刊行され、注目を集めている。 本書は、デビュー当時から翻訳を手掛ける藤井省三氏が、1970年〜2000年代に書かれた作品から八篇を独自に選んだオリジナル短篇小説集である。初期の抒情性に溢れた作品、実験的な心理小説、そして中期を代表する二・二八事件の後日談としての政治とセックスの物語、最近作からは、台湾の歴史を描く幽霊物語と政治的グルメ小説を収録した。 都市化の波に取り残された港町に生きる女性、結婚後の夫との関係に悩む妻、幽霊となって故郷を見守る先住民の女性など、女性の視点から台湾の近代化と社会の問題を描く。李昂の豊饒な文学世界を堪能できる一冊。 「母、娘、妻、花嫁、老婆、若い女、死んだ女、鬼になった女、いまここを生きている女。--時を超えて響きあう彼女たちの声に圧倒された」--中島京子氏推薦!
ジェファーソン・テイトは米国随一の家系調査士。依頼を受け家系図を作る毎日だが、ある富豪からの仕事に苦戦していた。数百年前に渡英した一族のうち6人の記録が不可解に消えていたのだーまるで歴史から抹殺されたかのように。系図を完成すべくイギリスに渡ったテイトは彼らの足跡を辿るが、その周辺で謎の失踪や死亡事故がいくつも起きていると判明し…。一族に隠された悲しい真実とは!?
目覚めると、少女エムは傷だらけの体で独房に繋がれていた。排水口の奥には見覚えのない自筆のメモ。15行のリストの最終行には、ある人物の抹殺が指示されていた。対象者は天才科学者ジェームズ。メモによれば、これまで14回、過去に戻り未来を変えようとしたが失敗し、残された最後の手段はジェームズをー初恋の彼を殺すことだという。エムは意を決し、時のうねりに飛び込んだ。