2019年10月発売
後深草院の寵愛を受け十四歳で後宮に入った二条は、その若さと美貌ゆえに多くの男たちに求められるのだった。そして御所放逐。尼僧として旅に明け暮れる日々…。書き残しておかなければ死ねない、との思いで数奇な運命を綴った、日本中世の貴族社会を映し出す「疾走する」文学!
戦場での英雄的活躍に憧れ、北軍に志願したヘンリー。進軍の停滞で焦らされた末に戦いが始まり、興奮のうちに射撃し続けた彼だったが、執念深く襲いかかる敵軍の包囲に遭うや、高揚はたやすく恐慌へと変わるのであった。南北戦争を舞台に色彩豊かに描かれるアメリカ戦争文学の傑作。
吉原遊郭の裏同心・神守幹次郎は、表向きは謹慎を装い、元花魁の加門麻を伴う修業の旅に出た。桜の季節、京に到着した幹次郎と麻は、木屋町の旅籠・たかせがわに投宿し修業先を探すことに。その最中、知人のいぬはずの京の町中で二人は襲撃される。一方、汀女らが留守を預かる吉原では、謎の山師が大籬の買収を公言し…。京と吉原で、各々の運命が大きく動き出す。
亮平が書いたブラック企業体験ルポが雑誌に載った直後、四年ぶりに美帆子から電話がかかってきた。美帆子はかつて亮平が家庭教師をしていた拓海の母親だ。拓海は中学受験を前に交通事故で亡くなり、その死はふたりに暗い影を落としている、はずなのだが…。この電話の二ヶ月後、亮平の元を刑事が訪ねてくることになる。リアリズムの名手が放つ傑作犯罪小説。
ある大雨の夜、冴えない中年男・戸沼暁男が刺殺された。暁男の不倫相手の妄想女・真由奈や残された妻・杏子と子供たちなど交友関係や、家族を巡って真相に迫ろうとする女刑事・薫子だが、一向に進展を見ない。しかし、事件捜査がついに、暴いてはならない秘密をつきとめた。女たちの心の奥底にうずまく毒感情を描ききった、イヤミスを超える傑作、待望の文庫化!
スマホで手軽に読めるのも魅力なのか、ショートショート人気が再燃しています。でも本で読むのは、格別な味わいがあると思いませんか?どうぞ目次を開いてみてください。収められているのは、愛すべき小さな物語たち三〇作。どこから読んでもだいじょうぶ。クスリと笑えたりちょっぴりゾッとしたり、ほっこりしたりー。ひとときの別世界旅行をお楽しみください。
「松前まで行ってくる」と余市の家を出た男が、加賀で遺体となって発見された。五年が過ぎたが、事件は解決しないままだ。浅見光彦は、真相を突き止めるべく、北海道から、石川、九州へと手掛かりを追う。浮かんできたのは、男の生い立ちと、その母親の姿だった…。名探偵浅見光彦が、謎につぐ謎を解き明かしながら各地を訪れる、旅情ミステリーの決定版!
元自衛隊レーンジャーで今は代行業を営む降矢浩季は、結婚式当日に失踪した新郎の行方を捜していた。しかし、新婦の志織が何者かに命を狙われたことから、降矢はこれがただの失踪ではないと勘づく。一方で、棟居刑事は連続老女強盗殺人事件を捜査していた。全く関係がないように思えた二つの事件の裏に、政界やカルト教団を牛耳る人物の存在が浮かび上がりー!?
中国に渡って十五年、破産した紅真吾は、危機から救った大手商社の支店長・沢井から、儲け話に誘われる。揚子江を重慶まで溯り、豚毛を買い集めて帰ってくればぼろ儲けできるのだという。だが流域の治安は劣悪で、命の保証はない。一攫千金を狙う真吾は、短剣投げの名手・葉村宗明ら素性の知れない八人の猛者と出立するー。手に汗握る傑作冒険小説。
航空自衛隊航空中央音楽隊でアルトサックスを担当する鳴瀬佳音は、ちょっとドジでも腕前は一流の女性隊員。あるとき、後輩の真弓が基地内で行われた競技会の審査員が偽者ではないかと言い出し…。(「サクソフォン協奏曲」)そしてついに渡会との恋にも決着が…!?佳音とにぎやかな仲間たちで日常の謎を解き明かす、青春音楽ミステリシリーズ完結編!
