2025年3月24日発売
アイリスは悪女に見えてしまう顔つきがコンプレックスの子爵令嬢。 しっかり者で優秀にもかかわらず恋人はおろか男性とは無縁の生活を送っていた。 結婚は諦め、家の内政につとめようと勉強していた矢先、 女性嫌いと噂される王子ウィリアムの指導係に任命される。 彼は「既成事実を作れば、君は私の妻になるわけだね」と、 甘く囁き、いやらしい指づかいで身体に触ってきて……。 潔癖な王子様だと思っていたけれど、 淫らな一面や意外と可愛らしい一面を見て、彼に惹かれていきーー。
私たちの声はよく似ているのでどれも混ざる、来年も私たちは五人でいるだろうーー。 母の再婚で「姉」になったハルア、 恋愛に打ち込みたいスポーツ少女ナノパ、 鼻の低さがコンプレックスのダユカ、 「空気の読めなさ」を自覚するシイシイ、 家計のためバイトに明け暮れるウガトワ。 高校二年生の仲良し五人組。 同じ時を過ごしていても、 見据える景色が同じとは限らない。 芥川賞作家が描く、澄みわたる青春群像劇!
秘すれば、花なりーー。 そう微笑んだ彼女は、美しかった。 この世のものではあり得ぬほどに。 「パパの死体を捨てるの、手伝ってくれない?」 2021年、コロナ禍の新宿トーヨコ。 茨城を飛び出したジローは、キャイコと名乗る少女と出会い死体遺棄に協力する。 キャイコはなぜ父親を殺したのか、そしてジローはなぜ彼女を救ったのか? その答えは、遠い昔に失われたはずの能曲「金色姫」に秘められていた。 足利、豊臣、徳川。時代を超えて権力者を魅了したその舞が令和の新宿に顕現するとき、約500年にわたる祈りの物語が収束する。 気鋭のSF作家による、能楽×サスペンス×百合クロニクル、開幕!
匣(はこ)に刻まれた一字は己の運命。 その字に従うか、刃向かうかーー。 これは少女が国を「盗」み、世界を変える物語。 大陸一の港町・顎港の路地裏に、赤子が打ち棄てられていた。 僑燐(きょうりん)と名付けられたその少女の持ち物は、首に提げられた小さな匣のみ。 それもまるで開く気配がなく、ただ「盗」の字が刻まれているだけ。 この一字に導かれるように、長じた僑燐は盗賊団を乗っ取り、義賊として民たちに慕われていく。 そして顎港の支配者と対立し、歴史がうねりを上げて動き始める。 構想10年、編み上げた物語年表は1000年分。 新時代の中華ファンタジーシリーズ、ここに開幕!
大冒険小説の傑作を新装刊 海賊が跋扈する17世紀末。 海賊討伐の命を受けて出帆するも自ら海賊船へと姿を変えた「アドヴェンチャー・ギャレー」号。 航海士としてこの船に乗り組み、やがて海賊船の船長となったジェームズ・モアは、ユニークで頼りになる仲間たちとともに大海原をゆく。 海賊としての輝かしい成果と数々の危機。痛快な大冒険。そして因縁の対決へーー。 1998年初版、傑作海賊冒険小説を新装版として刊行
田中小実昌 生誕100年記念刊行 『ポロポロ』から『アメン父』へーー。 幼少期、従軍、復員ののち東大哲学科入学。 米軍基地のアルバイトで暮らし、翻訳家、小説家となって後も、コミさんは哲学に関心を持ち続けた。 映画館への途中で、バスの旅で。カバンに忍ばせた文庫本に、文句と注釈をつけながらも読み続ける。 そんな日々が、いつしか「小説」となる……。 「哲学」「宗教」「小説」の三位一体のかんけいの謎を追究し、著者晩年の代表的シリーズとなった「哲学小説」を初集成(全三巻)。 第3巻は「カント通りまで百メートル」(1982)から「LAにいるのかな」(1997)まで、単行本未収録作品14篇をまとめる。 〈解説〉佐々木敦 [全巻構成] 第1巻 『カント節』『モナドは窓がない』(全11篇所収)/巻末対談:柄谷行人/平岡篤頼/井上忠 第2巻 『なやまない』『ないものの存在』(全10篇所収)/巻末対談:池内紀+堀江敏幸/保坂和志+石川忠司 第3巻 単行本未収録作品集(全14篇所収)/解説:佐々木敦
