2019年6月発売
友人の美樹から「一生に一度きり」と頼まれ、朋子はある旅に付き添うことに。お互い看護師、三十代半ば。美樹が旅先で打ち明けた、この先後悔しないための決断とは?(表題作)母親の再婚によって居場所を失った姉弟。二人を引き取ったのは動物園の飼育員のマア子おばさんだった。(「月夜のディナー」)波乱含みの風が問う家族、夫婦、友情の形。爽やかに心揺さぶる七編。
渋谷駅から二駅目のそこそこ大きな街。駅からほど近い路地の奥に、その店「灯火亭」はある。心づくしの季節の料理とそれらに合わせた酒。そして、なにより、さりげない気づかいにあふれた主のユウさんのもてなしが待っている。今夜も人生に迷う人々がやって来てーやがて、大切な何かに気づいてゆく。ちょっぴりほろ苦くて、でも優しい、大人の心を癒す連作集。
バー“森へ抜ける道”の酒のつまみは難事件。パン屋を営む夫婦の妻が何者かに殺されたが、関係者は皆アリバイがあったり、動機がなかったり。一体誰が殺害を!?(表題作)。ウィスキーを片手にしたおじさんたちの他愛ないトークをスルーし、名探偵・桜川東子は宝塚ファン顔負けの知識でもって華麗な推理を繰り広げる。新たな登場人物も加わり、さらに賑わう人気シリーズ第六弾!
西城秀夫は、アフリカのザンビアでハンティングを楽しんでいた。命がけの闘いで次々に大物を斃す彼のもとに、警察庁から緊急連絡が入る。五十億円という報酬額以外、何も知らされないままアテネへと飛ぶ西城。やがて複数の連絡員から細切れに伝えられる密命ーそれは、究極の殺人機械・西城をもってしても、絶望的なまでに困難な任務の数々だった。
鞠の意匠をあしらった「鞠巾着」が人気となり、安定した仕事をもらえるようになった律。涼太との祝言の日取りも決まり、幸せをかみしめながら、職人の仕事も一生続けていこうと決意するのだった。そんな折、拐かし一味の女の似面絵を頼まれた律は、仕上げた絵に何か引っかかるものを感じてー。恋に仕事に一途に生きる女職人の姿を描く、人気シリーズ第五弾。
将軍直属の闇御庭番・菅沼外記は、江戸に流入する危険な抜け荷品の実態と、その流入経路を探る密命を受ける。棒手振りの義助は、魚河岸で仲間が死んだ背後に不審な犯罪の匂いを嗅ぎ、浅草奥山に小屋を張る唐人一座の花形・ホンファに魅了された春風は、怪しい廃寺へと導かれていくー。同様に事件を追う南町奉行の鳥居耀蔵と外記らの、新たな決戦が幕を開ける!
埼玉県警のホームページの掲示板に“修正者”を名乗る書き込みがあった。今後、県下で起きる自然死・事故死に企みがないかどうか見極めろという。同日のアイドルの転落死にも言及したため、県警の古手川と浦和医大法医学教室の助教・真琴は再捜査と遺体の解剖に臨んだ。結果、炙り出されたアイドルの秘密と司法解剖制度の脆弱さとは?シリーズ第二弾、待望の文庫化!
浩志率いる傭兵部隊“リベンジャーズ”に参加した明石柊真は、イラクでの活動中、何者かに狙撃され、仲間を目の前で殺されてしまう。復讐を誓った柊真は、犯人の手掛かりを握るテロリストを追って単身パリへ。その追跡の最中、テロを未然に防ぐも、犯人として誤認逮捕され…。仲間の死の背後に蠢く国際犯罪組織の正体とは。傭兵代理店は次世代を迎え、新たな戦いへー。
母が住み込みで管理人兼料理人を務める藤田一家の別荘を訪れた昌。一家と昌母娘の団らんはいつもの光景だったがこの夏は少し違っていた。十九年前にこの別荘で起こった事故の真相を昌が知ってしまったからだ。昌は一家に知られないようにふるまうが…(「時計」より)。ふいに浮かび上がる「死」の気配。そのとき炙り出される人間の姿とはー。直木賞作家が描く、傑作短編集。
大介は札幌に住む小学六年生。自らの鬱憤を晴らすため、隣家に住む謎の老人が育てる痩木の花芽を削いでいた。ところが、夏休みに入るとすぐ、花はひっそりと咲いた。途端、旅支度を始めた老人。慌てた大介は、彼を追い茨城行きのフェリーに乗るも、船酔いに。学校なら囃されるが、自然に介抱してくれた大人たちに、心の殻が破れるのを感じ…。魂を揺さぶる至高の物語。
野亜市役所職員の磯貝健吾は、突然の人事異動で廃園寸前の市立動物園の園長に就任した。だが、初日から飼育員たちに“腰掛の素人”と反発されてしまう。挫けそうになったとき一人娘が写生したゾウの絵を目にし、何としてでも園を存続させようと決意。厄介な問題だらけだが、そこには曲者揃いの飼育員たちの動物への一途な想いがあった。真っ直ぐな情熱が胸を打つお仕事小説!
