著者 : 白味噌
人とロボットの親子の旅路、ついに終着へ。 「……次はこの子が、自らの幸福を掴む番ですから」 ライドーに連れ去られたハルの行方を追い、極東のウラジオストクに到達したテスタとイリナ。 そこでは生き残った人間たちが、飢えや貧困に苦しみながらも、地下に街を築いて生活していた。 ハルの行方の手がかりをつかむため、さらには知性機構に損傷を負ったアニラの修理のために、表向きは地下住人に従うテスタたち。 テスタは人工知能たちが作り上げた宗教機構・Atheistの構成員が地下にいることを知り、その者と繋がりを持つというAI研究者・オルガとの接触を待ち望む。しかし、突如現れたダスマンの襲来によって、テスタは地下に漂う不穏の正体を知ることに。 さらには、人間を消失させたバベルの真の目的にも期せずして近づいていく。 バベルとはいったい、何者だったのか。 彼女はなぜ、言語を放棄した『人間』を造ろうしたのか。 真実に触れたとき、テスタは思いがけない形で主人との再会を果たすことになる。 苦悩と罪、後悔と自責。 その末に、テスタが親として下した最後の決断。 獣だった娘と、病を患った軍用ロボットの親子の旅路は、ついに、終着を迎える。
わがままばかり言って、ごめんな。テスタ。 旧友モディンとの再会、離別を経て、再び医工師を求める旅へと戻ったテスタたち。 だが、成都を発って以降、なぜだかハルは、ひとり物思いに耽ることが多くなっていた。 テスタがハルの様子を気に掛ける中、一行は家屋の下敷きとなっていた一人の女性型アンドロイドを救う。 ローゼと名乗るそのAIは、遥かアフリカより想いを寄せる人間に会うため、ひとり中国までやってきたのだという。 片思いながらも、恋愛体験を持つローゼに大人の女性を感じ、色めき立つイリナ。 一方で、ハルのときおり来る憂鬱は、なかなか直る気配が見られなかった。 挙句、イリナはそれが恋の病なのではないかと言い出し、事態はあらぬ方向へと進んでいくことにーーー。 ローゼの想い人に隠された秘密。 アニラの恩返しと、はじめてのおつかい作戦。 突如として現れた、頬傷のある白髪の少女。 そして果たされる、医工師ウシャルとの出会い。 軍用機械と野生児だった彼女たちが歩んできた道、その先で待ち受けていた『逃れられない必然』に、 やがて二人は、己の信じていた答えをも見失っていく。
新たな事実ーー人類消失を予見していた者 機械の精神を蝕む病、AIMD。 その奇病を専門とする医工師を求め、テスタたちは冬のチベットを訪れていた。 有限の命を自覚し、改めてハルの母親として、娘に向き合う決意をしたテスタ。 だが、ハルが一人前の大人になるには知識も道徳も不十分であり、友だちになると約束したイリナとの関係も、いまだにこれといった進展は見られない。 それでもハルの中には着実に人間社会に対する好奇心が芽生えているようで、「イリナができるのに、あたしができないのはいやだ」と、自ら勉学を教えてほしいと志願してくる。 普通の人生を歩めなかった娘のために、テスタはハルの勉学に喜んで付き合い、さらには一種の社会見学になればという想いから、旅先の難民街でチベットの廃校を訪れる。 しかし、テスタはそこで奇妙な手紙を見つける。 『贖えない罪を犯してなお、この世界に生きる意味はあるのだろうか』 遺書ともとれるその一文とともに綴られていたのは、手紙を書いた者が、十一年前の人類消失を予見していたという事実だった。 やがて、かつてこの地で起きた悲劇を知った時、テスタは、思いがけぬ人物との邂逅を果たすこととなる。
たとえそれが、人でなかったとしても。 これでも私は、身のほどはわきまえているつもりである。 武器修理ロボットとして、この世に産まれた命。 本来であればその機能を駆使して人間に貢献することが、機械知性の本懐とも言えるだろう。 しかし、どうもおかしい。 人類のほとんどが消え去った地上。主人であるハルとの、二人きりの旅路。 自由奔放な彼女から指示されるのは武器修理のみに留まらず、料理に洗濯と雑務ばかり。 「やるじゃねえか、テスタ。今日からメイドロボに転職だな」 全く、笑えない冗談である。 しかしそれでも、ハルは大切な主人であることに違いはない。 残された時を彼女のために捧げることが、私の本望なのである。 AIMD--論理的自己矛盾から生じる、人工知能の機能障害 私の体を蝕む、病の名である。 それは時間と共に知性を侵食し、いつか再起動すらも叶わぬ完全停止状態に陥るという、人工知能特有の、死に至る病。 命は決して、永遠ではないから。 だから、ハル。 せめて、最後のその時まで、あなたとともにーー。 第11回小学館ライトノベル大賞ガガガ大賞を受賞した『平浦ファミリズム』の遍柳一がおくる、少しだけ未来の地球の、機械と、人と、命の物語。 【編集担当からのおすすめ情報】 第11回小学館ライトノベル大賞にて3年ぶりの大賞受賞作となり、 新人離れしたテーマ性と感動的な物語が話題を呼んだ『平浦ファミリズム』。 その著者、遍柳一氏が満を持して世に送り出す新作です! 人類のほとんどが消え失せて荒廃した地球を旅する 死期の迫る軍事用ロボットのテスタと、人間に見捨てられた少女ハル。 機械と人との関係性を越えて絆を深めていく彼らの姿に、心が震えます。
栄華を極めた旧世界が崩壊し、ゆるやかに滅亡する世界。不死の心臓を所有する少年カインは神を名乗る少女ヨグと果てない旅をするーヨグに貶されながら。「無償の人助けなんざ、この廃れた時世では最高に愚かな行為だって解ってんのか?」「仕方ないだろ、僕の旅はそれが目的なんだから」どこかで誰かの力になろうと、カインは今日も旅を続ける。さまざまな街を訪れ、人と出会い、ときに助けの手を差し伸べるが…。これは“人助け”したい不死者カインと“暇潰し”する悪神ヨグのディストピア・ジャーニー。そして2人は世界の終末に生きる人間の真実を見るー。
凸凹コンビが奇妙な異邦の謎を解く冒険SFファンタジー! 第22回電撃小説大賞《最終選考作》登場!! 『アリス財団』の空間断裂実験失敗により、奇妙な異邦と化していく世界。その謎を調査する機関『黒の協会』所属のエージェント・了次&ルートのコンビは、奇怪な占い師連続誘拐事件が続く「占都」を訪れる。 さっそく調査に乗り出す二人だが、ライバル機関『欧科連』所属エージェントで《魔犬》の異名を持つプロフェッサーχ(カイ)の介入や、コルクマンなる怪しい男と対峙し、事件の裏側にあるさらなる謎を知ることに……。 「占都」の伝承『稀世(まれよ)の占い師』を巡り、三者三様異なる思惑が交錯していくのだが……。果たして、凸凹コンビが辿り着く真実とはーー!?