“アンパンマン”を生み出したやなせたかし・暢夫妻をモデルに描く、愛と勇気の物語 “アンパンマン”を生み出したやなせたかしと妻・暢をモデルにした連続テレビ小説「あんぱん」を完全小説化。何者でもなかった二人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどり着くまでを描く、愛と勇気の物語。 時は昭和の初めごろ。高知の町を元気に走り回る少女がいました。「ハチキンおのぶ」こと、朝田のぶです。一方、幼い時に父を病気で亡くした柳井嵩は、高知の伯父の家に引き取られます。転校先の小学校で2人は出会い、友情を深めていきます。数年後、二人はそれぞれの学校に進学。戦争の足音が近づくころ、のぶは軍国少女として国のためにつくします。やがて戦争が始まり、嵩は出征。二人は戦争に翻弄され、何が正しいのかわからなくなっていくのでしたーー。
ムラカミはなぜ世界を魅了するのか? 飼い猫の失踪をきっかけに、どこにでもある日常を生きる「僕」の毎日が一変する。「壁抜け」による時空の超越、凄惨な歴史の記憶、日常に潜む闇、解かれることのない謎ーー。作者自身が「意欲的な小説」と振り返る本作は、村上春樹を「世界文学」のステージへと押し上げた傑作と名高い。特異かつ難解なことで知られる物語世界に分け入り、卓抜な文学表現を味わいながら、「閉じない小説」の深層へと迫る。
直木賞受賞作『花まんま』から20年、映画から魂を吹き込まれた新たな感動作! 本書は2025年4月25日に公開予定の映画『花まんま』のサイドストーリー。登場人物の背景にある「もうひとつの物語」を、原作者ならではの視点で描き出し、映画のその先の世界へと、読者をいざないます。 〜映画から生まれた4つの物語〜 「花のたましい」 … 見えない明日を懸命に生きる駒子と智美。はかなくも美しい友情の行く末。 「百舌鳥乃宮十六夜詣」 … 幼少期の不思議な体験を昭和の世相に重ねて描くノスタルジック・ホラー。 「アネキ台風」 … こわれかけた家族をパワー全開で再生しようとする肝っ玉アネキの奮闘記。 「初恋忌」 … 人生の終わりを予感した男の身に起こる、小さな奇跡。感涙必至の好篇! 泣いて、笑って、幸せに。 「花のたましい」 「百舌鳥乃宮十六夜詣」 「アネキ台風」 「初恋忌」 全4篇。すべて書き下ろし。
執筆足かけ十年。宮本文学、初の歴史小説、全四巻の第三巻。 時代背景は、下関戦争(1863〜64)から大政奉還(1867)、鳥羽・伏見の戦い(1868)を経て、明治新政府が本格的に発足するまで。 主人公・川上弥一は新時代に対応し、富山の薬売りを近代的な「カンパニー」に脱皮させようとする。 日本の夜明け前を、勇気をもって駆け抜けた人々の姿を描く! <全四巻から成る大河小説。読みごたえがある。 武士や権力者ではなく、市井の人間が激動の時代を懸命に生きる姿が見事にとらえられているのは宮本輝ならでは。> --川本三郎氏(評論家)「毎日新聞」2025年6月7日付の書評より <宮本文学の代表作の一つとして、長く読み継がれる作品になるだろう>--重里徹也氏(文芸評論家) 「東京新聞」2025年5月31日書評より <日本各地を回った富山の薬売りの鋭い観察眼と時代認識を通して、黒船来航から王政復古を経て西南戦争にいたる平和と変革の時代を描く雄渾な文学作品> --山内昌之(東京大学名誉教授/「週刊文春」2025年2月27日号の書評より) <「一身にして二生を経る」ほどの幕末維新の激動を乗り越えた日本人のたたずまいが巨匠の筆で活写されている。この小説は混沌の現代を生きる私たちの心の支えだ。> ーー磯田道史(歴史学者・国際日本文化研究センター教授) 全四巻それぞれに違った著者直筆の「ことば」が入った初回配本限定特典「讀む藥」付。 