小説むすび | 2019年9月13日発売

2019年9月13日発売

愛は薄氷のうえに愛は薄氷のうえに

あなたの記憶が戻る前に、 この愛が本物だと伝えたい。 エレナは意を決し、スペイン富豪カレブの会社を訪れた。 カレブとは大学時代に出会い、激しく惹かれ合いながらも、 予測不能で奔放な彼との恋が一時の情熱で終わると思うと、 怖くなって自分のほうから逃げ出してしまったのだった。 この心は、あれからもずっとカレブを求めてきた……。 そして今、仕事の協力を願いにやってきたが、 再会したカレブは取りつくしまもなく、彼女の望みを拒絶した。 その直後、あきらめず会社の前に立つエレナに気づき、 追い払おうと道路に踏み出した瞬間、彼はバイクにはねられてしまう。 病院で目を覚ましたカレブは、エレナとのすべての記憶を失っていた! 付き添いのエレナが誰かもわからないまま、カレブは本能に導かれるように彼女の唇をむさぼります。一縷の望みを抱いたエレナは、精いっぱい看護することで愛と真心を伝え、彼が自分との記憶を取り戻したときに、気持ちまで変えてくれることを願いますが……。

小さな天使が舞い降りた小さな天使が舞い降りた

二人で見つけた小さな天使。 でも、心を一つにはできないの……? 病父と3人の弟妹を抱えるイービーは、看護師になる夢をあきらめ、 できたばかりの子供病院で受付事務をしている。 ある日、イービーは開院の祝賀パーティの準備に追われ、 夕方慌ててドレスを車に取りに行ったとき、美男美女が歩いてきた。 女性とぶつかって派手に転び、男性に助け起こされたイービーは、 会場へ向かう華やかな彼らと自分を比べ、意気消沈してしまう。 結局パーティには行かなかった彼女が、帰ろうと再び駐車場へ行くと、 先ほどの美男が待っており、新任の外科医のライアンだと名乗った。 こんなにすてきなドクターが、いったい私に何を……? その疑問が解ける前に、突如どこからか小さな泣き声が聞こえてきた。 見ると、段ボールに入れられた赤ん坊が置き去りにされていた! イービーが転んだときに落とした母の形見のネックレスを、拾っていたライアン。それを渡さないうちに赤ちゃん騒動が起き、小さく弱々しい天使を二人で病院へ運びます。やがてイービーはその子に深い愛情を持ち始めますが、医師のライアンの心は複雑で……。

エーゲ海の花嫁エーゲ海の花嫁

ナースのリアノンは2週間前、亡き親友から忘れ形見を託された。 赤ん坊の父親は、世界的に有名なギリシア富豪、ルカス・ペトラキデス。 陰のある美貌、洗練された立ち居振る舞いだけでなく、 誠実さと責任感の持ち主という評判を知り、リアノンは心を決めた。 親元のほうがこの子は幸せなはず。愛着が湧いてしまう前に渡さないと。 ところが、電話をしても取り次いでもらうことさえできず、 やむなく彼の高級リゾートで開かれるパーティー会場へ向かった。 勇気を振り絞り、話を聞いてほしいと告げたリアノンを ルカスは冷たく一瞥して、警備員に彼女をつまみ出せと指示した。 満座の注目が集まるなか外へ連れ出されながら、リアノンは叫んだ。 「あなたの赤ちゃんがいるの!」 ウェールズの郊外でつましく暮らすリアノンは、給料の半月分もの大金をはたいてルカスのホテルの一室を予約したのでした。でも、無慈悲な大富豪はリアノンの訴えを真っ向から否定して……。HQイマージュの代表作家、ケイト・ヒューイットの秀作をどうぞ!

ソビエト・ミルクソビエト・ミルク

ラトヴィアは、医師全体に占める女医の比率(7割超)と教育機関における女性管理職の比率(8割超)で、OECD(経済協力開発機構)加盟国中でもトップの座にある。この物語の核をなす母親もまた、産婦人科医として生命の誕生に携わる現場に身をおいている。  ソビエト体制下の閉塞感に追い詰められていく母親は、出産直後の娘に乳を与えなかった。その傍らで祖父母は孫娘を養育しながら、密かに語り聞かせるーー「かつてラトヴィアという国があったのだよ」  「母」と「娘」という、名前の与えられていない二人の語り手は、交互にリレーをしながら繊細にたゆたう関係を紡ぎあい、それぞれの葛藤をひもといていく。そこにわずかに登場する男たちの存在感は、断片的なものにすぎない。そもそも生命と記憶は、母から娘へと継承されるものだというかのように。  物語にインパクトを与えるのが、キリストを思わせるイェセと正教会の聖人セラフィムにちなんだ名をもつ人物であり、いわばオーウェル『一九八四年』のウィンストン・スミスである。ソビエト時代の人々はまた、アメリカのカウンターカルチャー、ブレジネフの死、チェルノブイリの原発事故、そしてベルリンの壁崩壊という、20世紀後半をガタガタと揺るがした出来事を肌身で切実に感じとっていた。物語は極めて個人的な母娘の関係を軸としながら、「人生は生まれた時代と場所で決まる」という普遍性を兼ね備え、同時にラトヴィアの森や暮らしの匂いも漂わせる。  本作は、“We, Latvia, 20th century”をテーマに現代作家たちが取りかかった小説シリーズの一作である。2015年に出版されて本国で記録的なベストセラーとなった。著者は本作を、女医であった実の母に捧げるものであるとともに、もし自分が出産を経験していたならばこれを書くことはなかっただろうとも述べている。原題M?tes piensの直訳は、すばり『母乳』。(くろさわ・あゆみ 翻訳家)

戦下の淡き光戦下の淡き光

1945年、うちの両親は、犯罪者かもしれない 男ふたりの手に僕らをゆだねて姿を消したーー 母の秘密を追い、政府機関の任務に就くナサニエル。母たちはどこで何をしていたのか。周囲を取り巻く謎の人物と不穏な空気の陰に何があったのか。人生を賭して、彼は探る。あまりにもスリリングであまりにも美しい長編小説。  ときおり、テムズ川の北の掘割や運河で過ごしたときのことを、ほかの人に委ねてみたい気持ちになる。自分たちに何が起こっていたかを理解するために。それまで僕はずっと匿われるように暮らしていた。だが、今では両親から切り離されて、まわりの何もかもを貪るようになった。母がどこで何をしていようと、不思議に充足した気持ちだった。たとえ真相が僕たちには隠されていたとしても。  ブロムリーのジャズクラブでアグネスと踊った晩のことを思い出す。〈ホワイト・ハート〉という店だった。混んだダンスフロアにいると、隅のほうにちらっと母が見えた気がした。振り返ったが、もう消えていた。その瞬間に僕がつかんだのは、興味をあらわにした顔がこちらを見ている、ぼんやりした映像だけだった。(本書より) 第一部 見知らぬ人だらけのテーブル 第二部 受け継ぐこと 母との暮らし 屋根の上の少年 塀に囲まれた庭 謝辞 訳者あとがき

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