2019年5月17日発売
売れない作家の子として生を受けた芥川賞作家が,書き継いできた作品から単行本未収録のものも含めセレクト.デビューから最近の作品まで読んでいくと,作家の歩みにとどまらず,時代の息吹が伝わってくる.解説,唯川恵. 1 雷 魚 木 刀 馬 2 兄の恋人 妹の感情 3 逃亡ヶ崎 落ちてきた男 池のほとりで 4 祈 り セカンド パリの君へ 後書き 解 説(唯川恵)
忘れていた幸せの味、思い出してみて。 子供のころの記憶に苦しむOLや、父の再婚に悩む少女── 迷える人々の心を、絶品サンドイッチが癒やします。 大阪の靱公園にある『ピクニック・バスケット』は、開店して三年を迎える手作りサンドイッチの専門店。蕗子が、姉の笹子──笹ちゃんのこの店を手伝いはじめて、半年になる。 笹ちゃんは店を訪れた人たちの、具材への思いや記憶、そして物語をやさしくパンにはさんで、誰が食べてもなつかしいような新しいような、そんなサンドイッチをつくっているのだ……。 おっとりした姉としっかり者の妹、店を訪れる個性的な人々──常連客の小野寺さんやパン職人の川端さん──が織りなす、優しくも愛おしい物語。 1 タマゴサンドが大きらい 2 ハムキャベツの隠し味 3 待ち人来たりて 4 はんぶんこ 5 おそろいの黄色いリボン
「その時はーー魔女〈ティナーシャ〉を殺すさ」 契約のもと、一年という限られた時間を共に過ごすオスカーとティナーシャ。だが突如二人の前に、ティナーシャのかつての婚約者・ラナクが姿を現す。古き魔法大国の血を継ぐ彼は、新たに国を興すと大陸全土への侵攻を企てて……。その時、オスカーとティナーシャの選んだ道とはーー大陸の完全支配をもくろむ巨大魔法と王剣の剣士の、熾烈なる戦争の火蓋が切られる。
電撃《新文芸》スタートアップコンテスト《大賞》受賞作!! 旧文明の遺産を求め、数多の遺跡にハンターがひしめき合う世界。 新米ハンターのアキラは、スラム街から成り上がるため命賭けで足を踏み入れた旧世界の遺跡で、全裸でたたずむ謎の美女《アルファ》と出会う。 彼女はアキラに力を貸す代わりに、ある遺跡を極秘に攻略する依頼を持ちかけてきてーー!? 二人の契約が成立したその時から、アキラとアルファの数奇なハンター稼業が幕を開ける! 第01話 アキラとアルファ 第02話 覚悟の担当 第03話 命賭けの対価 第04話 旧世界の幽霊 第05話 アキラとシズカ 第06話 信じる 第07話 エレナとサラ 第08話 殺しの理由 第09話 真面なハンター 第10話 落ちている財布 第11話 アキラとシェリル 第12話 シェリルの徒党 第13話 運が悪い者達 第14話 不運と幸運と偶然の繋がり
「地方の料理など大したことはあるまい!」 東京のグルメに敗北続きの魔界最強の姫、竜魔神姫ヴァルアリスは新天地での戦いに挑む。 彼女を待ち構えるのは、横浜のチャーハン、山梨のほうとう、宇都宮の焼き餃子などなど全国の美食たち! 「くっ、どれもこれも美味しいではないかぁぁ!」 ヴァルアリスの可愛さ×ご飯の美味しさにニヤニヤが止まらないハイテンション最強グルメコメディ第2弾!
