2019年11月13日発売
「パーク・ライフ」(芥川賞)、「東京湾景」、「最後の息子」(デビュー作)、書き下ろし「自伝小説2」、単行本未収録作など、全14作品を収録。時代が生んだ人気作家の愛蔵版コレクション!
こうして書棚の秘密は私とB、二人だけのものになったーハリウッド俳優Bの泊まった部屋からは、決まって一冊の本が抜き取られていた。Bからの無言の合図を受け取る客室係…。“移動する”六篇の物語。
捨て子という生い立ちが、美しい容貌に影を落としていたー。銀座の老舗デパート三松屋に勤める朝波香織は、高級時計を盗んだ疑いをかけられる。彼女の境遇に同情した旅行作家の茶屋次郎が容疑を晴らすべく動くと、盗難の内部調査をしていた宇垣の死体が、木曽川河畔で見つかった!茶屋は彼の足取りを追い、奈良井宿、馬籠宿など、古の情趣漂う木曽路へ。しかし、三松屋の取引先社員も紺碧の流れに浮かび…。茶屋が旅路の末に辿り着いたのは、六年前、銀座で起こった、凄惨な通り魔殺人の真相だった!
朝からゴルフ、夜まで豪遊。札束で膨らんだ“お車代”。製薬会社が医師に対し、製品を採用してもらうべく仕掛けていた過剰な接待・贈賄は、法律で禁止された。ところが皮肉にも、規制強化につけ込む裏ビジネスが生まれる。自ら“医療マフィア”と名乗る花島正輝は、製薬会社に代わって優秀な美人医療情報担当者を送り込み、医師を籠絡。巨額の報酬を懐に入れていたのだ!
放火大量殺人の実行犯を検挙した刑事隼野一成が捜査本部に帰還し、拍手で迎えられたのも束の間、犯行グループから予告状が届く。警察だけが知り得る犯人の象徴ー“蜂”の針は、現役大臣殺害を示唆していた。捜査支援分析センターの異端児天埜唯が電波傍受・映像解析で犯人特定を急ぐも、捜査は公安主導となっていく。内外で高まる圧力。やがて隼野を悪夢が襲う…。
人類は古代から恋愛に懊悩し、その苦しみや歓びを綴り不朽の名作を生みだしてきた。そこには我々が学ぶべき叡智と教訓がつまっているー紀元前から今でも使えるモテテクを伝授する『恋愛指南』、高慢ちきな女子に効く『蜻蛉日記』、不倫に悩む人に『好色五人女』、リア充が妬ましい時には『ヰタ・セクスアリス』等々。古今東西の傑作がぐっと身近に、きっと読みたくなる読書案内。
戦後、日銀から消えた二〇万カラットのダイヤモンド。曾祖父から謎の遺言を託された小説家の浅野迦羅守は、恋人の小笠原伊万里、元CIAの南部正宗、数学の天才ギャンブラーらと共に暗号の解読に挑む。目に見えぬ敵と、四人の仲間を次々と襲う危機。はたして時価一〇〇〇億円と言われるダイヤを発見できるのか。『Mの暗号』に続く昭和史ミステリー第二弾!
大手建設会社営業部の桑名が全身を針金で縛られた水死体で発見されたー。一方、私立探偵見城豪が事務所で情事を愉しんでいると、突然の依頼人が。桑名の会社の総務部長浅利の妻子だった。夫が何者かに狙われているというのだ。事件の背後に違法カジノと、四十数社による談合疑惑が浮上。大金の臭いを嗅いだ見城が動いた!ハードな犯罪サスペンスの傑作シリーズ!
元奥州白河藩士の倅・真木倩一郎は、朝顔を育てる優男の風貌とは裏腹に江戸随一の剣客。ある日幼馴染みの天野善次郎が新藩主・松平定信の命で来訪、倩一郎に前藩主のご落胤の噂があるという。定信からは帰参を乞われる中、船宿“たき川”の女将で、江戸の目明かしの総元締・米造の娘、お葉を助けたことで運命が一変。倩一郎は幕府も揺るがす暗闘に巻き込まれていく…。
尾瀬ヶ原が広がる群馬県利根郡片品村で歩荷をしていた祖父に育てられた江藤瞬一。高校卒業とともに上京し、引越の日雇いバイトをしながら荒川沿いのアパートに住んで四年になる。かつて故郷で宿屋を営んでいた両親は小学三年生のときに火事で亡くなった。二人の死は、自分のせいではないかという思いがずっと消えずにいる。近頃は仕事終わりにバイト仲間と他愛のない話をしたり、お隣の母子に頼まれて虫退治をしたり、町の人々に馴染みつつあった。そんなある日、突然祖父が東京にやって来ると言い…。じいちゃんが、父が、母が、身をもって教えてくれたこと。
才能のかけらもない素人娘を天才歌姫に仕立て上げ、前代未聞の熱狂を巻き起こすー代表が金を持ち逃げし、消滅した『劇団ゆうまぐれ』。自暴自棄の劇団員たちは、舞台の脚本をリアルな世界で実行して、金儲けを企んだ。船橋駅前で歌っていた女の子をスカウトし、天才シンガー“姫花”を売り出すフェイクプロジェクトが始動する。音楽担当の亮太は素人娘を天才に見せかける作業に苦心していたが、最初の路上ライブで彼女が見せたパフォーマンスに言葉を失ったー。船橋から香港へ、姫花はスターの階段を昇っていくが…。
大学進学をきっかけに折り合いの悪い両親が暮らす佐渡を離れて以来、一度も実家には戻らず、大学卒業後もバイト暮らしを続けている涼子。そんな彼女のもとに、ある日届けられたのは、亡くなった祖父が涼子に遺してくれたという古い木箱。そこにはおとぎ話に出てくるような小槌と小さな姿の青年が入っていた!一寸法師だと名乗る青年(小さいけれど美形)は、涼子のことをかつて仕えた姫の生まれ変わりだと言い、青年を粗末に扱った両親やら殿やら鬼やらに復讐せんと燃えていた。封印していた木箱をうっかり壊してしまった涼子は、一寸法師の暴走を止めるために同居をする羽目に!?