2018年7月27日発売
早くに親を亡くしたナターシャは、ギリシアの養父のもとで育った。今は養家を離れ、ひとりロンドンで家事代行業を営んでいる。ある日、養父の死後、海運事業を引き継いだ義兄たちから呼び出された。悪賢い目をした義兄たちは家業が倒産寸前だと説明したあと、1枚の紙をナターシャの前に置いて言った。「おまえがここにサインさえすれば、この家は守られる」ナターシャは文面を読んでショックを受けた。悪名高きプレイボーイ大富豪ーアレクサンドロス・マンドラキスと結婚しろですって?ひどいわ、ライバル会社の社長に私を売るだなんて!
床にはいつくばって銀行のオフィスを掃除していたサラは、不意に聞こえてきた男性の声に凍りついた。この声は…ラウル!間違いない。二人は5年前、海外のボランティア活動で知り合った。ラウルは帰国する際、永遠の約束を求めるサラに冷ややかに告げた。「ぼくの人生設計の中に、きみは存在しない」あれから彼は野望を次々と実現し、今や銀行のオーナーだという。一方、サラは清掃員となり、ぎりぎりの生活を送っていた。でも、どんなにみじめで逃げたくても、再会したからには言わなければ。ラウルとわたしには、4歳になるかわいい息子オリヴァーがいることを。
メアリーとリードは子供のころからの大親友。でも、メアリーはいつからか彼を男性として意識するようになっていた。21歳の誕生日を前にしたある日、メアリーはリードに頼みこんだ。“女としての歓びを教えて”と。突拍子もない依頼にリードは困り果てるが…(「プレゼントは愛」)。夏の恋は熱く、激しく、せつなくー人気作家が描く、珠玉の短篇5篇を収録!
サラは、親友夫婦の船舶旅行に同行していた。ある島に寄港した一行の船の隣に、豪華なクルーザーが停泊する。クルーザーの所有者は、ナポリ名門一族の完璧な貴公子らしい。興奮ぎみな親友の言葉を、サラは聞くともなく聞いていたが、夜のパーティに現れた男性を見て、言葉を失うしかなかった。グイード・バルベリー二度と会いたくなかった、かつての夫。身ごもっていた子を流産すると、彼の父から手切れ金を渡され、ぼろ屑同然に追い払われたのだから。泥棒猫とまで蔑まれて。身動きできないサラに、彼の怜悧な美貌が平然と微笑んでいた。
ブルーデンスが憧れのニコロスと結婚して、8年の月日が流れた。今でこそ彼は大企業の最高責任者として辣腕をふるう身だが、傾きかけた父親の会社を救うため、彼女と結婚しただけなのだ。しかも結婚式では酒をあおり、初夜の契りを頑なに拒絶したー思い出すだけで、胸を焼くような悲しみがこみ上げてくる。夫への未練を断ち切るため、ついに彼女は離婚を切り出していた。ところが予想外にもニコロスは、この結婚を本物にしたいと、君が望むなら、肉体関係を結んでもいいと言い出したのだ。彼の真意がつかめず、ブルーデンスの心は締めつけられるが…。
またもや弟が金目当ての女に引っかかったらしいー雨の中、グザヴィエは場末で働くリサを待ち伏せするが、濡れそぼる彼女の清らかな美しさに、思わず見惚れてしまう。ほどなくして、彼女をものにしたグザヴィエが、もしかしてリサは思っていたような女性ではなかったのかとほだされかけた矢先に、弟から電話が入ったのだ。リサが求婚されているのをもれ聞いたグザヴィエは、思わず、恫喝していた。一族の金を狙うこの売女め。僕は君の本性を暴くために近づいたと。
闇の果てを思わせる迷宮に、アンバーはいた。事故で脚を引きずるようになり、孤独と無力感に蝕まれていた。そんななか、知り合った会社社長ジョエルの申し出で、やはり脚の悪い、彼の幼い息子の面倒を見るために、半年間だけ、肉体関係のない契約結婚をすることになったのだ。アンバーは、ジョエルの類いまれなる美貌に目が眩んでしまう。だが、彼に惹かれれば惹かれるほど、自分の傷に引け目を感じる。そして心が痛むのだ。愛される資格がないとわかっているから。たとえキスをされても、それは同情にすぎないのだと。
騙されて、妹が背負わされた負債をブリーはいま、清算した。部屋を出ようとしたそのとき、聞き覚えのある声が響きわたる。「勝負をしないか。賭けるのは100万ドルと、君の体だ」ブリーはその場に凍りついた。声の主がウラジミールだったから。10年前にブリーを見捨てた、魂もくらむほど美しい大富豪。彼のせいで妹と二人、奈落の底の人生を歩むことになったのだ。ところが、運命の女神はウラジミールに微笑む。わななく唇を噛みしめるブリーに、彼は皮肉な笑みを浮かべた。「これで君は僕のものだ。僕が望むあいだ、ずっと」
天涯孤独のメリーは病院で働き、ひっそりと暮らしていた。ある日、メリーの輸血で救われた患者ジュールダンの熱心な誘いで、食事に出かけることになり、そこで上流階級の彼から、偽装結婚を申し込まれる。娘の親権のために、後腐れのない彼女を妻役に選んだだけーそうと知りながらも、生まれて初めて優しくされて、一回り以上も年上のジュールダンに次第に惹かれていくメリー。ところが、彼の元妻が再婚し、娘の親権が取れなくなってしまう。用済みになったメリーは、別離の予感に小さく震えた…。
勇者サスケー異世界に召喚された彼は、“熱制御”のスキルを使い魔王を倒し、異世界を平和に導いた。サスケは魔王討伐後、一度は現実世界に戻るが、なぜか再び召喚されてしまう。再召喚された理由が魔王の復活だとサスケは危惧するも、その兆候はなかった。ならば今度は「本当にやりたいことをやろう!」と決意。サスケが憧れていたのは、隠密行動で任務を遂行するダークヒーロー“暗殺者”になることだった。超有名なアサシンマスターが弟子を募集していることを知ったサスケは、試験会場に乗り込むが、元来、隠密行動が100%苦手な上に、勇者としての飛び抜けた能力が邪魔をして、全く思い通りにいかなくてー!?