2024年5月9日発売
鳴り響くアメリカ国歌、まき散らされる炎、光る銃に流れる血。崩壊する町で逃げ惑う住民たちが辿りついた先は、元大統領邸宅だったー。“現代アメリカ”の極地を描く近未来ディストピア作品集。秘密裏に息子をサンプルとした社会実験をおこなう教授、世界滅亡前に家を買おうと奮闘するシングルマザー、白人至上主義者たちが暴徒化した世界で立ち上がる、偉人と奴隷の子孫の女子学生、これはSFなのか?それとも現実なのか?衝撃のデビュー作。表題作の中編ほか5作品を収録。
季節の風物とともに描く家族の絆の物語。-いま息子が望んでいることを、はなからそれは無理というものだ、と諦めさせたくはなかった。ずっと中学校を登校拒否していた瞬が、引きこもっていた家を出て、社会へと足を踏み出そうとしたことはよかったではないか、と斎木は信じたかった。-草木に囲まれ、野鳥のさえずりを聞きながら暮らす小説家の斎木と奈穂の夫婦。あたたかいご近所さんと交流しながら平穏に暮らすふたりのもとに、斎木の先妻との子が家出したという知らせが舞い込んできた。家庭に大きな不満を抱く息子に寄り添い、離婚以来ほとんど会うことがかなわなかった息子との絆を取り戻すことはできるか…。第31回大佛次郎賞に輝いた名作私小説の後編。
伝記と小説の融合を試みた意欲作3編収録。「自分はむろんのこと、読者にもすこしは楽しんでもらえるような伝記文学の方法はないものかと考えた末にたどり着いたのが、想像や空想も挿入できる小説と伝記のドッキングというスタイルであった。」「日本近代文学史上に巨大な足跡を印した永井荷風の文学的開眼に決定的な影響をあたえた」井上啞々の足跡をたどり墨田川界隈を訪ねる「夜の烏」、悪妻といわれたラフカディオ・ハーン夫人・小泉節子の真実に迫る「残りの雪」、パロディ精神にあふれる批評や小説で名を成したものの貧しさから抜けられず、「本日を以て目出度死去仕候」という新聞広告を出して生涯を閉じた斎藤緑雨を描いた「散るを別れと」-。いずれも事実を丹念に追いつつ、小説仕立てにして想像の羽を大胆に広げる構成で、読む者を魅了する。
ダニエルは26歳。難病で常に呼吸停止の危険に晒されているものの、朝食後には電動車椅子で玄関ポーチに出て、外の空気を吸うのが好きだった。毎朝、家の前を歩く彼女を心待ちにしていたが、携帯を見ている彼女は気づかない。それでもある朝彼女は顔をあげ微笑んでくれたが、見知らぬ車に乗りこんで行ってしまった。数日後、彼女が行方不明だと知ったダニエルは誘拐を疑いSNSに目撃情報を投稿すると、謎の人物から脅迫メールが届きはじめて…。サスペンスフルなのに読後に胸が熱くなる新感覚ミステリ登場。