2023年4月発売
人生に疲れた40歳のファウストは、長年暮らしたミラノを離れてイタリアンアルプス近くのレストランで働き始める。山に囲まれ次第に人間らしさをとりもどしていたとき、狼たちが山からおりてきていたーー。ストレーガ賞受賞作家が描く、人生やり直し山岳小説。
小島に一人住む元医師の家が火事に 男はすべてを失ったうえ、放火の疑いをかけられる だがその後、周囲の島でも放火らしき家事が連続して発生・・・・・・ 〈刑事ヴァランダー・シリーズ〉で人気の北欧ミステリの帝王最後の作品 一人孤島に住む、元医師のフレドリックは、就寝中の火事で住む家も家財道具もすべてを失う。その後警察の調べで火事の原因が放火であったことが判明、さらに自分の家に火を付けたと疑いをかけられてしまう。そんなとき、離れて住む娘のルイースから、パリで警察に捕まっているので助けて欲しいという電話が入る。フレドリックは単身パリに向かうが……。CWAインターナショナルダガー賞を受賞した、北欧ミステリの帝王最後の作品。
姉が弟の遺体を浄める。本来これは同性の仕事なのだが、姉は自分がやると主張したー。亡き弟の思い出を情感豊かに紡ぐ「浄め(グスル)」。アメリカの女の子として成長してきたアラブ系移民2世の“わたし”と、波乱の人生をおくった伯母の物語に、窓から飛び降りた女が女神と邂逅する幻想的な光景を織り込んだ「マナートの娘たち」。#MeToo運動以前の映画産業で、あるインターンの女性が受けたハラスメントを描き、問題提起する「懸命に努力するものだけが成功する」。新聞記事や手紙、メールの文章、リアリティー番組の台本やSNS投稿など虚実取り交ぜた多彩な媒体のコラージュで、フロリダで実際に起こったシリア・レバノン系移民夫婦のリンチ事件を核に、アメリカという国家に潜む暴力性や異質なものを排除しようとする人間の本質を浮かび上がらせる野心的な傑作「アリゲーター」。過酷な現実を生きる人々に寄り添い、多様な声を届けようとする全9篇。現代アメリカ文学の新鋭による鮮烈なデビュー短篇集!
【新連載】 名探偵の有害性 第1回 桜庭一樹 ●一世を風靡したかつての名探偵。わたしは彼の、助手だったーー直木賞作家が贈る最新長編! 【特集 舞台(ステージ)!】 ここにいるぼくら 近藤史恵 ●「キャス変」が、いかに大きな波紋を呼ぶか、ぼくはまったく気づいていなかった 宝石さがし 笹原千波 ●夢を諦めたデザイナーと、挫折を経験したバレエダンサー。ふたりが挑む新たなステージはーー おかえり牛魔王 白尾 悠 ●正しく目立つ、美しい同僚。空気を読まず、定時で颯爽と職場から消える彼女が、何より優先するものとは ダンス・デッサン 雛倉さりえ ●劇団に所属し、日々ミュージカルの舞台に立つ瀬木。心にはいつも亡くなった友人、理人の姿があった モコさんというひと 乾 ルカ ●二・五次元の観劇を生きがいにする真美。あるフォロワーの呟きに目が止まって…… 『007/カジノ・ロワイヤル』宝塚歌劇にて舞台化記念 特別インタビュー 宝塚歌劇団 宙組トップスター 真風涼帆 【小特集 読む、味わう、絶対ハマる!〈猟区管理官ジョー・ピケット〉の世界】 発砲あり C・J・ボックス 野口百合子 訳 ●広大な丘陵地帯でハンターの車が撃たれた。猟区管理官のジョー・ピケットが現場に向かうと……。大人気シリーズが短編で登場! 〈猟区管理官ジョー・ピケット〉シリーズの魅力 西部の大自然と心優しき正義の男 三橋 曉 ここだけの訳者あとがき 野口百合子 2023年6月刊行! 新刊 『Off the Grid』紹介 【小説】 明治殺人法廷 第4回 芦辺 拓 きみのかたち 第7回 坂木 司 特撮なんて見ない 第7回 澤村伊智 記憶の対位法 第4回 高田大介 ときときチャンネル#4【近所の異世界散歩してみた】 宮澤伊織 【特別企画】 第23回本格ミステリ大賞候補作決定! 第23回本格ミステリ大賞予選会選評・選考経過 日本推理作家協会賞の新部門「翻訳小説賞」スタート 【ESSAY】 私の小さな地図帖 その一 海へつづく道 山崎佳代子 装幀の森 第6回 アルビレオ 翻訳のはなし 第8回 仕事と締め切り 杉田七重 乱視読者の読んだり見たり 第6回 『ロリータ』と映画 若島 正 ホームズ書録 蔵書の価値に十年以上気づかなかった『怪人魔人』 北原尚彦 【COLUMN】 ひみつのおやつ*取引先からいただくお土産 なみあと 私の必需品*ブックカバー 砂村かいり 【INTERVIEW 期待の新人】 真紀涼介 【INTERVIEW 注目の新刊】 『赤い月の香り』 千早 茜 『花に埋もれる』 彩瀬まる 【BOOKREVIEW】
