制作・出演 : 五代目
いずれも80〜82年、小文枝時代の音源。お間違いなきよう。品のよい色気が漂う高座は、もちろん持って生まれたものもあるが、踊りの素養や上方歌舞伎の下座お囃子の世界に身をおいた経験も大きいだろう。このシリーズでも、お囃子入りの落語「はめもの」をふんだんに味わえるし、歌舞伎がらみのクスグリが随所に散らされ、上方の粋(すい)を堪能できる。それだけに上方落語に登場する庶民の代表、清やん喜ィやんも江戸の八ツァン熊サンのがさつさに比べどことなく上品だ。1947年5月2日の初高座のネタが「小倉舟」で、2005年1月10日の最期の高座のネタが「高津の富」だということからも、このシリーズに収録されているネタが五代目文枝にとって大切なものばかりとわかる。六代目松鶴と五代目文枝という好対照の上方落語二大名人の抜けた穴はまだ大きく開いたままだ。
上方落語の重鎮、桂文枝の十八番である、音曲稽古の滑稽を描いた「稽古屋」と、歌舞伎オタクについての噺「蛸芝居」の2席を収録。1980年5月13日、大阪でのスタジオ録音。
上方落語協会の会長を務めていた五代目桂文枝のシリーズ3枚は、50代になったばかりの脂のノッた時代(小文枝時代)の名品揃いだ。[1]の「軽業講釈」は、上方落語の大きな特色である下座囃子(拍子木、鳴り物)が、もともと客の気を引くアイテムであったとの講釈から始まる陽気な噺。[2]の「舟弁慶」は、故橘ノ円都師が常々「小文枝のが一番ええな」と褒めていたもので、夫婦喧嘩が「舟弁慶」のパロディに発展するなど遊び心にあふれている。[3]の「天神山」は、狐と結婚した男のにぎやかな人情噺。
“はんなり”と形容された文枝の芸風が堪能できる、廊噺と歌舞伎風の噺をカップリング。80年4月25日の京都文化芸術会館での独演会ライヴの模様を収録。いずれも文枝の十八番だ。
ちょっぴり怪異な歌舞伎風噺とアウトドア版茶屋遊びの冒険談の2席。80年7月24日、東京・三百人劇場での独演会ライヴの模様を収録。上方落語の重鎮・文枝ならではの味わいが堪能できる。
古典演目で修行を積んだあと、新作落語で芸道をきり開いていった今輔師。ここで聞かれるのは、いずれも師の口調や動作を念頭において書かれた代表作だけに、実にいい味している。師の枕からは、その時代が読めるし、十八番の「おばあさんもの」もさすが!
昭和36年と34年の録音だから、どちらも倒れる前のもので、師の見事な、計算を超えた芸、演技を超えた術が楽しめます。どちらかと言えば、やっぱり(1)でしょうか。とにかく遊女物はうまい。客との絡みが“まんま”なんであるね。やらせがない。えらい。
芝の生まれという正統派(?)の江戸っ子らしく、歯切れよく早いテンポでたたみ込んでくるところが実に気持ちいい。二ツ目時代に「女郎買いのことなら照蔵に訊け」と大師匠たちに言わせたキャリアを、これから生かそうという時代に死んだのはまことに残念。
長屋噺で職人が登場する咄を得意にした柳朝ならではの二題。心学の紅羅坊名丸先生と職人の八五郎のやり取りの「天災」、因業大家と大工の与太郎と政五郎の口論の「大工調べ」(前半)を演じている。師匠の彦六とは異なり、威勢のいい口調が気持ちいい。