著者 : 遍柳一
ライドーに連れ去られたハルの行方を追い、極東のウラジオストクに到達したテスタたち。そこでは生き残った人間たちが貧困に苦しみながらも、地下に街を築いて生活していた。ハルや故障したアニラのために、表向きは地下住人に従うテスタ。しかし突如襲来した白髪によって、地下全体に漂う不穏を知ることに。さらには、人間を消失させたバベルの真の目的にも期せずして近づいていく。やがて果たされるハルとの再会を経て、テスタは最後の決断を下す。獣だった娘と、病を患った軍用ロボットの親子の旅路は、ついに終着を迎える。
成都を発って以降、なぜだかひとり物思いに耽ることが多くなったハル。テスタがハルの様子を気に掛けるなか、一行は家屋の下敷きとなっていた一人の女性型アンドロイドを救う。ローゼと名乗るそのAIは、想いを寄せる人間に会うため、遥かアフリカよりひとり中国までやってきたというのだが…。ローゼの想い人に隠された秘密。アニラの恩返しと、はじめてのおつかい作戦。頬傷のある白髪の少女との邂逅。そして、旅の果てに待ち受けていた逃れられない必然に、テスタとハルは、自分たちが信じた答えを見失っていく。
人工知能縄有の精神疾患AIMD。その治療を専門とする医工師を求め、テスタたちは冬のチベットを訪れていた。イリナと触れ合う中で、徐々に人間世界への興味を抱くハル。そんな主人のために、社会見学と称して、皆で難民街の廃校へと立ち寄る。だが、そこでテスタは奇妙な手紙を見つける。『贖えない罪を犯してなお、生きる意味はあるのだろうか』。遺書ともとれるその手紙には、なんと十一年前の人類消失をも予期する言葉が綴られていた。やがてこの地で起きた悲劇を知った時、テスタは思いがけぬ人物との邂逅を果たすこととなる。
私の名は、テスタ。武器修理ロボとしてこの世に生を受けた、はずである。人類のほとんどが消え去った地上。主人であるハルとの二人きりの旅。自由奔放な彼女から指示されるのは、なぜか料理に洗濯と雑務ばかり。「今日からメイドロボに転職だな、テスタ」。全く、笑えない冗談だ。しかしそれでも、残された時を主人に捧げることが私の本望に違いない。AIMD-論理的自己矛盾から生じるAIの精神障害。それは私の体を蝕む病の名であり、AI特有の死に至る病。命は決して永遠ではない。だから、ハル。せめて最後まで、あなたと共に。
五年前、ベンチャー企業の社長である母を亡くした平浦一慶。残されたのは、喧嘩っ早いトランスジェンダーの姉、オタクで引き籠りの妹、コミュ障でフリーターの父だった。かくいう一慶も、高校にもろくに通わず、母譲りの技術者としての才能を活かし、一人アプリ開発に精を出す日々を送っていた。穏やかな家庭での日常。退屈な学校生活。そんな現状を良しとしていた一慶だったが、たったひとつの事件をきっかけにして、事態は徐々に、彼の望まぬ方へと向かっていくこととなる…。第11回小学館ライトノベル大賞ガガガ大賞受賞作品。