著者 : 真鍋卓
有馬温泉の一角に佇む、深夜0時にひっそりと灯りが点る和菓子屋「夢菓房 風月」。父親が危篤との知らせを受け帰郷した陽斗を出迎えたのは、父の和菓子屋を継いだ弟・良夜。随分前に父親は亡くなり、精霊の沙羅と二人きりで営業しているらしい。極度の人見知りである良夜に店を切盛りできるわけがない。やむなく陽斗は協力することになるが、客人はなんと神様や妖ばかり。しかも何故か良夜はご立腹の様子。陽斗は神様、ひいては弟のためおぼろげな記憶を探りながら、桜の菓子を作ることになるが…?書き下ろし。
あやかしが訪れる和菓子屋さん『春寿堂』で、名月が玉藻と怪奇事件に振り回されている、その頃。移りゆく季節の間に、4つの小さな“ご縁”が結ばれていた。春の化身・春風挽歌が求めるものは献菓か、それともー。幼稚園の夏祭り餅つき大会で、犬飼一が出会った問題児とは?暮れゆく秋に窓の外を見つめる令嬢と、柿の木の精霊の願い。名月が挑む製菓衛生師試験は、まさかの冬山登山の試練!?桜羊羮、よもぎ餅、柿菓子に雪兎饅頭。四季折々の和菓子作りと、あやかし語りをご笑味ください。
高野山の片隅に、ひっそりと佇む和菓子屋『春寿堂』。そこは妖狐の玉藻が営む、あやかしたちの御用達。名月がそこで和菓子作りを始めてから三度目の春ー彼の“妖怪を見えなくする”契約が満ちる最後の年を迎えていた。そんな春先のこと。式神あずきが壊した和菓子道具を買い替えているさなか、玉藻が姿を晦ませてしまった。仕方なく名月は店を切り盛りするのだが…訪れる無理難題にてんてこ舞いの日々で!?店主のいない春寿堂。名月の和菓子は玉藻を戻し、大団“縁”を紡げるだろうか?
京都での和菓子対決も無事終えて、春寿堂立ち退きの危機を回避した名月たち。季節はめぐり、やがて秋。そろそろお月見という時期になり、あやかしの集う和菓子屋さんに何事もないはずがない。「迎えに来たよ。未来の旦那様!」またもや訪れた珍客は、名月の許嫁を自称する不可思議な女性・紅葉。彼女は神様たちの“番の力”を集め、強引に名月との“縁”を結ぼうとしているようで…!?これまで狐神・玉藻に唆されながらも、和菓子で縁を紡いできた名月に天敵出現か?はてさて、此度の縁の行く末はー?
名月の和菓子作りの頑張りで、高野山に無事春が訪れてから数ヶ月ー春寿堂の大繁忙期、お盆を意識する時節が訪れていた。あやかしの来客が増える予感に、うんざりしつつも律儀に菓子を作る名月。だがやって来たのは『根の国水先案内協会』を名乗るいかにもな黒スーツ連中で、春寿堂の上に霊道を通すというお達しを突きつけてきたのだ。突然の立ち退き命令に、店主の狐神・玉藻が下した決断は…なんと京都行きで!?京都の地へと導かれていく、ご縁の不思議と和菓子の味わい。春寿堂の営みが辿りつく先はー?
はっきりとした記憶はないが海で遭遇したらしい俺が目を覚ますと、そこは妖怪と人間が闊歩する日本からは隔絶された謎の島だった!真の名前を隠し、島民番号と思い思いの呼称で互いを呼び合う島で出会ったのは、コトコと名乗る少女。島から出る方法がわからず、イクトという名前を与えられた俺は、コトコの家に居候することに。渋々ながら島での暮らしを始めた俺は、妖怪たちと人間が巻き起こす奇妙で愉怪な事件に次々と巻き込まれていきー。田舎の事件、妖怪島コメディ。
狐の神様・玉藻が営む和菓子屋『春寿堂』。そこで名月が働き始めてから季節はひとつめぐり、また春が訪れようとしていた。ところが訪れたのは春ではなく、春を呼ぶ季節の化身。彼女の機嫌を取らないと、高野山は永遠の冬に閉ざされてしまうらしい。案の定、名月はその大役を玉藻に押しつけられて、献上品として難しい上生菓子作りをするはめに。これにはさすがの名月も万事休す!?「心配なかろ。全ては縁の結び目故。お主なら見事、春を呼べるさ」名月の和菓子はご縁を広げ、新しい季節を紡げるだろうかー?
高野山に佇む『春寿堂』は、狐の妖怪・玉藻が営む和菓子屋さん。今日も常連さんや“あやかし”が、事件を携えてやってくる。季節は冬。あやかしが見える体質のせいで春寿堂で働き始めた名月は、雪景色にふさわしい和菓子をしつらえていた。そこへ訪れたのは一匹の子狐。彼の注文はなんと玉藻への弟子入りだった。すると玉藻は一計を案じ、名月と子狐に和菓子の名付け対決を命じる。果たしてその真意や如何に?時にやさしく、時に賑やかに。繋がる“縁”が描き出す、和菓子とあやかしの物語。
高野山の片隅に、ひっそり佇む和菓子屋さん。木彫の看板に『春寿堂』と書かれたその店は、飄々とした狐の妖怪・玉藻が店主を務める、あやかしたちの御用達だ。そんな場所を普通の店と勘違いして訪れた青年・名月は、度々起こる怪奇事件に文句を言いながらも、玉藻のもとで和菓子作りを手伝っていくことになる。さっそく配達で向かった寺院にて、咲かない梅の木の下に女性の「影」を見てしまいー。和菓子とあやかしが、店を訪れるものたちを優しく繋いでいく。暖かな“縁”のストーリー。
少年は幸運の女神に、少女は文才の神に見離されているー。少しだけ頭が冴える高校生・樋口湊は、通りがかった女子校の前で、不幸な勘違いにより名探偵に間違われてしまう。依頼主は学園の聖女と崇められている美少女・西沢茜。依頼内容は「他人の心を透視する力」で、生徒たちからお金を巻き上げている自称超能力者シスター・マリアのトリックを見破ってほしいというものだった。執事に扮して茜とともにマリアに挑んだ湊だったがー。はたしてマリアの超能力は本物か偽物か?そして茜が持つ“もう一つの顔”とは!?凸凹コンビのコミカル謎解き物語。