2018年7月28日発売
一枚の百円紙幣が語り手となり、闇屋、陸軍大尉などを転々としながら見た欲と情の光景を綴る太宰治「貨幣」。会社の命令で闇食糧の調達に奔走し、その最中に逮捕された朝鮮人の悲惨な運命を描く鄭承博「裸の捕虜」。平凡な会社員が電車内での突発事から闇屋として生き抜くことに目覚める梅崎春生「蜆」-終戦時の日本人に不可欠だった違法空間・闇市。その異様な魅力を伝える名短篇11作を収録。
音楽家の父を探すため、アメリカの難関音楽学校を受験した脩。癖のある受験生や型破りな試験に対峙する中、会場で「アメリカ最初の実験」と謎のメッセージが残された殺人事件が発生。やがて第二、第三と全米へ連鎖していくその事件に巻き込まれた脩は、かつて父と仲間が音楽によって果たそうとした夢こそが事件に深く関わっていたと知る。気鋭の作家が描く全く新しい音楽小説、ここに誕生!
会津出身の父から「喧嘩は逃げるが、最上の勝ち」と教えられ、反発した鷹志は海軍の道を選び、妹の雪子は自由を求めて茨の道を歩んだー。海軍兵学校の固い友情も、つかの間の青春も、ささやかな夢も、苛烈な運命が引き裂いていく。戦争の大義を信じきれぬまま、海空の極限状況で、彼らは何を想って戦ったのか。いつの時代も変わらぬ若者たちの真情を、紺碧の果てに切々と描く感動の大作。
引き揚げられた木箱の夢想は千尋の底海の底蒼と闇の交わる蔀。…留学生時代、手に入れた古い絵はがき。消印は1938年、差出人の名はアンドレ・L。古ぼけた建物と四輪馬車を写す奇妙な写真の裏には、矩形に置かれた流麗な詩が書かれていた。いくつもの想像を掻き立てられ、私は再び彼地を訪れるが…。記憶と偶然が描き出す「詩人」の肖像。野間文芸賞受賞作。
私の二番目の恋人になってくださいー自由な校風の私立学園の新任教師・佐竹は妖艶な音楽教師・万輝と一夜の関係を持つが、彼女の一言で運命が狂っていく。癒し系の家庭科教師・雪乃の性戯を愉しみながらも、万輝が忘れられない佐竹。やがてその学園にはポリアモリーという性愛が横行することが判明。その渦に巻き込まれていくが、快楽の極みは悲劇の幕開けだった。官能ロマンの衝撃作!
美容師の舞は、結婚して一年になる夫に対し暴力を振るう自分を止められずにいた。ある晩、彼への暴力から逃れるように家を出ると、店の客である希子と遇う。同じマンションの住人と知り、二人は交流を重ねるが、希子は舞の夫のある秘密を抱え、舞に近づいていた。白壁の棲家で紡がれる歪な愛の支配にもがきながら、やがて渾然一体と追い詰められる女たち。怒涛の展開に息をのむ、衝撃の物語!
質屋に現れた武家奉公の女。質草代りの金を受け取らず、幼子を残し姿を消した…。(「武士の体面」)常磐津の師匠を人質に、稽古場に立て籠もった浪人。なぜか、刀の目利きを要求するが…。(表題作)刀の目利きと研ぎで評判の下級旗本・関口平九郎。お調子者の質屋の若旦那・卯之吉。冷や飯食いの同心・深尾左門。三人の男たちが、お江戸を騒がす難事件の謎を解きほぐす。書き下ろし時代小説四編。
昭和20年8月15日水曜日。戦争が終わったその日は、女たちの戦いが幕を開けた日。世界のすべてが反転してしまった日ー。14歳の鈴子は、進駐軍相手の特殊慰安施設で通訳として働くことになった母とともに各地を転々とする。苦しみながら春を売る女たち。したたかに女の生を生き直す母。変わり果てた姿で再会するお友だち。多感な少女が見つめる、もうひとつの戦後を描いた感動の長編小説。
お待ちかねの修学旅行は青い海きらめく沖縄。ケーキ大好き女子高生・未羽は、ビーチで高校生パティシエ大広漣と知り合い、その積極的なお誘いに押されデートの約束をする。最近なぜか不機嫌な颯人からは、漣も出場するコンクールのアシスタントに「お前しかいない」と頼まれ…何この板挟み状態っ!そして迎える大会の日。ケーキを愛する2人の甘くて熱い青春スペシャリテ第3弾。
ハーイ、あたし、マリー・アントワネット。もうすぐ政略結婚する予定www 1770年1月1日、未来のフランス王妃は日記を綴り始めた。オーストリアを離れても嫁ぎ先へ連れてゆける唯一の友として。冷淡な夫、厳格な教育係、衆人環視の初夜…。サービス精神旺盛なアントワネットにもフランスはアウェイすぎたー。時代も国籍も身分も違う彼女に共感が止まらない、衝撃的な日記小説!
え、あたしがフランス王妃とかwwwウケるってかんじなんですけどー。1774年5月10日、ルイ15世が崩御し、夫・ルイ16世が国王に。だが、アントワネットへの世間の風当たりは強まる一方だった。取り巻きたちとの夜遊び、膨大な服飾費、授からない子ども、根も葉もない噂。そして、本当の恋。だが革命が起こり、すべては終わるー。王妃の最期の言葉に、涙があふれるクライマックス!
あのとき、目をそらしていたら。でも、もはや手遅れ。あなたはもとの世界には二度と戻れない。恐怖へ誘うのは、親切な顔をした隣人、奇妙な思い出を語り出す友人、おぞましい秘密を隠した恋人、身の毛もよだつ告白を始める旅の道連れ、そして、自分自身…。背筋が凍りつく怪談から、不思議と魅惑に満ちた奇譚まで。作家たちそれぞれの個性が妖しく溶け合った、戦慄のアンソロジー。
元新聞記者マックス・マシューズは、兄が船長を務めるエドワーディック号に乗り込んだ。戦時下の英国へ軍需品を運ぶ危険な航海である。二日目の晩、マックスは同船した女性の遺体を発見。外部からの侵入はありえない海の上、殺害現場に指紋が残されており、犯人は網にかかったも同然と思われたが、奇妙なことに船内に該当者はいない…。H・M卿は不可能状況をいかに解くか。
元刑事の“レミング”はある日カフェで見知らぬ男に絡まれる。店を出て路地に逃げ込むと、そこには白い手袋をつけピストルを握った男が。白手袋の男は、“レミング”を追ってきた男の頭を撃ち、なぜかピストルを“レミング”に持たせて立ち去った。このままでは殺人犯にされてしまう!“レミング”は真相を突き止めるため、被害者が働いていた療養所に患者として潜入するが…。
その夜、地球が緑色の大流星群のなかを通過し、だれもが世紀の景観を見上げた。ところが翌朝、流星を見た者は全員が視力を失ってしまう。世界を狂乱と混沌が襲い、いまや流星を見られなかったわずかな人々だけが文明の担い手だった。だが折も折、植物油採取のために栽培されていたトリフィドという三本足の動く植物が野放しとなり、人間を襲いはじめた!人類の生き延びる道は?