2018年2月6日発売
夫の山田信・英文学教授は、渡仏中に突如パリで洗礼を受けカトリック信者になってしまう。妻の桂子は夫の独断、裏切りに自尊心を深く傷つけられる。二人の子供の将来を案じながらも、棄教か離婚かの選択を夫に突きつけ、夫婦の間で“宗教戦争”が勃発するのだがー。生涯“物語文学”を追求し続けた倉橋由美子が、禁じられた愛や夫婦交換をキリスト教を背景に描き、知識人階層を鋭く風刺した問題作。倉橋文学後期の傑作「桂子さんシリーズ」の第二弾。棄教か離婚かー驚愕の“夫婦間宗教戦争”を描いた異色作。
戦後十年、日本人はまだ貧しい生活を送りながら大国アメリカの豊かな物質文化や娯楽産業に憧れをいだいていた。クリーネックス・ティシューや雑誌「ヴォーグ」、そしてハリウッド映画。そんな時代に、二十代半ばの青年重吉と演劇に没頭している椙枝は二人で愛をはぐくんでいた。一向に見えない自分たちの将来に悪戦苦闘しながらも愛と希望だけを頼りに生きる、往時の若者たちが瑞々しく描かれる。全4編からなる第96回直木賞受賞作。1955年、夢のアメリカに恋い焦がれた若者たちの青春群像小説。
中国清代、巷で口承される怪異譚を蒲松齢が書き綴った、怪奇短編集の白眉とされる『聊齋志異』。森敦がこの500余話から選び抜いた19話を、私家版で翻案した。妖術、呪い、幽霊など摩訶不思議な事象に加え、酒好き、大食らい、ひょうきん者、母と暮らす嫁の来てのない男らが登場し、現代にも通ずる親しみ、可笑しみも溢れている。
イギリス南部に暮らすジェスは、十歳の娘タンジーと、別居中の夫の連れ子ニッキーを育てる二十七歳の極貧シングルマザー。ずば抜けた数学の才能を持つタンジーは学校から数学競技会出場を薦められるが、会場への旅費さえままならない。一方、ジェスが清掃の仕事をしている高級コテージでは、逮捕の危機にさらされたIT長者のエドが引きこもっていた。最悪の出会い方をするジェスとエド。なのに彼がこの凸凹家族と老犬一匹を連れ、車でスコットランドの競技会会場を目指し英国縦断の旅をすることに…。メガヒット作家が新しい形の家族を描く愛と希望の物語!
イギリスでの俳優教育の基本、技術を学ぶためのロンドンの演劇学校に留学した三十九歳の鴻上氏。準備は万全、のはずだったが、そこは想像を超える“英語の戦場”だった!日本では名の知れた演出家で作家の著者が、英語の聞き取りに苦戦しながら、ぴちぴち黒タイツを身につけ鬼ごっこをしたり動物の真似をしたり。時折演出家の視点が覗くも生徒に徹し、イギリス流ワークショップに取り組む姿がユーモラスな文体で綴られる。俳優志望者だけでなくすべての人の人生に有益な、泣き笑い奮闘記。文庫化にあたり、装画を担当した役者で芸人の片桐仁氏との特別対談も収録。
「宝島を見つける!」とジャイアンたちに宣言したのび太は、ドラえもんのひみつ道具“宝探し地図”を使って宝島を探す。地図が指し示した場所は、太平洋上に突然現れた新しい島だった。ノビタオーラ号で宝島に向かったのび太たちは、あと少しで島に上陸というところで海賊から襲われ、しずかをさらわれてしまう。はたしてのび太たちは海賊からしずかを助けることができるのか?そして宝島に眠る財宝に隠された秘密とは!?川村元気が、初めて脚本をてがけた映画ドラえもんを完全小説化。「一番尊敬する作家は、藤子・F・不二雄だ」川村元気「刊行に寄せて」も収録。
高校生の西見薫は父を亡くし、親戚の暮らす長崎県佐世保の町へ引っ越してきた。転校先の高校で孤独を感じる薫だったが、同じクラスの「札付きの不良」と恐れられる川渕千太郎に誘われ、レコード店の娘である迎律子の家で、ジャズ音楽に出会う。一生ものの友情と、一生ものの恋。ジャズの魅力に取りつかれた薫は、親友と奏でるセッションを町中に響かせていくー。二〇一八年三月に公開予定の映画「坂道のアポロン」(主演・知念侑李)を完全ノベライズ!原作コミックスは「このマンガがすごい!2009」オンナ編第一位にも輝いた、人気漫画家小玉ユキの名作。
本の街、アウトドアの街、楽器の街…。いくつもの顔を持つ東京・神保町を震撼させる惨殺事件が発生した。地元に生まれ育った法学部准教授の吾妻は被害者が高校の後輩であることを知る。楽器店のオーナーだった後輩の店からは一億二千万円の超高級ギターがなくなっていた。調べていくうちに吾妻はヴィンテージギター業界の内情、オークションの世界のからくりを知る。犯人を追跡する彼をことごとく妨害するのは旧知の地元署の刑事。そして浮かび上がってきたのは狂乱の地上げ時代の亡霊たちだった…。堂場瞬一渾身の社会派ミステリー。神保町の名店も多数登場。
九歳で親を亡くしたジェーン・スティールは、親戚によって寄宿学校に送られた。そこで彼女を待っていたのは、想像を絶する過酷な日々だった…。艱難辛苦の末に自由の身となった彼女は、人目を避けてロンドンの片隅に暮らしていた。そしてある日、幼少期を過ごした屋敷の新しい主が出した求人広告を目にし、思うーあの屋敷を手に入れられないだろうか?そして彼女は素性を偽って屋敷で働きはじめるが、インド帰りの謎めいた主人と惹かれあい…。気丈なヒロインの活躍を描く異色のヴィクトリア朝ミステリ!
