2019年6月13日発売
突然、目の前に現れた見知らぬ男は少年に言った。「世の中のためになる人間ー誰かの役に立つ人間になれ。大切なのは何のためにそれが必要か、ということだ」と。そして月日が流れ、少年は政治家になった。在日米軍情報機関の末端に籍を置く、情報分析員の葉山隆は、HUMINT(人的情報収集活動)として、ある調査をすることになる。真実に近づくことは、前途有望な若き政治家の人生を翻弄することになるとも知らず…。
混雑した駅中、彼女は驚いた様子でまっすぐ僕の方へ歩いてきた。それが僕たちの出逢いであり、恋人同士になるきっかけだった。でも、心も身体もすっかり馴染みきったある日、唐突に知ってしまう。彼女が僕に近づいた理由をーー。(表題作「優しい音楽」)ちょっと不思議な交流が生みだす、温かな心の触れ合いを描いた作品集。
その少年に目が留まった理由は、ただひとつ。こぼれ落ちる涙を拭おうともせずに立ち尽くしていたからだ。それもホラー映画の並ぶ棚の前で。しかも毎日。-ある事件がきっかけで、職を辞した元刑事の須賀原は、死者が見えるという少年・明生と、ふとした縁で知りあう。互いに人を避けて生きてきた二人。孤独な魂は引かれ合い、手を組んだ。須賀原と明生は、様々な事情でこの世に留まる死者たちの未練と謎を解き明かしていく。
大都会の雑踏に立ち、逃亡中の手配犯を見つけ出す見当たり捜査ー。警視庁捜査共助課に着任した水野乃亜は、新たな衆人環視システム導入を目論む警察庁のキャリア官僚・佐山の特命を受け、その現場に立っていた。そんな中、チェチェン人の女テロリストが密かに日本に潜入。都心にある米軍関連施設を襲撃する準備を着々と進めていた。警察内部の覇権争いと水面下で策を巡らすアメリカの思惑ー。現場の刑事達の矜持と己の信念の狭間で揺れ動く乃亜は、テロの脅威にさらされる日本の窮地を救えるのか!?怒涛のノンストップ警察小説、第1弾!!
ママはときに男と出奔する、どうしようもない母親だ。けれどその自由な生き方に魅了され、誰もが彼女を愛してしまう。人を好きになるということは?勇気を与えるということは?「幸せになりたいんやったら、誰かのせいにしたらあかん」「どうぞ、グレてください」型破りなママから、わたしは人生でなによりも大切なことを教わっていくー。“ハズレ”の人生なんてないと思わせてくれる、最高のエンタメ小説!
神様や妖怪が泊まりに来る出雲のお化けホテルに、マスコットキャラクターを作ろうという話が持ち上がる。櫻葉永遠子の発案で、桜の花びらを模した着ぐるみが誕生したが、どうにも評判がよくない。そこで、時町見初の提案もあって、兎の白玉をモチーフにしたキャラクターを作ることになった。さらに兎を主人公にした物語を小冊子にして配ったところ、なかなか好評で、ついにはイベントまで開催することに!笑って泣けるあやかしドラマ、待望の第六弾!
坪内藩の城下町にある青鳴道場は存亡の危機にあった。先代の不名誉な死と、跡を継いだ長男の権平の昼行燈ぶりから、ついには門人が一人もいなくなってしまったのである。米櫃も底をついたある日、妹の千草や弟の勘六に尻を叩かれた権平がようやく重い腰を上げる。「父の仇を捜すために道場破りをいたす」。酔って神社の石段で足を滑らせ亡くなったとされる先代の死には不審な点があり、直前には五つの流派の道場主たちと酒席を共にしていた。三人は、道場再興と父の汚名を雪ぐため、藩内の道場の門をひとつずつ叩いていく。
時代は幕末、徳川家に江戸城の明け渡しが命じられる。官軍の襲来を恐れ、女中たちが我先にと脱出を試みるなか、大奥にとどまった「残り者」がいた。彼女らはなにを目論んでいるのか。それぞれ胸のうちを明かした五人が起こした思いがけない行動とはー。激動の世を生きぬいた女たちの矜持が胸を打つ傑作時代小説。
北町奉行所・臨時廻り同心の白縫半兵衛は、申し付けられて旗本の次男・真山真之丞を尾行ていた。すると真之丞は、博奕打ちの仲間と一緒に、昼日中から飲み屋や女郎屋に入り、さらには賭場を荒らして金を奪うという、大した「戯け者」ぶりであった。これでは親が心配するのも当然…だが、半兵衛には何かが引っかかっていた。「世の中には町奉行所の者が知らん顔をした方が良いこともあるさ」。大人気の痛快裁き、待望の第8弾!
いまだ弟子不在とはいえ、無事再開した間野道場に、他流試合を望む二人の浪人者が現れた。丁重に断りを入れる生馬に強引に立ち合いを求めた二人だったが、傍若無人な振る舞いに怒った生馬に、あっさり叩き出されてしまう。一方、玄武館では、江都に名高い師範代の千葉栄次郎との対戦を熱望する二刀流の廻国修行者が現れー。心優しき巨躯の剣士「迷い熊」が悪を討つ!痛快人情活劇シリーズ第四弾!!
幻宗、新吾らの活躍により世嗣を巡る陰謀も潰え、ようやく松江藩に平穏が訪れた。嘉明公は直々に幻宗と会って礼を述べたいと、新吾に告げる。御意を伝言した新吾に幻宗は、お抱え医師を辞めろと言い放ったのだ。松江藩にまたなにかが起きるのか、それとも、新吾自身になにか問題が生じたのか…。幻宗はいったいなにを見たのか!?書き下ろし青春時代小説、シリーズ第九弾!!