横浜・山手の洋館ホテルを舞台にしたハートウォームストーリー! 焼きたてパンが、お客様を笑顔に変えるーー。 3年間勤めたパン屋さんをやむなく離職したパン職人の紗良。 旧家の子女ゆえ祖父からお見合いを勧められるも、きっぱりと断って…?(「パン職人の再就職」) 腕を見込まれ、横浜・山手の「ホテル猫番館」に職を得た紗良。 ある日、気難しい料理長・天宮隼介の妻と娘が宿泊客として来館するが、親子には何か事情があるようで…?(「テディベアと朝食を」) 人なつっこいコンシェルジュの本城要。その陽気な笑顔の裏で、実は父親に打ち明けられずにいるある想いを抱えていて…?(「父と誓いのショットグラス」) 勤めていたパン屋さんで“師匠"と慕っていた和久井竜生と妻の寿子をホテルに招いた紗良。 しばらくぶりの対面なのに、師匠の態度はそっけなくて…?(「師匠と弟子の三日間」)
二十六歳の青年・瀬山冬は、幼い頃から他人には見えないものが見えたために人間関係を上手く築けず、勤め先が倒産してからは引き籠もっていた。 貯金も尽き家賃も払えなくなっていたところ、人材派遣会社を経営する羽塔花澄という謎めいた女に、 死者の霊がいる家に住んで「死の瞬間」を報告する仕事を押しつけられる。 もとの部屋は勝手に引き払われ、断れない状況で……? 部屋にいたのは刺殺された若い女の霊だった。 冬の存在に気付いた霊は白恵と名乗り、恋人だった男に刺されたのだと言うけれど、妙に明るいテンションで冬に絡み始めて……?(第1話『めぞん市場202号室』) 新しく用意されたのは、一面にブルーシートが張り巡らされた部屋だった。 おどおどとしたやたらと腰の低い30代の女性の霊が住みついており……?(第2話『あぐみ荘1A室』) 部屋に迷い込んできたのは幼稚園児くらいの小さな少女の霊だった。 少女は母親を探しているようで、つい声をかけてしまった冬を頼ってきて……?(第3話『よいももにやどの精霊』) 5年ほど空き家だったという一軒家には、四人以上の霊が住みつき、さらに危険なものまでがいるようだった。 冬はこれまでにない危機感を覚えるが……?(第4話『坂の上3丁目 1972番地』)
コミュ障女子大生が「保存食専門カフェ」を営む英国人店主とその息子と織りなす、ほっこりおいしい人情ストーリー! 「猫の町」谷中に住む女子大生、紬。趣味は手芸、人間関係が苦手で大学ではぼっち気味。 ある日、故郷の母親から送られてくる大量の野菜に困り果て、こっそり捨てようとしたところ、謎の英国人男性にとがめられる。 彼はそのまま紬を自分のカフェに連れていき、あっという間に野菜を「びんづめ保存食」に生まれ変わらせた。 谷中で「びんづめカフェ」を営むセドリックは、血のつながらない息子の武流と二人暮らし。 なりゆきで、小学校不登校中の武流の家庭教師をすることになった紬は、さまざまな出来事に遭遇しながらも、 セドリックの作るびんづめたちに癒されながら少しづつ心を開いていく…。
少女が弓を引く時 世界に新たな光が射す。 武装した騎士が隊を組み、互いの兜につけられた命石を砕いて勝敗を競うーー 〈戦争〉にかわり〈戦闘競技会〉が、国々の命運を決するようになり三百年。 リーリエ国の山岳地帯にあるツヴェルフ村は、 生涯に千個の命石を奪った破石王アルサウの故郷で、男女問わず代々優秀な騎士を輩出している。 そんな村にあって、周りの少女たちのように剣や斧を使えないニナは、 弓こそ誰よりも上手く扱えるが、「出来そこない」と馬鹿にされてばかり。 実兄ロルフが優秀な騎士で、不幸な事故で片目を失ってなお、村人の尊敬を受けているからこそ肩身が狭い。 だがある日、ニナが出場した地方競技会を見たという騎士リヒトが村へやってくる。 彼に弓の才能を見出されたニナは、騎士団へ勧誘されて…!?
事故の後遺症から“忘却"することができなくなった新川慧。 彼女は今までの出来事を全て記憶し、それを何度も何度も思い出しては、 まるで今起こったことかのように追体験してしまう。 記憶の再生をコントロールする術を見つけ出し、必死に日々をやり過ごす慧。 そんな彼女だったが、職場の同僚・日野山空良から突然告白され、つきあうことになった。 幸せな生活を送る二人。しかし、空良にはある秘密が……。 奇跡の出会いは、二人にどんな結末を選ばせるのか…。 ジャンプ恋愛小説大賞、金賞受賞作。 気鋭のイラストレーター・焦茶の描きおろし漫画も収録!!
朝宮陽は、引っ越しや進学で三年ごとに友達が入れ替わってきた。 三年周期の呪い。そんな陽を支えていたのは、映画だった。 高校に入ってからは、映画好きの生徒四人で集まって、映画を観てばかりいる。 進級して三年生になった陽は、卒業しても友人三人との縁が切れてしまわないように、三年周期の呪いを断ち切るために、自分たちの映画を撮ろうと思い立った。 洋邦問わずホラーとコメディ映画好きのお嬢様、ミーコ。 アクション映画とハリウッドをこよなく愛するナツ。 長身がコンプレックスで、映画のストーリーに込められたメッセージや暗喩に注目するいおり。 映画という共通項以外には、性格も趣味もバラバラの少女たちの疾走する青春グラフィティ!
