2020年4月9日発売
フーちゃん、さようなら! 幼稚園の年長になった庄野家・次男の子、文子(フーちゃん)は、作者の家(山の上の家)のすぐ下に住んでいる。ことあるごとに(ときには一日に何度も)行き来をしては、作者の妻が洋服をつくってあげたり、ご近所さんからいただいた季節の風物をともに楽しんだりしていた。 そんな、まさに目の中に入れても痛くないほどかわいがっている孫が、隣駅の街に引っ越すことに。そしてほどなく卒園、小学生になり、ひとつの時代が終わりを告げる。 妻は「フーちゃん、いちばん可愛いときに近くにいて遊ばせてやれてよかった」と何度もつぶやくーー。 足柄に住む長女夫婦、〈山の下〉に住む長男・次男夫婦、そして近所の人たちとの交流を写実的に、丹念に描く「フーちゃん三部作」完結編。 気鋭の庄野潤三文学研究者・上坪裕介氏が「三部作」を通じた解説を特別寄稿。
贖罪の日々を送る男に許される日は来るのか 東京郊外で大学講師を務める矢口忍。その聴講生・卜部すえの、誠実で奥ゆかしく、はかなげなところに惹かれ恋仲になるが、すえとはまったく違うタイプの女性に心を奪われ、結婚してしまう。 すえの「最後に、もう一度会いたい」という願いをにべもなく断った翌日、すえが自殺ーー。以来、矢口は北海道の寒村で中学校の教師になり、自分を罰するためにひたすら禁欲的な生活をしていた。 しかし、友人の誘いで出掛けたシリアへの旅をきっかけに、矢口の心に変化が生まれ、止まっていた時間が少しずつ動き出すーー。 1976〜77年に「毎日新聞」に連載された、「愛とは何か」を鋭く深く問う、傑作長編小説の上巻。
昭和18年2月のトラック環礁、山本五十六GF長官は戦艦大和でガダルカナル島からの撤退作戦に関する朗報を待っていた…。同年4月、最前線で戦う兵たちを慰めるべく、ブーゲンビル島等を訪れる山本長官の視察計画が立案された。視察前夜、ラバウル基地に怪しい影が蠢く。暗号解読により山本五十六の行動を察知した米太平洋艦隊司令長官ニミッツ大将は、ハルゼーに極秘作戦を託す。標的である双発の爆撃機を発見した「双胴の悪魔」P38は作戦の成功を確信する…。
追い求めた理想社会とは。自律的かつ創造的な市民共同体を求めて、著者自身の歩みとともに、現代を問い直す或るアナキストの長大なモノローグ。遺稿となった未完の小説。戦後日本の歩みを自分史に重ねて再構築する試み。
シェイクスピアに続き、世界でもっとも上演される近代劇の父、ヘンリック・イプセン。女性解放を促した不朽の名作に詳細な注釈を付す。 《シリーズ刊行予定》 ・イプセン 『ゆうれい』、『野がも』、『ヘッダ・ガブラー』 ・ストリンドベリ 『父』、『令嬢ジュリー』、『夢の劇』 ・チェーホフ 『かもめ』、『三人姉妹』、『桜の園』
情熱の炎を燃やし続ける。それが、夢を叶えるただ一つの道。男性ばかりの陶芸界に挑んだ、焼き物の里・信楽に生きる女性陶芸家:川原喜美子の波乱万丈な物語。女性陶芸家として一人立ちをしてから激動のクライマックスまで完全小説化。