神奈川県小田原市にあるサカ高に、未だ珍しい“男性”養護教諭の東洋吾がやって来た。OGで女子サッカー部コーチの碧は、洋吾と、フランス人ハーフ美少女の部員・カティアがやけに親しい様子を訝しむ。だがカティアには、洋吾にだけ明かした“秘密”があってー。生徒たちの抱える悩みに、ライバル心むき出しの二人が保健の知識とたぎる熱意でぶつかる、青春お仕事小説!
父親が八王子千人同心の家に生まれたが、故あって研ぎ師となった荒金菊之助。ある日、菊之助は新大橋の袂に人待ち顔でいた男の子・直吉と出会う。父親の帰りを待つ直吉だったが、父親は殺されてしまう。町奉行所の探索が進まないことで下手人を追うことになった菊之助だったが…。人気時代作家・稲葉稔の原点と言えるシリーズが、決定版として新たに登場。
五年前の乱で死んだ大塩平八郎の名を騙り、江戸で打ち壊しが発生、老中・水野忠邦が襲撃される。不思議な術でそれを助けたのは、芥川源丞という侍だった。折しも箱根山中では、幕閣を揺るがす密書が見つかり、将軍直属の闇御庭番・菅沼外記は背後を探ることに。密書を追ううち明らかになる芥川の正体。そして芥川の秘術と菅沼流気送術、二つの流儀が直接対決に!
「宮本武蔵?-知りません」。新たに仲間に加わったお光のひょんな言葉から、公儀武芸帖編纂所頭取の新宮鷹之介たちは二刀流を調べることに。かつて二刀流を極めんとして道場を開いていた大八に、一同は伝手を求めるが、実はそこに大八の悲しい過去が隠されていた。明るい男の陰に、一体何があったのか?爽やかな鷹之介が滅びゆく武術を追う大人気シリーズ第五弾!
愛車のフォルクスワーゲン・タイプ2が故障し、田舎町で立ち往生した辰巳。修理を待つ間、骨休めを決めこむはずが、住民たちの愛憎劇に巻きこまれる。そして、ついには死体が発見され…。(表題作より)漂泊の探偵が出遭った三つの事件を所収。シリーズ第3弾。
貧しさゆえイジメに遭っていた白石ほのかは、町のピアノ教師・二ノ宮に助けられた。ほのかの音楽的才能を見抜いた二ノ宮は、紙に描いた鍵盤を手はじめに、献身的にピアノを教えこむ。その甲斐あって音大に入ったほのかは、プロのピアニストを目指すため、コンクールに挑むことを決意した。その前に続々と現れる強力なライバルーほのかは優勝して二ノ宮の想いに応えることができるのか!?感動のミュージック・ストーリー!
何をやっても中途半端な青年・ショータ。料理人を志してイタリアに渡ったものの、夢破れて市場で盗みに手を染める始末。そんな彼が出会ったのは「誇り高き宿無し」にして食の達人・ヤッさんだった。ヤッさんに“保護観察”を告げられ、再出発を誓ったショータは、料理人にとって最も大切なものを探し求める。大好評ユーモア人情小説の第四弾!
「まだまだやれる」。蕪木秀一郎は58歳。中堅食品メーカーの完全なる子会社の社長だ。出世の道を絶たれて面白くないが、美貌の28歳、夏日乃絵を強引に入社させてからは空回り気味のヤル気を見せる。一方の乃絵は、悪夢のような出来事でデザイナー業を放棄中。生活のため入った秀一郎の会社のショボさには呆れるし、まるで愛人かのように接してくる秀一郎がはっきりとウザい。「このままでは終われない」。そこだけ共通する、二人の悪戦苦闘の結果やいかに?ユーモアとペーソスに満ちた傑作長編!
大学生の真壁りんに届いた、祖父の死の知らせ。急いで親族が集まる葬儀会場へ向かうと、祖父の隠し子を名乗る青年・植田が現れた。米穀店を営んでいた祖父が遺したのは小さな家とわずかな預金だけなはずなのに、植田の登場を皮切りに相続の話し合いは揉めに揉め…。のんきで明るかった家族は、崩壊寸前!?解決に奔走するりんは以前の家族を取り戻せるのか。