空飛ぶ自動車にロボットメイド、宇宙観光…かつて人々が夢見た輝かしい未来が実現したもう一つの2016年からぼくはやってきた。きみたちの“間違った世界”に。この世界がディストピアになったのは、すべてぼくのせい。クリーンなエネルギーを無限に生みだす革命的装置ゲートレイダー・エンジン起動の瞬間に、ぼくが立ち会わなければ…。世界を変えてしまった残念な時間航行士の冒険を描く、可笑しくも哀しい時間SF。
現代日本SF第一世代作家6人の傑作選を日下三蔵の編集により刊行するシリーズ。第4弾は“ウルフガイ”『幻魔大戦』で知られる平井和正。デビュー作「レオノーラ」、「死を蒔く女」「虎は目覚める」「転生」など、人間の残虐性と暴力性を抉り、暗い情念あふれる初期中短篇10篇を第一部に収録。第二部は、黒人サイボーグの誇りと哀しみを描くSFハードボイルド長篇『サイボーグ・ブルース』、付録として『デスハンター』のエピローグを特別収録
その夜、マルティンとオーサの夫婦が自宅近くのレストランで食事をしていた、そのほんのわずかな間に、11歳の娘マグダが自宅から忽然と消えた。必死に情報提供を呼びかける夫婦だったが、警察や世間は彼らに疑いをかける。夫婦の間でも互いへの疑心がつのり、やがて彼らの周囲の人々にも波紋は広がって…事件のそもそもの発端は?そしてマグダは今どこに?交錯する過去と現在の人間模様が描き出す鮮烈なサスペンス!
プロの強盗のフィンは仲間とともに大規模な列車襲撃を決行した。万事順調だったが、なぜか急襲してきた警察に逮捕され一同刑務所へ…七年後、娑婆に出たフィンを大仕事が待っていた。獲物は希少金属ロジウムの山、総重量約一トン。鉄道基地にある難攻不落のハイテク倉庫が相手だ。しかしフィンに秘策あり。仲間を集め、準備を進めるが、彼らが予想もしないところで完全想定外の事態が進行していた!痛快ケイパー小説。
いじめ、うわさ、夏休みのお泊まり旅行…お決まりの日常から逃れるために、少女たちが試みた、ささやかな反乱。生きることになれていない、小学生から高校生までの主人公たちの、不器用なまでの切実さを描く、直木賞作家の傑作青春小説集。「学校ごっこ」「夏の出口」など四篇を収録。
今一度思い出してみてほしい。あなたが闘争の領域に飛び込んだ時のことをー。「自由」の名の下、経済とセックスの領域で闘争が繰り広げられる現代社会。自意識の強い顧客、列車の女子学生、同僚の馬鹿女、薄着の看護師…。愛を得られぬ若者二人は出口のない迷路に陥っていく。『素粒子』『服従』ほかベストセラー作家、魂の原点。
朝は三女の喫茶店、昼は次女の讃岐うどん屋、夜は長女のスナックー朝・昼・夜で業態がガラリと変わるその店は通称「三人屋」。やって来るのは、三女にひと目惚れしたサラリーマン、出戻りの幼なじみに恋する鶏肉店主、女泣かせのスーパー店長など、一癖ある常連客たち。三姉妹が作るごはんを口にすれば、胃袋だけじゃなく、心もたっぷり満腹に!?
「文化的遺産はすべて、それをめぐる人とのかかわり合いにおいてこそ、後世の人々の心をより強く打つものなのだ」隠密が潜み、裏切りが行われ、亡霊がさまよう。-北は松前城から南は鹿児島城まで、全国三十の古城名城にまつわる秘話裏話伝説記録を、そこに込められた哀しみと憤りと、怨念と呪詛と、闘いとその血汐とともに鮮やかによみがえらせる。
社会の落伍者が集まるアパート「飛田ホテル」。刑期を終えたヤクザ者の有池が戻ると待っているはずの妻がいない。有池は妻の足取りを追うが、思いもよらなかった彼女の姿を知ることになる(表題作)。昭和の大阪、光の当たらない暗がりで悲しく交わる男女の情と性。自身も大阪のどん底を経験した直木賞作家が「人間の性」を抉り出す、傑作ミステリ短篇集。
地下アイドル・愛野真実の応援だけを生き甲斐にするぼくは、ある日、彼女が殺人犯だというニュースを聞く。かわいいだけで努力しか取柄のない凡庸なアイドルである真実ちゃんが殺人犯なんて冤罪に決まっていると、やはり真実ちゃんのファンだという同じクラスのイケメン・森下とともに真相を追い始めるがー。歪んだピュアネスが傷だらけで疾走するポップでダークな青春小説!