2009年2月発売
エーゲ海に浮かぶティミノス島。うららかな春の日、ひとりの女性が、崖の下からもの言わぬ姿となって発見される。警察は、漁師の妻である女性が、夫が漁に出ている間不貞をはたらいていたという噂をもとに絶望の果てに自殺したと結論づけ捜査を放棄する。数か月後、島に風変わりな男がやってくる。でっぷりと太った体に白いスーツとスニーカー。高価な鞄を携え、名前をヘルメス・ディアクトロスと名乗った。男は漁師の妻の死を究明するため、アテネの機関から遣わされて来たと言う。しかし、男の捜査の前には島の古い因習や淀んだ人間関係が立ちはだかっていた。
人生の半分が終わってしまった。それも、いいほうの半分が。会社を辞めて、投げやりにプロデュース業を始めた喜一・40歳の元を訪れる、四十代の依頼人たち。凋落したIT企業社長、やりての銀行マン、引きこもり…。生きることの困難とその先にある希望を見つめて、著者が初めて同世代を描いた感動長編。
行方不明になった女子高校生の捜索に加わった元保安官コークは、吹雪に行く手を阻まれるが、不思議な影に助けられる。その影こそが彼女の魂なのではないか?ミネソタの大自然と家族を愛する男は、広大な谷がのみ込んでいた真相に驚愕する。アンソニー賞最優秀長編賞を受賞した傑作ハードボイルド第4弾。
全ての終わりはーまだ始まったばかりだ。“世界”を、そして“物語”を終わらせるため人類最悪・狐面の男と十三階段が動きだす。狐面の男に「俺の敵」と認定された戯言遣い・いーちゃんの運命は?「戯言シリーズ」最終楽章、『ネコソギラジカル』三部作の前奏曲。
元女郎おひろから、東北訛りの侍の用心棒を頼まれた見届け人・秋月伊織は、他国に逃げる資金をはたいておひろを身請けした侍の背景に、ただならぬ事情を察する。藩主襲撃事件をきっかけに対立する陸奥広岡藩と盛山藩の遺恨が、江戸に舞台を移して燻っているのかー。文庫書下ろしシリーズ、待望の第4弾。
ミロク教の内情が変化していることを感じ取ったカメロンは、ブランに、フロリー親子の捜索とヤガの探索を命じた。同様にミロク教の動静に関心を寄せるヴァレリウスの意を受けてヨナは、巡礼団に同行してヤガを目指していた。ダネイン大湿原を舟でわたり、草原地方を通過している途中、突如、巡礼団を騎馬の民が襲った!死を覚悟したヨナだったが、駆けつけたスカールに救われる。しかし生き残ったのはヨナだけだった。
老中・田沼意次の傍若無人な行いに腹を立て、彼の権勢を恐れず、怒鳴りつける大目付・大河内政盛。ある日、彼は屋敷へ戻る途中、ならず者たちに絡まれた回船問屋の嫁・留津を助ける。彼女の面差しは、政盛にある記憶を蘇らせて…。狙われる彼女の身辺警護を頑固親父に頼まれたひょうたん息子の右近。江戸から瀬戸内海を経て九州へと…。
ブラックバスを釣りに来た男が、上半身を引きちぎられた死体で発見された。猟奇殺人なのか?地元署の捜査は混迷、難航。宿無しルポライターと、引退間際の老漁師、引き篭もりの少年、はみ出し者の田舎刑事が、事件の謎を解くため活躍する。少年と男たちのひと夏の冒険譚。名作『TENGU』に繋がる大藪春彦賞作家・柴田哲孝の記念碑的作品。
あさな子の柔らかい肌。いたぶるのは麹町署生活安全課の刑事・友定伸。息子の雄介への暴力を止められない。ある夜、雄介が行方不明になった。託児所から抜け出した雄介を保護したのは女子高生の大原妙子。実父から性的虐待を受けていた妙子は雄介を紫音と名づけて、新たな生活を夢見る。夜の闇の中、焦燥と絶望が疾走する。馳ノワールが深化した。
グローバリズム出づる処、インド、バンガロール。ひとりの起業家が、書を民主主義が没する処の天子温家宝に致す。「拝啓中国首相殿、あなたに真の起業家精神を教えましょう。主人を殺して成功した、このわたしの物語を」IT産業の中心地から送った中国首相への手紙は殺人の告白であったー。ブッカー賞受賞作。
没落した東北の旧家の嫁のもとに届いた宅配便は51年前に失踪した父の頭蓋骨だった。差出人は、中学卒業後、集団就職で町を出てその翌年に火事に遭って死んだはずの同級生。いったい誰が、何のためにー。隠されていた過去が、昭和の記憶とともに今、明らかになる。人生の光と影を余すところなく描いた力作長篇。
鎬を削るライバル企業の越後実業と甲州商事。上杉謙信と武田信玄を信奉し、「越後の龍」「甲州の虎」と呼ばれている両社の社長は、互いに後継者問題を抱えていた。そんな折、両社のキーマンの怪死事件が起きる。なんと一人は直江兼続の鎧の中で殺されていた。互いにライバル会社による凶行だと訴えるが…。十津川警部は事件解決の鍵を探るべく戦国時代の歴史を紐解き、そこに思わぬ因縁を見つける。
「古昔は人のみちみちたりしこの都巴いまは悽しき様にて坐し」。ひさしぶりに再会したセバスチアンは、別人のように面変わりしていた。崩壊してゆくブライズヘッド邸とその一族ー華麗な文化への甘美なノスタルジア。英国の作家ウォーの代表作。
「娘をさらった。午後にまた電話する」関東一円の繁華街で、中華料理店を展開する片岡家の一人娘が誘拐された。要求額は六千万円。現金を用意したのは、片岡の取引先である北城興業。だがその実体は、千葉を本拠にする暴力団組織であり、一方の片岡本人もまた裏社会においては、軍の流れ品や臓器売買までを取り扱う筋金入りの闇商人である。警官が屯する片岡家に現金を運んできた、北城興業No.2清高文児は、彼らの行動に不自然さを覚えた。そう、気づいたのだ!これは、あまりに壮大な茶番劇のプロローグにすぎないと。
殺人容疑で東良二が逮捕された。妹の美咲は弁護士費用を捻出しようと良二の弟分・中田克夫と偽装誘拐を計画。ところが克夫は、別人を連れ去ってしまう。身代わりになったのは国会議員の愛人である氷室エミ。事情を知ったエミは二人に協力を申し出て、議員から身代金を引き出そうとするのだが…。片山兄妹がホームズとともに大活躍する好評シリーズ第四十二弾。
直木賞授賞パーティの翌日、受賞作家は成田にいた。隣には何故か、人間に化けた作家の愛猫・夢吉が…。彼らが向かったのはイタリア・トリノ。まさに冬季オリンピックが開かれているその地だ。指さし会話で国際交流をしながら、驚きと感動に満ちた観戦旅行が始まった!冬季スポーツとオリンピックをこよなく愛する著者が描く、全く新しいオリンピック観戦記。