2009年2月発売
あの4人を消せばいいー。殺し屋コンラッドはある日、自分の変わり果てた姿に初めて気づいた。最愛の人を失ってから9年間、彼は指示されるまま無慈悲に殺しを重ねてきたのだ。自由になるのに邪魔な男は4人だけ。だが、始末に取りかかった彼は、驚愕の真実を知る。自分は誰のために殺してきたのか。自らの人生を取り戻すことはできるのか。哀切のラストが待つ絶品サスペンス。
蝋燭問屋を狙った付け火事件が起き、犯人として捕まったのは問屋のあるじが妾として囲っていた女だった。しかし、献残屋の箕之助たちは女が付け火をせざるを得ないようなあるじの非道な仕打ちを知り、密かに抹殺する(「火付け始末」)。また、街道筋の用心棒・寅治郎を敵として狙う武士の正体がついに判明し、首を差し出す覚悟をしていた寅治郎だが、意外な結末を迎える(「寅治郎蘇生」)など、傑作好評時代小説。好評シリーズ、ついに完結。
だから。だから、殺した。二人して私を侮辱し、笑い者にしたのだ。脅したり陥れるよりも、その罪は重い。だから、殺した。女の日常に潜む狂気の沸点を描いた戦慄のホラー・サスペンス。
北の傭兵王が仕掛け、東の皇太子が起つ時、オリエントの均衡は崩れる。バービルムに忍び寄る叛乱の影に、動き出す神秘の王子・ハンムラビ。若き獅子らの前に立ちはだかる南の巨人。少年と少女は、今、戻れない道行きへー。
毎晩どじょう汁をねだりに来る老彫金師とどじょう屋の先代の女将の秘められた情念を描いた「家霊」。北大路魯山人をモデルにしたといわれる、食という魔物に憑かれた男の鬼気迫る物語「食魔」ほか、昭和の初めに一家で渡欧した折の体験談、食の精髄を追求してやまないフランス人の執念に驚嘆した食随筆など、かの子の仏教思想に裏打ちされた「命の意味」を問う、食にまつわる小説、随筆を精選した究極の食文学。
長州藩の下層の出ではあったが、天堂晋助の剣の天稟は尋常なものではなかった。ふとしたことから彼を知った藩の過激派の首魁高杉晋作は、晋助を恐るべき刺客に仕立てあげる。京で大坂でそして江戸で忽然と現われ、影のように消え去る幻の殺人者のあとには、常におびただしい血が残された…剣の光芒が錯綜する幕末の狂宴。
幕末の情勢は大きな曲がり角にさしかかった。中央から締め出され、藩領に閉じ込められた長州藩では、勤王党の高杉晋作がクーデターに成功。そして慶応二年、ひそかに薩摩藩と手をにぎり、藩を挙げて幕府との決戦に肚を固める。その緊迫した状況の下で、刺客晋助の剣は獲物を狙って冷酷にふるわれ続けたー。
天下を統一した秀吉の許に、それぞれ胸に野望を抱いた者たちが群れ集まってきた。摂津の主となり、信長の部将として活躍した荒木村重の晩年の姿を描く「うずくまる」や、琉球征服を夢み、秀吉から琉球守の名を賜わった亀井茲矩の見果てぬ夢を綴った「おらんだ櫓」など、十四人の男たちを活写した歴史短篇集。
「有田焼や、瀬戸焼より、いや九谷焼よりも、もっともっと、きれいで質のいい石物を、この絹屋で作りたいんや」。幕末の近江で古着を商う半兵衛は、妻留津とともに染付磁器に挑む。初窯の失敗、共同出資者の撤退、窯場での事故…数々の失敗を乗り越えながら、半兵衛は「湖東焼」の名を、その美しさを全国に広めたいと奔走する。
「殿はいま絹屋の窯にことのほかご執心じゃ」-。近江きっての花形産業となった「湖東焼」は、藩に召し上げられてしまう。部屋住み時代に半兵衛と知り合った井伊直弼は、染付磁器の美しさと、「湖東焼」のために尽力する半兵衛の生き方に強く惹かれていた。時代の波に翻弄される彦根藩と半兵衛の運命は。
