制作・出演 : ジョニ・ミッチェル
“引退宣言”から5年目にしての音楽カムバック。シンフォニックなインスト曲(1)で始まる構成に、業界の思惑に捉われず創作に邁進する姿勢が表われているよう。喫煙の影響もあってかハスキーさを増した歌声で、詩的メッセージあふれる作品を歌っていく。★
ジョニの歌にはいつでも彼女独特のストーリーがあって、それが曲と結びついている。彼女ならではの鋭い洞察を響く言葉にして、澄みわたった声で託された10曲。1969年発表の2ndアルバム。
CSN&Yによってカヴァーされ有名になった「ウッドストック」を収録。「ウッドストック」は単なる“ウッドストック”賛歌ではないところがミソであるが、そんな鋭い視線に彼女の長い活動の秘訣がありそう。
サウンド面での変遷が著しかったキャリアをわずか17曲で網羅するのは、およそ至難の業。という事実さえふまえて聴くなら、作詞曲はもとより演奏者、音楽家としてのイノヴェイティヴさがうかがい知れるベスト。近年再録された(14)(15)(16)も素晴らしい。★
69年発表の2作目。前作同様、自作自演のフォーク・シンガーとしての彼女を等身大で記録した作品集だが、弾き語り集の前作よりは装飾が増えている。トム・ラッシュの歌で知られる(1)、初期の名曲(2)、ジュディ・コリンズの歌でヒットした(10)などが代表曲か。
72年のアサイラム移籍後の1作目。通算では5作目。ヒット曲(9)を含む比較的ポップな作品集で、スティルス&ナッシュをはじめ、ジェイムズ・バートン、ラス・カンケル、トム・スコットらが参加している。自らを「野性の種子」に譬えた(5)など、佳曲も多い。
76年発表の『逃避行』、77年の『ドンファン…』、そして79年の『ミンガス』、ジョニ・ミッチェルの第9作から第11作にあたるものだ。どれもが豪華多彩なゲスト・ミュージシャンを迎えながら、ゲスト達はこの取っ付きにくい才女に最大級の敬意をふり注いでいるかに思える。特にジャコ・パストリアスのベースは、ジョニのギターにも声にも気持ちよく溶け合う。今となっては『ミンガス』が、ミンガスへの哀悼であると同時に、ジャコへの追悼も込められて聴かれ、なおのこと感慨深い。『ドンファン…』の(4)のよう、広漠とした太古のアメリカへと思いをはしらせ、壮大なシンフォニック・エッセイを描き出してみせた、ジョニのヴィジョンのダイナミズムに、ようやく時代のほうが追いつきつつあるようだ。