制作・出演 : 仲道郁代
モワ〜ンとした抽象的表現ではなく、1音1音をしっかりと弾き切ったクリアなドビュッシー。まるで無数の宝石がキラキラと舞い降りてくるような美しさに満ちている。時にはかなり激しい表現も加えられ、仲道ならではの個性が感じられる。
ピアニスト自ら、サロン的、甘美で華やかというよりも、えもいわれぬ哀愁やしっとりした部分に魅かれる、と述べているが、しめやかな色合いがにじみ出た、耳に心地よいショパン集だ。よく知られた曲が並んでいるので、初心者でも聴きやすいだろう。
先般新宿文化センターで聴いた「謝肉祭」ではすっかり感心してしまったが、この新盤のシューマンもそれを彷彿させる素晴しい出来映え。曲から曲の気分のつながりが実にいいし、全体の構成感も並のものではない。曲を消化し切った彼女の自信が如実。
夢見がちな少女のショパンのようでもあり、時にはより深い感覚を身に付けた大人のショパンのようでもあるところが面白い。(4)の幻想即興曲はルービンシュタインが出版した「決定稿」によるもので、一般によく弾かれる方は(9)付録になっているのも話題。
こぎれいにメロディを歌い、乙女の哀しさみたいな表情もあるのが美点。休符を縮めて先に走ってしまうのが欠点。とにかく、これが日本女性ですね、という感じにきちんとまとまっている。偏見と言われたそうだが、仕方ない。解説にはバイオが入ってないぞ。
ロマンティックなピースを、仲道らしく想いをいっぱいに込めて演奏しているのがとても印象的。テンポを落とし、一音一音を慈しむようにして描いていく。彼女が、よくアンコールで弾く「愛の挨拶」も、優しくてデリケートで魅力的な音楽になっている。
小林ひとみに似た仲道サンのCDは、何やら物思いにふけるセピア色の写真がふんだんに入り、女性誌的なきれい感覚で一貫。音楽は主旋律を甘く、悲しく、センチメンタルに歌い回し、アア、コンナニ露骨ナ青春ノしょぱんモ珍シイ。ミンナデ泣コウネ。