第四十八章 ふたたび薩摩へ 第四十九章 行商 第五十章 少年 第五十一章 本枯れ節 第五十二章 羊毛玉 第五十三章 水戸天狗党 第五十四章 将軍上洛 第五十五章 朝廷の闇 第五十六章 日去りて月来る 第五十七章 異国人居留地への旅 第五十八章 幕府弱体 第五十九章 帝の影 第六十章 孝明天皇の死 第六十一章 大政奉還 第六十二章 奸計 第六十三章 動乱開始 第六十四章 こぜりあい 第六十五章 牛小屋の夜 第六十六章 鳥羽伏見の戦い 第六十七章 恭順 第六十八章 江戸を焼く 第六十九章 洋薬襲来 第七十章 古着屋せいさん 第七十一章 武士たちの行方 第七十二章 新しい旅 主要登場人物 江戸〜明治初期の単位換算表 富山の薬売りの専門用語
おいとは、地元の深川今川町で髪結い床を開くことになった。以前は華やかな花街でお里師匠の下で働いていたが、急病で亡くなったお里から、弟子たちと共にそれぞれの店を持つ夢を託された。おいとは周囲の支援を受けながら、不安を抱えつつも、自身の店を立ち上げた。徐々にお客が訪れるようになり、地元の好みを理解しながら、髪結いの「技」を磨いていく。特に、初めて髪を結う弟子のお恵を指導しながら、おいとは自らの技術も向上させていく。お客の反応を見ながら、流行を取り入れつつ、地元ならではの髪形を確立していくことが求められていた。数ヶ月が経つと、店も繁盛し、特に年末には多くの客が訪れるようになった。おいとは新しい技術を弟子たちに教えていく中で、自己の成長も感じる。幼い娘の誘拐、仇を求めて江戸にやってきた若侍への淡い恋心、弟子の出奔、最愛の肉親の死……様々な出来事に翻弄されながらもおいとは、弟子たちを一人前の髪結いに育てることを使命とし、時代の流れに合わせた新しい技術を磨くことを誓う。髪結いの仕事は、彼女の人生そのものであり、客のために美しい髪を結うことが髪結いを生業とするおいとの喜びなのだ。未来を見据えながら、さらなる成長を目指し、髪結いとしての道を歩んでいく。 前口上(前作のあらすじ)/第一章 「髪結い床」おいと/第二章 勾引(かどわかし)/第三章 敵仇(かたき)/第四章 深川えにし/第五章 川井リク/第六章 灯籠(とうろう)びん
見せてあげましょう。新しい織田の戦を。 悪化の一途を辿る三河の情勢。本證寺を筆頭とする三河一向衆や、尾張と伊勢の境にいる願証寺と北伊勢が敵に回るかもしれない……。きな臭い気配が漂う中、本願寺の使者が本證寺の者に討たれるという知らせが人々を驚かせるが、一馬や織田家が下した決断は事態を大きく変えていくーー。 そして、ついに一馬は前代未聞の結婚式を行うことになって!? 『小説家になろう』『カクヨム』で話題の戦国SF、第十弾!!
「幻の神を現実化し、肉体化するには、血が流れなければなりません」 この春に精神科医になったばかりの砧はある日、幼馴染で従妹の蓮沼美果に誘われ、彼女と両親が滞在する別荘を訪れる。 倒錯的な愛欲に溺れる蓮沼夫妻。美果の婚約者を自称し、小説家を志す氷室。温厚な微笑と豊かな教養を備えた蛭間神父。 薔薇が咲き誇る高台の館に集まった人々はこの夏、恐るべき運命に導かれー。 哲学と信仰、そして人間の生が妖しく渦巻く衝撃のダーク・サスペンス。 [目次] 第一部 蓮沼家の降霊祭 第二部 蛭間神父の犯罪 跋 著者略歴
「何とか生きられるだけ生きてみよう」 戦争による負傷で視力を失い、全ての希望を失った花島光道は、三度の自殺を図るもののことごとく失敗し、死にきれずにいた。 そしてある日、そんな自身の運命を決定づける天の声を聞くと、彼は鍼灸の道を志す。 やがて「経絡治療の大家」となった彼の技術と思いは、夢を追う若者たちへと受け継がれるのであった。 鍼灸学校に入学し、花島光道のもと、仲間たちとともに夢を追いかける若者のドラマと、「経絡治療」という鍼灸の流派の神髄を丹念に綴った、熱き魂と感動の物語。 [目次] まえがき 本編 あとがき 【参考文献】 【著者略歴】