小説むすび | 2022年9月30日発売

2022年9月30日発売

その昔、N市ではその昔、N市では

兄は船旅に出る妹を見送ったが、それは彼女が乗る予定の船ではなかった。ひと月後、妹から手紙が届く。彼女は、その船では日付も時刻も現在位置も確認できないと書いていた。手紙を読み進めるにつれ、内容はさらに常軌を逸していき…(「船の話」)。ある日突然、部屋の中に謎の大きな鳥が現れる。“わたし”は、なぜか外に出ていかない鳥の正体を突き止めようとするが…(「ロック鳥」)。旅行から帰ったら、自分が死んだとアパートの住人に触れまわった女がいたという奇妙な話を聞かされて…(「六月半ばの真昼どき」)。大都会N市では、死体から蘇生させられた“灰色の者”たちが、清掃や介護などの労働を人間の代わりに行っていた。彼らに生前の記憶は一切なく、恐怖も希望も憎悪も持ち合わせていない。しかしある時、“灰色の者”たちにすさまじい変化が訪れ…(「その昔、N市では」)。日常に忍びこむ奇妙な幻想。背筋を震わせる人間心理の闇。懸命に生きる人々の切なさ。戦後ドイツを代表する女性作家の粋を集めた、全15作の日本オリジナル傑作選!

灰かぶりは伯爵の愛し子を抱く灰かぶりは伯爵の愛し子を抱く

娘を見るたび、まぶたに浮かぶ彼の姿。 ある日、本当に彼を目にするとはーー! 乗馬中にぶつかった男性が顔を上げた瞬間、メリッサは息をのんだ。 シルバーグレーの瞳。傲慢そうな顎。間違いない。ローレンスだわ。 この20カ月、かたときも頭を離れなかった男性ーー ファーストネームしか知らなかった娘の父親が、目の前にいる。 「メリッサじゃないか! その子はいったい──」 「ローレンス……」腕のなかの娘を強く抱きしめ、一歩後ずさる。 都会に憧れる世間知らずの男爵令嬢が、使用人の姿で訪れたロンドンで 素性の知れない男と恋におち、身ごもった。家名に泥を塗ったと 激怒する両親の反対を押し切って、メリッサは娘を産み育ててきたーー。 「とても美しい子だね。君の夫は幸せ者だ」 「夫はいないわ」その言葉に“ウィンチカム伯爵”は顔色を変えた。 メリッサが自分の子を産み育ててきたことに責任を感じてローレンスは、彼女に求婚。彼が裕福な伯爵と知って大喜びする両親をよそに、メリッサは哀しみに沈みます。彼が欲しいのは私ではなく娘だけだから……。リージェンシーの切ないシークレットベビー物語!

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