音楽むすび | 制作・出演 : 中森明菜

当時の好調ぶりを如実に示す。身も心も伸びやかなるを感じるにつけ、時代性を考えることの無意味さを知る。全身でリゾートすることが、熱帯と温帯の入りまじった、観念としての女性の夏休暇を清涼かつ妖しく描くことだったとは。

ニューヨークはヒット・ファクトリーで録音。アップ・テンポの曲は全然なしで、細部に渡ったアレンジの安定感のある渋い仕上がり。テンションの高さは半端じゃなくて、他人事のようによそよそしいクールな歌唱に、時折のぞく激しさが聴き物。

セクシーというよりエロチック。男のモーソーをかきたてる、アキナの真骨頂発揮のアルバム。タイトルは、シングル候補作(ボツ曲)を集めたものという意味らしい。ファンの人は、この曲はどの時期のものと想像し合うのも一興。

一見したたか風その実ちょっぴり不安なところが見える、というあたりが好きだった。松田聖子ほど自信満々ではなく、小泉今日子ほど突き抜けてもいない。芸能界と折り合わない部分を持ちつつ、このまま走り続けなければならないからこそ追いつめられたパワーが出るのだ。