都心でネット財閥「アクトグループ」を標的とした連続爆弾テロ事件が発生した。公安の並河警部補は、防衛庁から出向した丹原三曹と調査に乗り出すが…。『亡国のイージス』『終戦のローレライ』など、読者を圧倒し続ける壮大な作品で知られる著者が、現代の東京を舞台に史上最大級のスケールで描く力作長篇。
並河警部補は、捜査を進めるうちに丹原三曹とテロの実行犯、「ローズダスト」のリーダー入江一功との間にある深い因縁を知る。並河とのふれあいに戸惑いながらも、過去の贖罪のために入江との戦いに没入してゆく丹原。だが日本に変革を促そうとする真の敵は、二人の想像を絶するところで動き出していた。今、日本が戦場と化す。
かつて防衛庁の非公開組織に所属していた丹原朋希と入江一功。二人の胸には常に、救えなかった一人の少女の言葉があった。同じ希望を共有しながら、宿命に分かたれた二人。戦場と化した東京・臨海副都心を舞台に、この国の未来を問う壮絶な祭儀が幕を開けた。前代未聞の思索スペクタル、驚愕の完結篇。
投資信託専用の運用会社に勤める四十歳目前の永江は、離婚後、あるきっかけで、大学時代の同級生・由希と出会う。十数年ぶりの再会、季節が巡るように、お互い気になる存在に変わっていくが、由希は心肺を病んでしまう。そして永江に「これ以上苦しみたくない」と、自殺幇助を願い出る。永江には、二十代の恋人・沙織がいたが、由希といる時間のなかに「かけがえのない瞬間」を見いだすようになる。そんななか、友人で建設会社副社長の波佐間が、単身山に登ったまま妻子を残して連絡を断ってしまう。彼を捜すべく山に向かった永江は、ある事に気付かされる。
湘南の鵠沼に住むサラリーマン・石井樽人は、深夜のマンガ喫茶で知り合った女の子に恋をする。彼女の名前は杏。ケーキ屋「ミニョン」を営む祖母のマキさんが、通院している病院で働く看護師だった。樽人は自分の気持ちを伝えるが、彼女は心を開かない。杏は、三年前に大切な人を亡くした喪失感から立ち直れないでいた。その力になりたいと悩む樽人に、同居人であり親友の久喜夏彦は厳しくも優しいエールを送る。樽人は、二十四日以内に杏を恋人にすることができるのだろうか。脚本界のトップランナーによる、甘く切ない小さな恋の物語。
ジョージ秋山氏初の文庫カバーイラストでも話題の「なにわの源蔵事件帳」シリーズがいよいよ第三弾に突入!旧幕府時代は十手取縄を扱い、明治に入っても捕り物を生きがいとする「海坊主の親方」こと赤岩源蔵が、今日も人力車に乗って浪花の町を走り回る。
運転手の親子に愛されたことで「心」を持った瀬戸内海の小さな島のボンネットバスと、手にした者に勇気を与える不思議な青いビー玉が、時代を超え、運命に導かれながら旅をしていくファンタジー。旅は、懐かしい昭和40年代の瀬戸内海の島から、大震災に見舞われた山古志村へ…。少年と、バスと、少年の心を持った魅力的な大人たちが、「生きることの美しさ」を優しく語りかけてくれる、事実をもとに描いた奇跡と感動の物語。驚きのラストに、あなたもまちがいなく「幸せのため息」をつくことでしょう。「幻の青春小説」と呼ばれた名作の、待望の文庫版です。
父親が急逝してやむなく実家の医院を引き継いだ成田真澄は、中央から田舎の町医者に転じた未練に悶々とする中、従妹が原因不明の病に倒れ、治療方法も分からぬまま死に至らせてしまう。そしてその友達も同様の死を遂げる。友人で獣医の渡良瀬敦彦と共に真相を探るうち、その症状が狂犬病と酷似していることが判明した。国内では撲滅したはずの殺人ウイルスが約半世紀を経て再上陸したのだ。政府の正式発表により町民はワクチンを求めてパニックに陥り、飼い犬の無差別殺害も続出した。はたしてその感染源はー!?『感染』の仙川環が新たな境地を開くパニックサスペンス大作の登場だ。