疎外された者の絶望と孤独を優しく照らし、 現代社会に問いかける小品集 私たちは生きるのに精一杯で、誰かの痛みに関心を持つことは難しい。でもその痛みはいつか自分に降りかかるかも知れない。困難な時代に痛みが弱者に集中せずに、分散して和らぎ健やかな社会へと向かうには、「他者」の痛みに寄り添う営みが必要だ。無関心は残酷さにも気付けないが、誰かに救われた記憶は、また誰かを救う。傷ついた記憶すべき人々を忘却から引き戻し共感へと引き寄せる、優しくも力強いこの短編たちが誰かの希望となり、強者に押し込められた孤独から、救う者と救われる者を護り照らす一筋の光になることだろう。 光の護衛 翻訳のはじまり モノとの別れ 東の伯の林 散策者の幸福 じゃあね、お姉ちゃん 時間の拒絶 ムンジュ 小さき者たちの歌 解説 彷徨う存在の記憶と光(文学評論家・韓基イク) 作家のことば 訳者あとがき
直木賞作品を含むミステリアスな短篇集 辛亥革命後の中国で、ある宦官に清朝時代の宝物・青玉獅子香炉の贋作をつくってほしいと依頼された李同源は、名人の弟子というプライドを胸に、本物に勝るとも劣らない見事な品を彫り上げる。 真作として紫禁城内に収められた李同源の獅子香炉は、その後、国共内戦が激化したため、安全な場所に移送することに。獅子香炉にただならぬ愛着があった李同源も随行するが、宝物が入っているはずの箱を開けてみると……。 直木賞を受賞した「青玉獅子香炉」のほか、ラワン材のバイヤー・王究が日本に送ってきた恐ろしい材木を描く「年輪のない木」、アフガニスタンへ仏跡巡礼の旅に出ていた日本人高校教師が、現地で殺人事件に巻き込まれる「カーブルへの道」など、全5篇を収録。
蝦夷に商圏を広げようとする近江商人の物語 「東の地の適する産物を、西に運び、西の地に適する産物を、東に運びますれば、それぞれの地に最も適する産業が発達致します理でございまして……ところが、この蝦夷の地と申しますは……この広大な土地が殆ど白紙のままに残されているのでございます。」 近江商人の家に生まれた藤村与右衛門、孝兵衛の兄弟が、江戸末期、経済が混乱するなかで未来を切り拓いていく物語。 地図に魅せられ、旅をするのが大好きな与右衛門を差し置いて、浪人の新之助らとともに蝦夷に向かった孝兵衛。アイヌの人々から歓待を受けたり、巨大なアメリカの黒船と遭遇したりしながら、商売のタネを見出そうとするがーー。 芥川賞候補作『草筏』に次ぐ、「商店もの」三部作の第2弾。
魂を揺さぶる村上春樹の<秘密の場所>へーー待望の新作長編一二〇〇枚! 十七歳と十六歳の夏の夕暮れ……川面を風が静かに吹き抜けていく。彼女の細い指は、私の指に何かをこっそり語りかける。何か大事な、言葉にはできないことを。高い壁と望楼、図書館の暗闇、古い夢、そしてきみの面影。自分の居場所はいったいどこにあるのだろう。村上春樹が封印してきた「物語」の扉が、いま開かれる。
日本イエズス会管区長代理という当時最高責任者だったにも関わらず「信仰薄きゆえに拷問に堪えかね、ころび者になった」そんな皮相的なイメージ…宗教の衣を脱ぎ現世の道徳を重んじた儒教に傾倒したフェレイラの思想を追うキリシタン小説。
千秋国際空港で大型旅客機が爆破された。県警捜査一課の内藤は初動捜査に当たるが、捜査本部は手口から国際的なテロと断定、テロを専門に扱う公安部に捜査の主導権を奪われてしまう。捜査の本筋から外された内藤には、無数にある防犯カメラ捜査が割り当てられたが、空港内のありとあらゆる風景を記録していたはずのカメラに、犯行の様子を記録したものは一つもなかった。本当に国際テロ組織による犯行なのか。四十年前の開港前夜、空港反対派による過激な反対運動があったが、今はもう、その火は完全に消えている。関連はないのか。もし反対派なら、今さら何に反対しようというのか。内藤が頭を悩ませる中、厳戒の警備態勢をあざ笑うかのように二機目が爆破されるーーーー
アネリーズはパリにある会社に就職し、忙しい日々を送っていた。1度しか会っていないCEOのニコラと彼女が交際中だという、根も葉もない新聞記事のせいでパパラッチが押し寄せてくるまでは。彼はヨーロッパじゅうの王族が結婚相手に望むほどの大富豪だ。このままでは私の存在が迷惑になる。会社を辞めて田舎に引っこもう。ところがニコラはアネリーズを呼び出し、驚くべき提案をしてきた。記事を書かせた者をさがすため、彼の婚約者を演じてほしいというのだ。もちろん自分では分不相応だからと、アネリーズは断ろうとした。けれどニコラに手を握られ、黒い瞳で情熱的に見つめられるうち、唇はいつの間にか「はい」と言っていて…。