店主の腕に惚れて、有名俳優や政財界の大物が通いつめたという伝説の理髪店。僕はある想いを胸に、予約をいれて海辺の店を訪れるが…「海の見える理髪店」。独自の美意識を押し付ける画家の母から逃れて十六年。弟に促され実家に戻った私が見た母は…「いつか来た道」。人生に訪れる喪失と向き合い、希望を見出す人々を描く全6編。父と息子、母と娘など、儚く愛おしい家族小説集。直木賞受賞作。
一番弱いのに、一番楽しくサッカーをやれる「牧原スワンズ」の四年生チーム。公式戦では一勝はおろか、まだ一点も取ったことがない市内屈指の弱さを誇っている。今年最後の公式戦となる市大会に挑む子どもたち。しかし、チームの活動を手伝う父親たちは、それぞれに悩みを抱えていた。八組の家族のありようとその成長を描き、すべての頑張るお父さんと子どもたちへあたたかなエールを贈る物語。
神様、ぼくはどうして生まれてきたんですかー。霊山・御嶽の麓の町で、悲惨極まりない人生を送ってきた少年、潤。生きることの意味を問うために、神の棲まう山、御嶽へ向かう。悪天候のなか、強力の孝は、書き置きを残し山に入った潤を捜索することに。神を求め、信じる潤。長く山で暮らしながら、神を信じぬ孝。大自然の猛威に翻弄されながら、二人が命の炎を熱く燃やす。哀哭の山岳ノワール。
地方生まれの美紀と東京生まれの華子。 アラサー女子たちの葛藤と成長を描く、山内マリコの傑作長編! 「苦労してないって、人としてダメですよね」--東京生まれの箱入り娘、華子。 「自分は、彼らの世界からあまりにも遠い、辺鄙な場所に生まれ、ただわけもわからず上京してきた、愚かでなにも持たない、まったくの部外者なのだ」--地方生まれ東京在住OL、美紀。 東京生まれの華子は、箱入り娘として何不自由なく育てられたが、20代後半で恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされてしまう。 名門女子校の同級生が次々に結婚するなか、焦ってお見合いを重ねた末に、ハンサムな弁護士「青木幸一郎」と出会う。 一方、東京で働く美紀は地方生まれの上京組。 猛勉強の末に慶應大学に入るも金欠で中退し、一時は夜の世界も経験した。 32歳で恋人ナシ、腐れ縁の「幸一郎」とのダラダラした関係に悩み中。 境遇が全く違って出会うはずのなかったふたりの女。 同じ男をきっかけに彼女たちが巡り合うとき、それぞれ思いもよらない世界が拓けてーー。 結婚をめぐる女たちの葛藤と解放を描く、渾身の長編小説。 ●解説/雨宮まみ
人気弁護士の彩と義理の弟の克己は、本当の肉親以上に信頼し合っていた。ある夜、彩と不倫関係にあった男性が、彼女の職場で突然死する。スキャンダルを恐れた彩に助けを求められた克己は、事故死に偽装する。だが、夫の死を不審に思う妻が彩の事務所に相談しにやってくる。彩は克己の反対を押し切り、彼女の依頼を引き受けるが…。コンプレックスやトラウマなど、心の闇を抉り出す衝撃作。
高須藩の六男に生まれ、会津松平家の養子となった容保。初代藩主保科正之が定めた会津藩家訓による徳川将軍家への絶対随順を、精神に叩き込まれる。幕末の動乱期、家老たちの反対を押し切って京都守護職を拝命。京都の治安に尽くし孝明天皇の信を得る。だが、戊辰戦争で朝敵の汚名を着せられ…。信じた正義のために潔白を明かそうと、信念を貫いた武士の誇り高き人生を描く書き下ろし歴史小説。
帝に舞を披露したことで注目され、突然「モテ期」が到来した宗孝。女房たちから何通もの恋文をもらうが、和歌が苦手で返事に悩む中、中将宣能は、筆跡から書き手の感情が読み解ける妹の初草に、文の鑑定をしてもらおうと言い出し…。一方、九の姉が振り付けた桜の舞で大成功をおさめた稲荷社の専女衆は、次の演目として「藤の舞」を計画していた。手伝いをすることになった宗孝だが…?
中学生の樹が亡き祖父から受け継いだハート形の水晶。その石精である雫は、樹の心を癒し、鉱物の魅力を伝えてくれた。他の石精も見ることができる樹は、カリスマコレクターの抱える人知れぬ苦悩を知り、骨董屋のおじさんの桜石にまつわる思い出に触れる。そして、翡翠の産地である糸魚川へとー。地球の生んだ芸術品・鉱物の魅力に溢れたセンシティブな物語。著者による鉱物エッセイも収録。