1997年発売
作家小森健太朗が翻訳した、アブド・アッラーフ著『神の子の密室』。キリストの“復活”を検証したこの書物には、『あばかれたイエス』という続編が存在していた。キリスト教徒の猛反発必至と噂されるほど“涜神的”なその作品の出版権をめぐり、大手出版社間で熾烈な争いが開始される。壮神舎の若き女性編集者初野沙緒里も、版権獲得会議に参加することを決意するが、事態は関係者が次々と殺害されていくという展開を見せる。おなじみの編集者探偵・溝畑康史も登場。期待の新鋭の才気溢れる本格推理小説。
「わたし、水城さんに内緒のお話があるんだぁ」エレベーターを扱う株式会社ニュートンの営業課長・水城寛太郎は、総務部文書課の女主任・万田百合絵に誘われた。得意のテクニックを駆使し、百合絵を満足させて話を聞いたところ、営業課の女子社員が援助交際をしているという。しかも水城が一番信頼し、可愛がっていた前田美矢香がだ。驚く水城に百合絵は、さらに衝撃的な事実を告げる。社長の檜垣達之助が、株主代表訴訟を起こされるというのだ!水城に下った社長の特命とは?絶好調・欲望課長の獅子奮迅の活躍。
21世紀の世界経済の鍵を握る人口12億の中国市場をめぐり、米仏両国の巨大資本グループは水面下で激しい経済戦争をくり広げていた。ニューヨーク・ミラー社の若手記者エリック・トゥルーエルは情報収集のためCIA工作官に近づく。しだいに彼は経済謀略の実体に迫り、ついにフランスが中国の生物兵器開発を援助していることを突きとめる。だが、CIAとの協力のなかで取材活動の範囲を逸脱していったエリックも、その運命を大きく変えてしまう-。
父のモレコーム侯爵の虐待に耐えかね、イヴォーナは母と共にフランスへ逃げた。ガンブワ伯爵の別荘での四年間の安息。だが、不虜の事故で母と伯爵は亡くなる。茫然とするイヴォーナの前に現れたのは父の弟、アーサー叔父だった。妻の訃報のショックで父もまた急死し、その代役として、後見人となったのだ。憎悪をつのらせた彼は、姪を強制的に厳格な修道院に閉じこめようとする。一度は自殺まで考えたイヴォーナだが修道院への道中、隙をみて逃げ出すと、髪を切り、男装して闇にまぎれこむ。凍える雪道で見つけた木こり小屋にはけがを負ったサンスール公爵がいた。
女のくせにー若くして出世した涼子には、男たちの反感が集まっている。欲望を下敷きにした憎しみ。卑屈さの混じった好意。警察という男社会で、それでも必死に突っ張っている。そんな涼子が出会った謎の女。冷たい美貌と完璧な肉体を持ち、エレガントでいて野性的。可愛い女じゃない、硝煙と香水の似合う女たちが出会い、そして事件が起きたー。強がって生きている女のための物語。
山歩きの途中、男は偶然見かけた古い鉄塔の上に小屋を建てて、奇妙な空中生活を始めた。厳しい冬にも耐え、ようやく春が訪れたのだが…(『鉄塔のひと』)。ある秋の朝、庭先に一人の女がいた。まるで妻のようにふるまうのだが、まったく見覚えはない。しかも困ったことに、私には妻に関する記憶がなかった!(『妻』)。シーナ的発想が産んだ摩訶不思議な世界を描く短篇十連発。
雪のひとひらは、ある冬の日に生まれ、はるばるとこの世界に舞いおりてきました。それから丘を下り、川を流れ、風のまにまにあちこちと旅を続けて、ある日…愛する相手に出会いました。ひとりが二人に、二人がひとりに。あなたが私に、私があなたに。この時、人生の新たな喜びと悲しみが始まったのですー。永遠の愛の姿を描く珠玉のファンタジーを、美しい挿画でお届けします。
1994年1月17日、カリフォルニア大地震で父母を失ったルイス・クレインは三十年後、超一流の地震学者となっていた。日本の佐渡島で起きた大地震の予知に成功するなど、彼の理論は完成目前だったが、周囲ではイスラム国家の陰謀が渦巻いていた。やがてクレインは新たな大地震を予測。その規模は人類がまだ経験したことのないものだった…。
東京・東品川のスイミングコーチ・沼田信三は、メンバーのクラブホステス・杉野弘子に誘われ、肉体関係を持つようになる。半年ほどしたある日、沼田は弘子を通して大物政治家の変態的なセックスの相手をさせられる。金と妹への暴力をちらつかされて無理矢理、関係を続けさせられる沼田だったが、スキャンダルを逆手にとって、屈辱を強いた男たちに復讐を開始する。命を賭けた男の戦いと奇妙な愛の行方は。
博覧強記の鳥玄坊先生に師事する青山ヒロシは、始皇帝陵で「シュイ・フー」と名乗る謎の人物と出会う。「近いうちに時間が止まる。日本にいる鳥玄坊に同じ過ちを繰り返すな、と伝えよ」と男は告げる。その日を境に世界中から「極めて日本的な絞様」が出現し、太平洋にはこの世にありえない生物が、その姿を見せた。
黄金期パズラーの名作。4月13日正牛、おまえは死ぬー著名な外科医カッター博士に届いた不敵な犯行予告。あらゆる事態を想定して警護にあたったロード警部だが、その目の前で事件は起こった…。上空数千フィート、空の密室ともいうべき飛行機内で果たして何が起きたのか。
ペリーの率いるアメリカ艦隊の江戸進行を阻止しようとした浦賀奉行の乗った軍船が、その黒船に衝突され沈没した。その報告を聞いた幕閣と大名諸候は騒然となる。鎖国派の水戸斉昭や島津斉彬の提唱する黒船打払い方針に対し、開国派の井伊直弼や堀田正睦は明日でも下田に入港するロシア艦隊を利用すべきだと主張した。この抗争の中、一橋慶喜が幕府の軍船と船手組の指揮の委譲を申し出て、黒船との対決を計るが…。
イギリス軍の香港・啓徳飛行場がドイツのJu87により爆撃された。イギリスからの要請を受けた日本政府は蒼龍・飛龍の2隻の空母と駆逐艦4隻からなる南雲少将の第2連合航空戦隊を派遣した。そして、さらに陸軍の将兵の輸送にあたり、井上少将の第4艦隊も出撃する。2隻の空母には試験飛行半ばで実戦配備された双発の九試長距離戦闘機が2機搭載されていた。ドイツの新鋭機He112・Bf109対日本の鷲型戦闘機と九試戦闘機の空中戦。
新人公安調査官・真部和己は、先輩の美香とともにシャトル事故の現場に向かっていた。宇宙ステーションから護送された人間たちは墜落事故で全員死亡。だが遺体確認の取れない、三人の少女たちの死を、ある仮定から真部は信じられなかった。巡回ロボットのモノアイが不審人物を捉え攻撃する、Nobodyシステムを推進する警備会社NSSには、後ろ暗い噂がある。NSSを調査中の真部は、偶然にも見つけたーモエ、ユウカ、ドール、特殊能力をもち、風を操る宇宙育ちの三人の少女を。