その日、北海道は閉鎖地区となったーー。 緊迫のパニックサバイバルアクション! 突然の同時多発噴火により太陽を失い変わり果てた北海道は、時を同じくして発生したバイオハザードで凶暴化した野生動物が跋扈する危険地帯となった。 自衛隊の救助も断たれ、閉鎖地区となった北海道を防衛すべく派遣されたのは、民間企業〈猟兵社〉によって集められた高校生、猟兵小隊〈ストライド・ブラス〉のメンバーだった。 幼い頃、獣に家族を殺された棟方千景は、復讐を果たすべく猟兵小隊の一員となり、襲い来る狂獣に立ち向かうーー。 北海道存亡をかけた戦いが、いま始まる。
島内全域で権力を手に入れた魔王を打倒するために、覇王・桐生将人は力ずくで“王の連合”をまとめ上げその力を結集。大切なものを取り戻すため、王の因子を持つ者の頂点に立つ存在へ仲間たちと共に挑むーー!
学園に潜む“魔王”の配下を退けた将人たちの前に現れた魔王の正体は、思いもよらない人物だった。満身創痍で絶体絶命の危機に陥った将人たちの前に現れたのは、あの殺人鬼で……。
覇王因子に覚醒した将人の前に(やっぱり)現れたのは、勇者因子(ブレイブ・フアクター)を持つ常識破りの少女クレス。「王の因子」所有者を探し、学園内で暴走するクレスに唖然とする将人たちだったが……。
才能を示す因子が全てを決める時代、因子が目覚めずに悩む少年・将人はある日二人の女殺し屋の襲撃を受ける。危機の中目覚めた将人の因子は、世界の敵とされる『覇王因子(ヴァンキッシュ・ファクター)』だったー!
ループを止めるため、元凶である“生命の樹”にたどり着いた火蜂紅たち。しかし、仲間であるはずの秋雨が、生命の樹から林檎をもぎ取り、こうつぶやくーー“妹を助けるために、5年前へ”。人気シリーズ、完結!!
裏切り者の起こしたループを止め、日常へ戻った緋蜂紅たち。しかし、そんな彼女たちを襲うのは、また違ったループであった。彼女たちの進む道の先に、果たして何が待つのか。学園ダブルクロス・リプレイ、第二巻!!
サンタクロース ── 白ヒゲに赤い衣装とトナカイがトレードマークの人気者。それは、現代でのもう一つの姿なのだが……。 多色多彩なサンタが住む世界・サンクラウスで行われる 「ホーリーズ・ナイツ」。勝てば現実世界への道が開けるこの武闘会で無敗の赤サンタを倒すべく、黒サンタ代表ノエル・シャープが立ち上がる。ただし、全身タイツ姿のレインディア(トナカイ)として。……えっ、なんでそうなるの!? 聖なる夜をアツくするおバカでシュールなバトルコメディ!
「ストレンジサイケデリコ」こと彩家亭理子は、その名の通り千光高校きっての有名な変人であり、変わった愛情を持った者が集まる「変恋部」の部長である。そんな変人マスターが「愛しいね」と目をつけたのは、春になると死にたがると噂のクール系男子・神宇知悠仁だった。理子は悠仁の言動が「変愛」に関係しているとにらみ、興味を持つのだが…。『月光』と同じ世界を舞台に新たな登場人物が紡ぎ出す異色の青春“変愛”物語。
退屈な日常から抜け出したいヒネクレ男子・野々宮。 ある日、彼は美人で成績優秀、さらにゴシップが絶えないクラスのアイドル・月森葉子のノートを拾う。そのノートからはみ出す紙切れにアイドルとは程遠い言葉── 『殺しのレシピ』 という見出しを見つけ……その日を境に月森との仲が一気に狭まっていく。 シニカリストとキュートな悪女、そんな二人の不思議で奇妙な関係とは……!?