2023年1月23日発売
路線バスで小さな旅に出る。各地を巡りながら、人と出会い、日常の謎を追う。津軽で少年たちが見た男、亡き夫が呟いた女の名前、博多のストーカー…。謎を解き明かすのは、元刑事・炭野の妻・まふる夫人。最後に彼女が挑んだのが、インターネットの情報を盗み出すフィッシング詐欺常習犯の行方。バスを駆使して逃亡する犯人は、いったいどこへ。彼女は解き明かせるのか!?
61歳の男が介護問題で揉めて妻を殺害ーニュースを聞いたおれは驚愕した。被害者も加害者も学生時代の旧友。しかも妻の方は34年前、挙式当日に新郎を殺され、犯人も見つからずじまい。そして再婚した夫に殺されたというわけだ。おれは不安な気持ちを吐露したくなり、「リモート相談窓口」に向かうが…(「異分子の彼女」)。コロナ禍の櫃洗市で発生する奇怪な事件の謎を、公務員探偵がオンラインで解決するミステリ作品集。
存在を規定する記憶をすべて失い、“ウル”と名づけられた女性が、混沌の中から意識の底にある感覚を浮上させ、自分が何者であるのかを夢幻的に探っていく三つの物語。
戦争の大義は何処へ、三部作最終章。激戦地クレタ島脱出から二年が経ち、ガイ・クラウチバック大尉はロンドンで無為な日々を送っていた。王立矛槍兵団の戦友たちが戦地へ向かうなか、もうすぐ四十歳という年齢を理由にひとり後に残されたガイは、開戦時に抱いた崇高な大義を見失いつつあった。一方、クレタ島でガイの命を救ったリュードヴィック曹長はいまや情報軍団少佐に昇進し、戦場で書きとめた覚書きに基づく『瞑想録』の出版を画策中。ガイの元妻ヴァージニアは予期せぬ妊娠に途方に暮れていた。ついに情報将校としてイタリア方面への派遣が決まったガイは落下傘降下訓練に参加するが、訓練中の負傷で療養生活を送るはめに。不運続きのガイの戦場は一体どこにあるのか…。自身の軍隊体験をもとに、戦争の醜悪かつ滑稽な現実と古き理想の崩壊を描くイーヴリン・ウォー最後の傑作“誉れの剣”三部作完結篇。
セノレーン王国の第一王子でありながら娼婦を母に持つその出自から正妃に疎まれ、常に命の危機に晒され続けてきたオルトスは、王子として持つべき力を何も与えられず、この先の未来さえ見通しが立たない虚無の象徴であった。国軍に所属する魔術師の少女エリーニは、白昼堂々、王城内で暗殺未遂に遭ったオルトスを庇ったことから、二人揃って“欠魂”してしまう。同時に欠魂した弊害で互いが四歩以上離れると意識を失う事態に陥ったエリーニとオルトスは、行動を共にしつつ魂を修復する方法を模索し始めるが、二人にはそれぞれ胸に秘めた思惑と願いがあったー。
人生のすべてのタームにおいて、いつも“それなり”に生きてきた紬実は、ある日、職場の後輩でイケメンと評判の鬼島の額に“ツノ”が生えているのを見てしまい、その正体が“鬼”だと知る。興奮するとツノが生えてしまうという鬼島、その欲の発散をなりゆきで手伝ったら、結婚を前提としたお付き合いが始まることに…!?
ロシアの支配により過酷な変容を迫られた19世紀のジョージア。植民地支配脱却の鍵を宗主国ロシアに求めた作家と、ローカルな神話に想像の源泉を求めた詩人。植民地ジョージアにおける、2人の交点とは?第3回東京大学而立賞受賞。