制作・出演 : 吉田恭子
吉田のデビュー10周年を記念して収録されたもの。いくらか慎重ではあるが、自然に素直に歌っているところに好感が持てる。後半に小品が2曲あるが、こちらはいっそうのびのびと弾いている。伴奏は小編成だが、それに反して響きはたっぷりと取ってある。
吉田恭子の通算7作目となるアルバム。着実にキャリアを積み上げてきた吉田の、豊かな表情が光っている。白石光隆との息もピタリとあって、多彩でロマンティックなヴァイオリンの世界を楽しませてくれる。
往年の名手が愛奏してきた難曲に取り組んだ意欲作。といっても、難技巧をひけらかすことはなく、実にサラリとした風情だ。「スペイン民謡組曲」も民俗臭は稀薄で、コッテリ系が好きな人は淡白に感じるかもしれないが、クールな表面の内側に煌く吉田恭子の秘めた情熱を聴き取りたい。
箏の巨人・宮城道雄の代表的な作品が3枚のCDになって復刻。大正・昭和前期のSP音源が、最新の修復技術で蘇った。伝統音楽の世界にまったく新しい発想を持ち込んだ、宮城の演奏が実にクリアな音で聴ける。「春の海」や「水の変態」における曲づくりの才、「六段」(八橋検校)や「千鳥の曲」(二世吉沢検校)など先人のつくった曲に対する解釈の鋭さ、どれをとってもその鋭い感性に驚かされる。メリハリの利いた、それでいて自然に流れる演奏、プロデューサーとしての力量も並外れていたことを実感させる。
独自の感性で選ばれた作品が、肌触りのいいヴァイオリンによって優しい時間を紡ぐ。ここへきて、感情表現の起伏が豊かになったようで、その陰影が不思議な色合いを醸し出している。白石のピアノは、その大きな懐を持った音楽性で彼女の世界を強力にバックアップ。
吉田恭子の2年ぶりの録音は、ヘップバーン・メドレーなどのユニークな作品を含む魅力的な小品集だ。どの曲も自分の感じるままに素直に演奏していて、普段着的な親しみやすさがある。そのナチュラルさを失うことなく、彼女独自のスタイルを築いてほしい。
2001年にヴァイオリン名曲集とビートルズ作品集の同時リリースで颯爽と登場した吉田が、今度はレコード会社を代えて王道中の王道をリリース。ダイナミックな力感や、ポルタメントの多用、スタッカート、弦を噛ませるアタックの強さ、等々が特徴的。