2019年8月8日発売
人工知能が個人にあわせて作曲をするアプリ『Jing』が普及し、作曲家は絶滅した。『Jing』専属検査員である元作曲家・岡部のもとに、残り少ない現役作曲家で親友の名塚が自殺したと知らせが入る。そして、名塚から自らの指をかたどった謎のオブジェと未完の新曲が送られてきたのだ。名塚を慕うピアニスト・梨紗とともにその意図を追ううち、岡部はAI社会の巨大な謎に肉薄していくー。私達はなぜ創作するのか。この衝動はどこから来るのか。横溝正史ミステリ大賞受賞作家による衝撃の近未来ミステリー!
性悪な英語教師をブン殴って県下有数の名門進学校・I高を中退した17歳の斎木鮮は、中学時代の恋人だった幹とアパートで一緒に暮らし始める。幹もまた父親の分からない子を産んだばかりで女子高を退学していた。さまざまな世間の不条理に翻弄されながらも肉体労働での達成感や人間関係の充足を得て徐々に人として成長していく鮮ー。幼少期に性的悪戯を受けた暗い過去や、母親との不和による傷に苦しみながらも鮮は一歩ずつ前へと歩みを進めるのだった。第4回三島由紀夫賞受賞作品で解説を文芸評論家の池上冬樹氏が特別寄稿。
文芸誌「群像」に連載された著者の“執念の大作”第2巻。前田永造の妻である京子が前夫である伊丹との間に設けた長男・康彦は、母のいない寂しさから家出を繰り返す。康彦の学校へと出向いた永造は、どこか馴れ馴れしい担任の女教師に名前を「作家・前田永造」と呼び捨てにされ不快ながらも性生活について論じたりもする。そこから一転、先妻・陽子が存命の頃、後に京子の友人として再会する幼なじみ・会沢恵子との不倫の過去へと物語は移行していく。現在と過去が交錯しながら織りなされるように展開していく「姦通」をテーマにした異色の愛憎世界!
純粋で真面目な青年ドン・ホセは、カルメンの虜となり、嫉妬にからめとられていく。軍隊を抜け悪事に手を染めるようになったホセは、ついにカルメンの情夫を殺し、そして…(「カルメン」)。黒人奴隷貿易を題材に、奴隷船を襲った反乱の惨劇を描いた「タマンゴ」。傑作中編2作を収録。
沙紀ちゃんはいつも殺されがちな最高にかわいい女の子。わたしは普通じゃないレベルで彼女のことが好きだから、凶悪な犯人をなんどでも見つけ出してやる!と、四六時中息巻く神野羊子は、高校に入学早々、校内で蓮見沙紀の死体を発見。彼女の命を救うため、すかさずお得意の推理を巡らせるー。個性的なキャラクターと唯一無二の文体が織りなす超絶コージーミステリー!
カジノ誘致に失敗し、身を滅ぼした元町長の鈴木一郎は、総理官邸前で「大嘘つき!」と叫んだ。東西新聞社の記者・結城洋子は、彼の境遇を知り、統合型リゾートの暗部を探る。だが、社の内外で無数の壁に阻まれ取材は難航。一方、華やかな表舞台の裏側では、それぞれの思惑を抱えた政治家や外資系企業が蠢いていた。記者たちは矜持にかけて、闇に潜む真相の解明に挑む!
泣く子も黙る東京帝大に、一風変わった講座が開講された。実際に起きた未解決事件を題材に、実地の推理を繰り広げる趣向だという。担当教官は、有名事件を次々と解決に導いた探偵・月輪龍太郎。集まったのは個性的な三人の学生たち。初々しい探偵の卵らは、四つの難事件を解くことができるか?明治期の帝都東京を舞台にした、奇妙にしてスリリングな推理合戦。
父・秋山史親を火災で失った雅彦と太一、母・景子。止むを得ず史親の実家の工務店に身を寄せるが、彼らは昔気質の祖父・善吉が苦手。それでも新生活を始めた三人は、数々の思いがけない問題に直面する。しかも、刑事・宮藤は火災事故の真相を探るべく秋山家に接近中。だが、どんな困難が迫ろうと、善吉が敢然と立ちはだかる!家族愛と人情味溢れるミステリー。
東京入国管理局の難民調査官・如月玲奈は、母国で政治的迫害を受けたと訴えるシリア人・ナディームを調査するが、十三歳の彼の娘は、自分たちは故郷で平和に暮らしていたと主張する。なぜ、父娘で証言が食い違うのか?そして事態は、同じ頃に新宿で起きたシリア人夫妻の殺害・誘拐事件と奇妙な繋がりを見せていく。玲奈たちが見出す、悲しくも驚愕の「真実」とは。
「十津川警部に告ぐ。五日以内に十億円を支払え。さもなければ、石見銀山を爆破する」。爆破予告犯からの脅迫は、なぜ十津川に突きつけられたのか?そこに、石見銀山のそばに住むある事件の被害者の存在が浮上する。男は、事件現場で十津川が下した治療順位判断のため、足を切断されてしまった因縁があった…。世界遺産爆破阻止へ向け、必死の捜査が始まる!
宝くじが当たり、栗原課長を招いての夕食会を計画。安息日になるはずだったその日、片山が乗った東京名所巡りの観光バスがバスジャックに。晴美は現金輸送車襲撃。石津は発見した死体が消失!?そして、ホームズは一家心中を図る家族に同行。それぞれ別々の事件に巻き込まれた一同は、無事に夕食会に参加できるのか!?そして、巻き込まれた事件の結末は!?
幼少より慈しみ育ててくれた組織のボスを射殺し、海外逃亡をはかる無軌道な青年(「ゴウイング・マイ・ウェイ」)、市民や学生のデモ隊が街にあふれ騒然とする中、外相の首を狙う孤独なテロリスト(「陽光の下、若者は死ぬ」)など、強烈なジャズ・ビートをバックに描く反抗的、反俗的な青春群像!和製ハードボイルド小説のパイオニアとして名高い著者の傑作短編集!!
彼女は自分の名前も、どこにいるのかも分からなかった。目の前には「博多食堂」と書かれた暖簾がかかる。店にいた男性は、「迷子さんたちの案内人」で、自身も自分探しをしている最中だという。分かっているのは、うつしよで生死を彷徨うなにかが起こっているということだけー。案内人・山田の料理が彼女の気持ちをほぐし、記憶が徐々に蘇ってくるが…。
琵琶湖のほとりにあるお土産屋さん『鳰の海』。そこにはお土産を求める人々だけでなく、霊にまつわる悩みを抱えた人々までが駆け込んでくる。三度目の失職を経て、傷心旅行で琵琶湖を訪れた燈子は、ひょんなことから『鳰の海』で働くことに。社長の息子で無愛想だけれど美青年の甲斐とともに、燈子は霊感がないながらもお悩み解決に乗り出すー!
美濃の野平藩では不作続きの上、江戸藩邸の維持費などが嵩み、財政が逼迫していた。末席家老の井戸一之助は窮状を脱しようと智恵を絞り、藩内で良質の土が採れることから、肥前焼のような高価な焼物業の振興を思いついた。だが、有田や伊万里の窯は厳重な管理下にあり、製法は門外不出である。そこで家老自らが雲水(修行僧)に身をやつし、肥前に潜入したが…。貧乏藩を救うために家老が僧侶に扮し、他藩で隠密に!?