小説むすび | 2018年4月20日発売

2018年4月20日発売

ある子どもある子ども

『ギヴァー』ファンのみなさま、長らくお待たせいたしました。シリーズ四部作の完結編(原題:SON)をお届けいたします。  物語は、ひとりの男児の誕生からはじまります。彼を産んだのは、14歳の少女クレア。12歳で〈出産母〉を任命された彼女の、これが初産でした。〈コミュニティ〉では、すべての新生児は厳重な管理下におかれ、やがて「適正な養親」の手にわたります。母子は産後すぐにひきはなされ、二度と会うことはできません。クレアも掟にしたがい、わが子をあきらめようとします。しかし、どうしてもあきらめきれません。とかくするうち、男児は「社会不適合」の烙印をおされ、処刑が確定します。  この赤ん坊がだれか、みなさますでにおわかりでしょう。そう、ジョナスの運命を変えたゲイブです。つまり本作は、ゲイブとその母の物語です。  もちろん、作者は寓話の達人ですから、それだけで話はおわりません。前作『メッセンジャー』の世界に暗い影をおとした〈トレード・マーケット〉の謎が、クレアたち母子をまきこみつつ、善と悪の最終決戦へと発展していきます。そこにジョナス、そして第二作の主人公キラ、前作で非業の死をとげたマティもからんできます。  そして、これもいつもどおり、スリリングな展開のあわいにいくつもの問いが埋めこまれています。まつろわぬ自然の象徴としての赤ん坊。代理出産やデザイナーベイビーをめぐる生命倫理の問題。当然視されている「取引」や「交換」という行為の陥穽。「力」「旅」「記憶」の意味……シリーズ全作にいえることですが、今回も思索と対話をうながす教養小説としての醍醐味に溢れています。  はたしてクレアとゲイブは、母子として再会することができるのか。それを阻もうとする邪悪な「力」に、ジョナスたちはどのように立ちむかうのか。現代の『オデュッセイア』ともいうべき壮大な物語の環が、おどろくべき仕方で、しずかに閉じてゆく瞬間をお見逃しなく。(しまづ・やよい)

幸運なんてわたしはいらない幸運なんてわたしはいらない

『ニューヨークタイムズ』『USAトゥデイ』ベストセラー2冠!! 衝撃のデビュー作『Luckiest Girl Alive』がついに邦訳。 ≪あらすじ≫ ニューヨークの敏腕雑誌編集者アーニーは、上流階級出のエリート金融マンをフィアンセに持ち、華々しい生活を謳歌していた。しかし、彼女には暗い過去があった。高校生の時に彼女は、自らの尊厳を踏みにじられた凄惨な経験をしたのである。アーニーは、本当の自分を取り戻すために、自らを主人公としたドキュメンタリーへの出演を決意した。だが、アーニーの闘いは、過去の清算にだけあるのではなかった。今この瞬間にこそ、逃げてはいけない闘いがあった。 この作品は、一人の女性が挫折と悲しみと妥協を乗り越えて、一人の人間として立ち上がるまでを読者に追体験させる物語である。 著者プロフィール ジェシカノール コスモポリタン誌の上級編集者、SELF誌の編集者。フィラデルフィア郊外に生まれ育ち、ブリンマーのシップリー高校を卒業後、NYのホバートアンドウィリアムスミス大学を卒業した。現在は夫とともにニューヨーク市在住である。本書はデビュー作である。 訳者プロフィール 箸本すみれ 英米文学翻訳家。上智大学英文学科卒。主な訳書に『フラワーフェアリーズの日記』(大日本絵画)、『ファースト・ラブ』(主婦の友社)、『チェルノブイリから来た少年』(竹書房)などがある。

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