制作・出演 : 十代目
昭和57年に54歳で急逝。それが未だに悔やまれている馬生だ。しっかりとした構成、流れるような噺の運びに定評があり、なにより気品のある語り口と思いやりに溢れた人物表現では、他の追随を許さない。笑いながら人の世のやさしさをふと感じる、そんな芸風である。人形浄瑠璃でもよく取り扱われるテーマだが、使用人と主人の娘の悲恋をめぐる「おせつ徳三郎」が実に圧巻。
(1)は先代もよくかけていた噺だが、ウドンやキシメン、トロロそばの食べ分け、善光寺のそば食い大会など各所に工夫がみられる。(2)は六代目三遊亭圓生の十八番ネタに挑戦の勇気を評価。年増女の色気にもう少し味わいが出てくれば……というところで次回の「庖丁」に期待。
町内の旦那衆の素人芝居で「仮名手本忠臣蔵」を演ることになり、建具屋の半ちゃんがその気になってしまう「蛙茶番」。文治は噺の関連する事柄をギャグやくすぐりをちりばめつつ解説する。「御血脈」でも、歌舞伎に造詣の深い文治らしい噺になっている。
禁酒を誓いあった息子の留守中、親父はこっそり一杯……、が何杯にもなってヘベレケに。そこに息子が帰ってきて、という親子酒。また藩士一同に禁酒令が出たなかで、番屋の検問をかいくぐって酒屋へ通ろうとする禁酒番屋。無類の酒好きの文治の真骨頂に触れることができる二席だ。
芸歴が半世紀を越える、10代目桂文治の十八番集。朝日名人会でのライヴ録音。「掛取り(かけとり)」と「火焔太鼓(かえんだいこ)」に江戸前の味のある語り口が冴える。
一席1000円で、好きな演目を選んで気軽に楽しめるCDシリーズ登場。ラインナップは志ん生、小さん、文楽、金馬、小三治など、豪華な噺家陣。この値段なら全20タイトル制覇も夢じゃない?
89年、90年、92年の「柳家小三治独演会」の随談とでも言うか“マクラ”で構成された地噺・体験談を収録したもの。サンフランシスコへの3週間の英語留学の[1]では、中学時代のカンニングを居直って自慢する。[2]では英語のできない小三治のニューヨークひとり旅で白タクに乗ってしまった体験。[3]では暑い夏にはこれしかないと玉子かけご飯への妄執にも似たこだわりなどを語る。
「死神」は円生が演じたものが強烈で、そのイメージからなかなか抜け出せないでいたが、小三治はそれを見事に一新して独自の小三治ヴァージョンのサゲを作り上げた。死神の雰囲気、主人公の心理描写などなかなか見事に演じ切っている。独演会での録音。