著者 : 京極夏彦
『この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口くん』昭和二十七年。文士・関口巽は刑事・木場、担当編集の桜木とともに、東京を彷徨っていた。巷を騒がす連続神隠し事件。その被害者が消えた跡に、関口初の長編小説「蜃の楼」が残されていたため、犯人探しに巻き込まれたのだ。捜査線上に浮かぶのは、“S”と名乗る黒衣を纏った犯人像。一行は犯人を拿捕すべく、犯行の痕跡を追っていく。空を仰ぐと、視界には、天を衝く長大な鉄塔“スカイツリー”が鎮座してー。薔薇十字叢書随一の奇書、登場。
「中禅寺…秋彦さん、ですよね?」女学生は、思い詰めたように中禅寺に一通の手紙を差し出した。これは恐らくー恋文。それからしばらくして、新聞に飛び込み自殺の記事が載る。自殺した少女の名は、登阪櫻子。恋文の送り主だった。一高では「自殺の原因は中禅寺」という噂がまことしやかに広まり、ついに学長からも事情説明を求められることに。しかし学長との面談後、中禅寺は忽然と姿を消してしまう。関口は頼れる帝王・榎木津と共に中禅寺を追うがー?彼らの友愛の、もう一つの記録。
「東京ローズを捜して欲しい」東京ローズ=日本軍が連合国側向けに行った反戦放送のアナウンサーの愛称。名探偵・榎木津が元GHQ職員から依頼されたのは、声を頼りに女性を辿る「声」捜しだった。捜査はやがて刑事・木場らが追うバラバラ殺人と交錯。さらに“薔薇屋敷の人喰い蜘蛛から逃げてきた”と話す少女が保護されてー。「風蜘蛛に囁かれた者はみんな自死してしまうんだ」小説家・関口が自著に生み出した妖怪『風蜘蛛』が、捜査を幻惑する。風にたゆたう薔薇のひそみに存するのは誰か。薔薇十字叢書待望の第二弾!
武蔵野連続バラバラ殺人の顛末を描いた『魍魎の匣』が発表された。顔を出さず、本名も明かさない著者・久保竣皇の正体を探る探偵・榎木津は、久保の住まう蜘蛛の巣城に赴く。だがそこにいたのは房総の蜘蛛の巣館で死んだ織作碧と、連続殺人の犯人、故・久保竣公と同じ記憶を持つ男だった。武蔵野連続バラバラ殺人から5年。久保竣皇とは、そして魔女を名乗り久保に寄り添う織作碧とは何者か。混乱を極めた榎木津は刑事・木場、そして京極堂を担ぎ出す。久保竣公の死で幕を閉じた凄惨な事件の蓋が、再び開くー。
一高に入学するも授業についていけず、友人もできず、鬱々と過ごす関口巽。そんな彼に声を掛ける者がいた。「鬱というのは伝染するんだ。悪い芽は早い内に摘んでおくに限る」教師も一目置く同級生・中禅寺秋彦だった。子爵令息の先輩・榎木津礼二郎とも面識を持つと、関口の学校生活は順調に動き出したのだが…その榎木津が女学生を妊娠させたと謹慎処分になってしまう。真相を探る関口と中禅寺だが、肝心の女学生は行方不明になっておりー?これは、彼らの友愛の記憶。