著者 : 叶世べんち
賞金首のモンスターが出現し、等級不足のシアーシャは冒険者稼業の休業を余儀なくされていた。不本意ながらも休息となった二人が朝市へと出かけ満喫していると、なにやら周囲が騒がしい。どうやら人間と亜人の諍いのようだった。もとより人外であるシアーシャはもちろんのこと、傭兵であるジグもそんな争いには興味がない。何事もなかったようにその場を後にするジグとシアーシャ。しかし後に二人は知ることになる。この種族間の問題が想像以上に根深いことを…。
未知の大陸に渡ったジグたちもすっかりこの土地に馴染み、血と剣戟に溢れた平和な日々を過ごしていた。そんな折、シアーシャが臨時の冒険者パーティーに加入することになり、護衛仕事を一時離れることになったジグは、知人となった二等級冒険者のイサナから、子供誘拐事件の捜査に協力して欲しいと頼まれる。事件捜査など管轄外の依頼だが、そこは報酬が合えば何でも受ける傭兵。ジグは自身が培ってきた裏稼業の知見を駆使して、事件解決に動き出すのだった。
魔物が巣食う“塔”に挑み、富や名声を得ようとする者ー。そんな“昇降者”と呼ばれる存在を志した若者たちがいた。そして、彼らは壊滅した。“塔”に親友たちを奪われた心優しき少年は、悪魔に魂を売り、復讐の鬼と化してギルドを去った。そして彼の事情を知りながら、寄り添えずにいた少女は、ただ悲嘆に暮れる日々を過ごしていた。しかしある日少女は、新たな仲間たちの支えを受け、再び立ち上がる力を取り戻す。あの少年に、追いつくためにーだが、そんな彼女に、魔の“塔”は無慈悲にも新たな試練を課すのだった。人の運命を食らう“塔”へ挑む者たちを描く、闇の冒険譚・第二章。
その日、ある少年が死んだ。仲間思いで心優しい、少しだけ照れ屋な…そんな彼はいなくなり、瞳に仄暗い光を宿した狂戦士のような男が、ただ一人立っていた。少年の名はスカイツ。彼は、幼馴染たちで構成されたパーティで、ある“塔”を攻略するさなかに、魔の祝福を受けてしまう。「自分が死ぬと、その場に居合わせた仲間の“能力”とー“存在そのもの”を吸収して生き返る」能力。親しい友を意図せず自らの力で「喰らい」、失意の彼は次第に心を擦り減らしていく。そして、その身を削る苦しみの果て、彼は“鬼”へとその身を堕とす。“塔”に挑む者たちの異常な日々と、彼らの罪と咎を描くダークファンタジー。