2020年7月1日発売
1934年にナチス政権下の現ポーランド領に生まれ、「ドイツ人追放」により旧東独で育ち、作家デビューに伴い西ベルリンに「転居」、1984年にイギリスで孤独死したヨーンゾン。イデオロギーで分断された世界を対話的に描き、ブランショに称賛されるなど、戦後ドイツを代表する作家としての評価はいまだ揺るぎない。その文学的営為の根本的な「詩学」の問題は「対話性」や「倫理」という図式に回収されてきたが、本書は精緻なテクスト分析と大胆な批評性であえてそれらの「境界」を探り、彼の文学を貫く「真実への困難な探求」を新たな視点から描き出す。 序文 第1章 詩学 第1節 導入──ヨーンゾンの「詩学講義」 第2節 「詩学」の歴史──古代ギリシアからロマン派まで 第3節 戦後ドイツにおける「詩学」の制度化 第4節 〈ポスト詩学〉の状況 第5節 表されるものが表す手段を条件づける 第6節 方法論についての要約 第2章 ダイアローグ 第1節 導入──境界線 第2節 〈語りの全知性〉をめぐる問題 第3節 作り出された人物 第4節 対話性の詩学 第3章 パフォーマンス 第1節 導入──小説は革命のための武器ではない 第2節 二つの政治性 第3節 文学における「真実」 第4節 「真実探求」の死角 第5節 『ベルリンのSバーン』 第6節 パフォーマンスとしての「真実探求」 第4章 モダニティー 第1節 導入──モダニスト・ヨーンゾン 第2節 『長篇小説を検討するための諸提案』 第3節 モダニティーの歴史イメージ 第4節 ボードレールの現代性 第5節 理想と憂鬱 第5章 『ヤーコプについての推測』 第1節 導入──「難解」な小説 第2節 対話的形式 第3節 ロールフス 第4節 ヨーナス・ブラッハ 第5節 ゲジーネ・クレスパール 第6章 『イースターの水』 第1節 導入──「模範的な短篇小説」 第2節 水と鏡のイニシエーション 第3節 かつての少女の追憶 第4節 完結性と破綻 第7章 『記念の日々 ゲジーネ・クレスパールの生活から』 第1節 導入──付随状況 第2節 一年の日々 第3節 暦と想起 第4節 コレスポンダンスとアレゴリー 第5節 言語の問題 第6節 『記念の日々』における対話性 第7節 わたしが死んだときのために 終 節 マージョリーのゆくえ 結語 あとがき 参考文献 索引