著者 : 笠井潔
1978年6月。ナディアは著名な作家のシスモンディに、友人・矢沢駆を紹介する。シスモンディのパートナーであり、戦後フランス思想家の頂点に立つクレールが彼女にあてた手紙が消失した謎を駆に解き明かしてほしいというのだ。しかし手紙をネタに誘い出されたシスモンディとナディアは、セーヌ川に係留中の船で全裸の女性の首なし屍体を発見する。事件の調査のためリヴィエール教授を訪ねると、彼は若き日の友人、イヴォン・デュ・ラブナンのことを語り始める。39年前、イヴォンも首なし屍体事件に遭遇したというのだー。増殖する不可解な謎を、矢吹駆が解き明かす!
謎の女「ジン」の捜索依頼を受けた私立探偵飛鳥井は43年前の消失事件の関係者を探るうちに現代日本の病巣と密接につながった忌まわしき犯罪の存在に気づく。
パリ市内のアパルトマンでルーマニアからの亡命将校が射殺され、床には“DRAC”の血文字が残されていた。その一週間後、今度は被害者の女性たちが全身の血を抜かれる連続猟奇殺人が発生、通称“吸血鬼”事件がパリを震撼させる。旅先から戻った矢吹駆は、一連の事件の犯人が遺体に動物の「徴」を添えていることを指摘するが…。名探偵矢吹駆シリーズ、待望の第6作!
“ヴァンピール”事件はまだ終わっていない。今度はルーマニアから亡命した元女子体操選手が全身から血を抜かれ殺された。ルーマニア将校射殺事件と“ヴァンピール”事件には、やはり関係があるのか!?そして神経を病んだ女子大生ナディアに救いは訪れるのか!?矢吹駆の現象学的推理が、血に魅入られた犯人の正体と意図を導き出すとき、驚愕の真相が浮かびあがる!
乗っていたはずのリフトから消失し、空中浮遊する男。ゲレンデに転がる切断死体。白銀の世界に起きた怪事件の背後には、カルト教団の影が…。“事件が起きたときから、その真相が分かっている”という特異能力をもつ、美人スキー・インストラクター大鳥安寿の推理が冴え、事件は奇跡のように解決する!本格ミステリ界をリードし続ける著者の新たなる境地!
米国軍需産業の支配者たちから諜報戦の鍵として狙われているヴェトナム娘ラン。先手を打って彼女の身柄を奪うため魔都香港へ飛んだ九鬼鴻三郎を、多重にめぐらされた裏切りと欲望の罠が待ち受ける。死闘の果て、人間の極限を超越した九鬼のさらなる進化を描く三部作完結編。
モスクワの上流訓練学校で破壊工作技術を叩き込まれた九鬼鴻三郎は、数年ぶりに日本の土を踏んだ。秘密工作員となった彼に与えられた任務は、全身が凶器と化したアメリカ人二人の来日目的を探ることから始まる。接触の一瞬後には、生死を分かつ闘いの分水嶺が待っていた。
暴走集団“マッドライダーズ”を率いる九鬼鴻三郎は、その圧倒的な力を買われ右翼結社・三兵会にスカウトされる。虚飾に満ちた社会を破壊し東京を廃墟にすることを渇望する九鬼は、暴力と陰謀の荒野に身を投じる。『ヴァンパイヤー戦争』の超人戦士はいかに生まれ、覚醒したのか。
「私をーたすけてください」。古本屋京極堂にして陰陽師の中禅寺秋彦が刑事の木場、探偵である榎木津を前にして解き明かす久遠寺家の「血」。呪われた真相は卑劣漢・内藤を恐怖のどん底へと叩き込み、文士・関口の自我を根底から揺るがす。そして京極堂はいう。「この世には不思議なことなど何もないのだよ」。
三月以外の転入生は破滅をもたらすといわれる全寮制の学園。二月最後の日に来た理瀬の心は揺らめく。閉ざされたコンサート会場や湿原から失踪した生徒たち。生徒を集め交霊会を開く校長。図書館から消えたいわくつきの本。理瀬が迷いこんだ「三月の国」の秘密とは?この世の「不思議」でいっぱいの物語。
