小説むすび | 2021年1月6日発売

2021年1月6日発売

恥さらし恥さらし

人生の葬り去りたい記憶の瞬き  1990年代から現在までのチリを舞台に、社会の片隅で生きる女性や子どもの思いと現実をまばゆく描き出す9つの物語。 「恥さらし」9歳のシモーナは、失業中の父と幼い妹とともに面接会場に向かう。会場に着くと、意外な展開が待ち受けていた。 「タルカワーノ」軍港のある寂れた地方都市タルカワーノに暮らす「僕」は、ザ・スミスに憧れて、近所に住む兄弟とバンドを組む計画を立てる。楽器を教会から盗もうと企んだ彼らは、日本古来のニンジュツの修行を始める。 「アメリカン・スピリッツ」3年前、ファミレスのフライデーズでアルバイト仲間だったドロシーに呼び出された語り手が、彼女から意外な告白を聞く。実は、ドロシーはある事件の張本人だった。 「よかったね、わたし」首都サンティアゴのショッピングモール内の図書館で働く孤独な女性デニス。しつけの厳しい家庭に育ち、成績優秀だが友だちのいない少女ニコル。2人のヒロインの人生が交互に展開する。  2015年度チリ芸術批評家協会賞、2016年度サンティアゴ市文学賞を受賞、チリの新星による鮮烈なデビュー短篇集。

紅紫の館紅紫の館

出版社

未知谷

発売日

2021年1月6日 発売

安政七(1860)年三月三日に、雪降る桜田門外で、井伊大老が暗殺された。徳川幕府の瓦解のはじまりだった。当日の江戸城内には、最高官位の和宮に献上された豪華な「五段雛人形」が飾られていた。家茂将軍の権威と威光をしめす演出であった。すぐさま極秘裏に撤去された。日比谷健次郎は武蔵国足立郡の郷士で、北辰一刀流の免許皆伝である。日比谷家、三郷の加藤家、八潮の佐藤家の三家は、徳川幕府の特命を請け負う「内密御用家」であった。徳川政権が倒れて、戊辰戦争が勃発すると、三家は隠密として臨機の処置で俊敏に活躍する。「徳川の頭脳」といわれた陸軍奉行並の松平太郎が、江戸城の無血開城前に金座・銀座から秘かに百万両を運びだす。隠密御用家は埋蔵金の隠し場所につとめた。膨大な金が旧幕府軍、新選組、奥羽越列藩の戦費となった。新政府軍が上野戦争を仕掛けてきた。戦火のなか、和宮の願いもあり日比谷健次郎たちは命をかけて、寛永寺貫主の輪王寺宮を危機一髪で救出する。奥州に逃げ延びた輪王寺宮は『東武天皇』として即位し、三月十五日『延壽』(えんじゅ)という元号を発布した。西側の幼帝と東側の東武天皇という、南北朝に似た国家分断の戦いになった。新政府軍が勝利し、元号『延壽』が歴史から消された。戊辰戦争が終わると、井伊大老の殺害で消えていた五段雛人形が、悲劇の皇女・和宮にからみ意外な展開をみせた。薩長政権が捏造した幕末史を暴く歴史小説である。

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