七夕飾りに華やぐ吉原で織姫よりも輝く花魁篝火。美貌も気位も当代一、決して客と同衾せぬ傾城は今宵の彦星も袖にした。それもそのはず、篝火の正体は廓に匿われし尾張の御落胤、徳川竜之進!憂さ晴らしに隠し隧道から町に出た竜之進は読売屋の楓に聞いた「娘の生き肝を食らう河童」の成敗を決意し、黒幕を追う。だがそれは人生最大の修羅場の始まりに過ぎなかったー。“見返り柳剣”が斬るのは悪か、過酷な運命か。風雲急のシリーズ第四弾。
雇い主のスペイン富豪ロドリゴと恋に落ちた秘書のローラは、誤解がもとで百万ドルの手切れ金を叩きつけられ、捨てられた。彼の子を身ごもった喜びの報告をするはずの、まさにその日に。1年後、ローラは慈善舞踏会で偶然ロドリゴと再会し、赤ん坊を密かに産み育てていたことを知られてしまう。すると彼は君も息子も僕のものだと言い、強引に結婚を迫った。あんなに私を冷たく捨てた人と愛を育めるわけがないわ…。それでも子供のための形だけの結婚ならばと言ったローラに、彼は熱いキスをし、せせら笑った。「僕に抵抗できるのか?」
メリダが働く画廊にその夜、ニューヨーク随一の富豪、イーサン・デヴェローが現れた。美貌の彼と握手をした瞬間、彼女の体に電流が走った。しばらくして彼が立ち去っても、体の火照りは収まる気配がない。いったいどうしてしまったの?「きみにはわかっているはずだ」突然、低い声が静寂を破った。嘘!彼は引き返してきたの?「一緒にディナーをどうかな」彼とは住む世界が違うのに、甘いキスに我を忘れたメリダは、レストランからスイートへといざなわれ、純潔を捧げた。しかし翌日、イーサンは消え…やがてメリダは妊娠を知る。
父の訃報に、傷心を抱えサントリーニ島へと赴いたアテナ。カフェで荷物を盗まれかけたところを、ハンサムな男性アレクシオスに助けられ、ディナーをともにすることになった。ギリシア億万長者の彼の瀟洒な邸宅へ招かれ、美しい夕陽を眺めながら、アテナはまたたく間に彼の虜になり結ばれた。夜ごと愛される至上の悦びに、彼女は溺れた。やがて愛を告げたことで、まさか彼が急に冷淡になるとは夢にも思わず。-どうしよう?赤ちゃんができたなんて彼に言えない。アテナは黙って彼の前から姿を消すほかなく…。
ケイド、私の夫。彼が家を出ていってから、もう1年以上。ジェシカは別居が続く夫との関係に終止符を打とうとしていた。彼に会って離婚のための書類にサインをしたあとは、身寄りのない赤ちゃんを引き取って、ひとりで育てていくつもりだ。望んでも叶わなかった、母になるという夢をようやく叶えられる。2度の流産後もなお子供を切望する私といつしか気持ちがすれ違い、ケイドはそんな私を見捨てて去っていった。だから、彼を心から愛していても、もう別れるしかないと覚悟を決めた。そして、ふたりで会う約束をした日ー夫と妻として会う最後の日、彼を待つジェシカの身に、突然、不運な出来事が起こる…。
物心がつく前に孤児になったオリンピアは、伯母に引き取られ、家事につけ仕事につけこき使われる日々を送っている。ある日、使いの合間に、前から見たかった美術館へ寄ったが、時間に追われるあまり階段で転び、膝をすりむいてしまう。すると、品のよい銀髪まじりの紳士が手をさしのべてくれた。私ったら、みっともない。それに比べ、なんてハンサムな方かしら。だが、そのオランダから来た紳士はワルドーと名乗るなり、断言するようにこう告げた。「君は結婚していないね」伯母の言うとおり、私は男性が結婚したがる娘ではないということ?ワルドーの言葉に戸惑い、恥じ入るオリンピアだったが…。
セイディが社長のイーサンに想いを寄せ始めて、はや5年。彼のアシスタントとして、未熟ながらもがんばってきたけれど、もう実らぬ片思いはあきらめ、新しい恋を探すときなのかもしれない。セイディは涙を隠して退職を申し出るが、イーサンから思いがけない懇願をされて、心が揺れた。彼の親友が急死し、遺児を預かることになって困っていて、ナニーが見つかるまで、同居して世話をしてほしいというのだ。イーサンと過ごす、最初で最後のつかの間の蜜月。ほんの一瞬でもいい。私を女性として見てくれたら…。5年間の想いを胸に、セイディは心を決めた。
大富豪ジェイムソン家の次男、スペンスが帰ってきたと聞き、アビーは動揺した。彼はまだ私を疑っているかしら?数カ月前まで、アビーとスペンスは恋人同士だった。だが悪夢のような出来事が、突然ふたりを引き裂いた。あろうことか、スペンスの父親に無理やりキスをされ、その場面をスペンスに見られてしまったのだ。彼はアビーの話も聞かず、冷たく背を向け、街から姿を消した。あのとき、どうして私のことを信じてくれなかったの?スペンスは心から詫び、変わらぬ情熱でアビーを包みこんだが、彼女が身ごもったと知ると、とたんに表情を曇らせて…。