片目にナイフを突き立てられた元都議会議員の毒殺死体が発見された。臨場した捜査一課殺人班・入間祐希は毒物専門の殺し屋・蜘蛛が拘置所を脱走していたことを知る。過去の因縁から執拗にイルマを追う蜘蛛は、彼女の自室に侵入、二十四時間後に死に至るという毒薬を打ち込む。指示に従わなければ一人の少年が死ぬという。少年の命を守るため、イルマの孤独な闘いが始まった。
東京・田園調布で人気女優の千原玲子が射殺された。容疑者の坂本マネージャーを追って三田村刑事が鹿児島に飛ぶが、なんとJR最南端の西大山駅で狙撃されてしまう。一方、十津川は、玲子の愛人であるF&Kファンドの原口が南九州で進めた土地買い占めの背後に、巨大なプロジェクトの存在を掴む。現職知事も狙われる事件の真相に迫る捜査陣に、やがて未曾有の危機が…。
「母を死なせた犯人を捜したいんです」旅行作家・茶屋次郎の元に広島から細谷水砂という若い女性が訪ねてくる。彼女はラブホテルに入った実母を目撃し、逆上。火を放ち放火殺人の罪で服役したのだが、まったくの冤罪だと訴えた。“母殺し”に興味を抱いた茶屋は水の都へと飛ぶ。関係者を辿ると、放火のもう一人の被害者が、事件の二年前に“水死”していたことが判明し…。
皐月の末、両国では花火が上がり、川開きとなる。お紋、お市、お花の女三代が営む料理屋“はないちもんめ”も、うろうろ舟に弁当を仕出しするなど大忙しだ。江戸の誇り、初鰹の熱狂が一段落すれば安く仕入れて一工夫。常連の同心たちは束の間、舌鼓を打つが、またも難事件が。大の大人が六名、舟遊びに出たまま行方不明となったのだ。侃々諤々、料理屋一同が謎に挑む!
将軍家の金塊が移送中に忽然と消えた。探索に乗り出した仁左だが、紛失の責を負わされた者がかつての盟友・親野岩之助であることを知る。岩之助を切腹から救うには、沙汰が下る日までに真相を解明するしかない。一方、子供の拐かし等、仁左の周りで次々と不可解な事件が。金塊紛失との関係は?友の命を救うため、仁左はすべてを捨てて相州屋の仲間と奔走する!
親友の父を殺した秀夫は、服役中に連絡を絶った最愛の人を捜していた。だが、伝手となる男の殺害現場に遭遇。そこで、震災復興事業の横領を示す文書と大金の入った鞄を託されるが、少年康昊に持ち去られる。鞄回収のため悪徳刑事天明谷を遣う殺人者一味や、在日韓国人の不良金貸し一派が執拗に迫る中、秀夫を救った少年は山分けを主張。暗黒街を駆ける大争奪戦の行方は?
黒いダイバースーツを身につけたまま、浴室で死んでいた男。誤って赤ん坊を死なせてしまったという夫を信じて罪を肩代わりし、刑務所に入った母親。人身売買で起訴された犯罪組織のボスを弁護することになった新人弁護士。薬物依存症を抱えながら、高級ホテルの部屋に住むエリート男性。-実際の事件に材を得て、異様な罪を犯した人々の素顔や、刑罰を科されぬまま世界からこぼれ落ちた罪の真相を、切なくも鮮やかに描きだす。本屋大賞「翻訳小説部門」第1位『犯罪』で読書界を揺るがした短篇の名手が、真骨頂を発揮した最高傑作!
「おまえの愛しいその子を奪ってやる」脱獄した女妖がそう告げて姿を消して以来、弥助は養い親である千弥の過保護ぶりに息が詰まりそうだった。命が狙われているのだ、弥助だって怖い。だが、怯えて暮らすのはいやだ。普通の暮らし、妖怪の子預かり屋もやりたい。結界が張られた長屋から出ないことを条件に、千弥もしぶしぶ弥助の願いを聞き入れたが…。大人気シリーズ第八弾。