ブローニュの森に住むユダヤ人資産家、フランソワ・ダッソーの屋敷で、滞在客が死体で発見された。現場の三階東塔広間に通ずる扉は固く閉ざされ、鍵はダッソーの書斎の金庫に!さらに一階と二階にはそれぞれ監視の目が…。なんと、奇怪な「三重の密室」が構成されていたのだ!さらに被害者にも隠された謎が…。唯一の手掛かりは、東塔内に残されたナチ親衛隊の折れた短剣のみ…!?現象学を用いて、数々の難事件を解決してきた日本人青年・矢吹駆と、パリ警視庁モガール警視の娘・ナディアが、「三重密室」のトリックと事件の真相解明に挑む!二千数百枚の本格密室推理超大作。
ダッソー邸「三重密室」事件の被害者はナチ戦犯か?容疑がかかる屋敷の主と三人のユダヤ人滞在客は、コフカ絶滅収容所の生存者とその子供と判明。それをもとに事件を追う矢吹駆とナディアは、三十年前のコフカの大量脱走劇の裏で起きた、もう一つの「三重密室」殺人の存在を掴んだ。さらに、二人の前には新たな死者が出現し…。三十年の刻を隔て現われた「三重密室」の謎?二つの密室殺人に底流するドイツ人哲学者・ハルバッハの「死の哲学」の影…。二十世紀の思想史を根底から覆す衝撃の事実とは!ミステリーを世界史と哲学の領域にまで踏み込ませた驚愕の本格傑作推理。
灼熱の太陽に喘ぐパリが漸く黄昏れた頃、不意にカケルを見舞った兇弾ーその銃声に封印を解かれたかの如くヨハネ黙示録の四騎士が彷徨い始める。聖書の言葉どおりに見立てられた屍がひとつ、またひとつと、中世カタリ派の聖地に築かれていく。ラルース家事件の桎梏を束の間忘れさせてくれた友人が渦中に翻弄され、案じるナディア。謎めく名探偵矢吹駆の言動に隠された意図は。
ヴィクトル・ユゴー街のアパルトマンの広間で、血の池の中央に外出用の服を着け、うつぶせに横たわっていた女の死体は、あるべき場所に首がなかった。こうして幕を開けたラルース家を巡る連続殺人事件。司法警察の警視モガールの娘ナディアは、現象学を駆使する奇妙な日本人矢吹駆とともに事件の謎を追う。ヴァン・ダインを彷彿とさせる重厚な本格推理の傑作、いよいよ登場。
流氷に埋めつくされた極寒の知床ー。番屋を守る宗吉老人が助けた男、間島勲は国後島の強制収容所を脱走、えん罪をはらすため決死の覚悟で流氷原を渡ってきたのだ。昭和維新を唱える塾頭、経済界の黒幕、彼らを操る影の人物ー、戦後日本の政治・経済・思想史を背景に壮大なるスケールで描く戦慄の復讐劇。
『バイバイ、エンジェル』は、フランスに滞在していた20代の後半に、『テロルの現象学』と並行して書かれた、最初の小説作品である。『バイバイ、エンジェル』は少年の幸福な初恋、『サマー・アポカリプス』はさまざまに屈折した大人の恋愛…。
英雄ツァラに〈絵を描く術〉を与えられた誇り高き黒鹿部族のトマだが、洞窟の底深く足を踏み入れてはならぬというツァラの掟に背き、“永遠の闇の洞”を越えた。気候の変化による獲物の激減と、妖術師ダク・ツムの出現で、狩猟によって生きる彼の部族が餓死か、南に移住して農耕するか二者択一の危機に瀕しているのだ。だが、掟を破って洞窟に入ったトマを、闇の底で何かが待ち受けていた。長篇神話SF。
2年来の世界的な異常気象による飢餓と貧困は死者300名を超える東京大暴動をもたらした。そんな不穏な状況下で、確実に信者を増やしている組織があった。〈コムレ協会〉である。巨人津荒羅の復活による世界の「立替え立直し」を説く協会の開祖・古牟礼マキは実質的な指導者・生島郷治を片腕に、太古の黄金時代「古牟礼御世」の再建を目指すのだが…。《復活篇》に続く近未来SF長篇、待望の第2弾。
戦災で失われた幻の縄文粘土板とそれに記された未解読文字に憑かれた若き考古学者・三村知之は、ゴールドヴァーグ研究所の副所長・ウースラとともに調査に向った折、大地震と大吹雪に見舞われた。そして、続く異常気象によって地球は氷床に覆われ、東京は飢餓と暴動の渦中にあった。三村が入手した〈ミノタウロス符号〉とは?人類の始原に迫る神話SF巨篇第一弾。