制作・出演 : 松任谷由実
雑誌感覚の新作。今回のテーマは“純愛”。というわけで、タイトルは「舌を入れない接吻」。エイズ時代を象徴するようなテーマとタイトルだ。編集者としての手際は相変わらず鮮やかだけれど、妙にアナクロなレイアウト(編曲)も意図的なものなのかな。
昨年7月に一旦リリースが発表されたものの諸事情により発売延期となっていたユーミンの新装再発17作品が、めでたく正式リリース決定!! 結婚後初(つまり松任谷名義となって初)のアルバム『紅雀』から80年代の最後を飾ったアルバム『LOVE WARS』まで、どれもこれも“一家に一枚”級の強力アルバム。まだお持ちでない方は、今回の再発を機に一気に揃えちゃいましょうね。
毎年恒例となっていた新作の年末リリースがなかった98年末、その代わりに発表されたのがこのベスト盤。ティン・パン・アレーとの共作曲を含む、聴きどころ満載の2枚組。ユーミンのエネルギーが再確認できる。
サーフィンをテーマにした、ユーミンのニュー・アルバム。サウンド的には特に新しいことをやっているわけではなく、彼女の王道とも言えそうな音世界が展開されており、風格にあふれている。懐かしい「時をかける少女」の新ヴァージョン(8)も収録。
おっ、ユーミンが凄味を利かせたヴォーカルを露にしているじゃないか。肥大化した自分の影を、チープな姿で登場することで弄んでやろうとしているみたいに見える。状況をしっかりと見据えているその眼には、90年代末“歌謡曲”の姿が見えているのかも。
これまでのようにポップで弾けた明るさを、この作品に望むと驚かされるかも。前作辺りから見られる、起伏のゆったりとしたビートにノセて、ユーミンの感情的かつメロディアスな歌の数々が綴り織られてゆく。ラテンや中近東風のリズムへの挑戦も楽しい一面。
タイトルのイメージに反して、内容は詞・曲共にわりとセンチメンタルな楽曲が多い。唯一、はじけて青春してるのは(5)か。また気になるのは(3)と(6)。歌詞とメロディがサビを中心にほぼ同じ。“Good-by”と“Hello”の対比からして、対の曲と解釈しようか。
全10曲中3曲がTV絡みか…とまあ、それはさておき、一時期のメディア舞い上がりブームも沈静化の方向とは御同慶の至り。これで再び、音楽のことだけ考えていればいい生活に戻れそう。というわけで、どことなく肩の力が抜けて気が楽になった姿が見える。
年末恒例、ユーミンの新譜です。今回のテーマは“傷つく勇気を応援します”ということだそうだが、さすがにうまく作り込まれたサウンドと詞が詰め込まれている。またまたバカ売れしそうだ。といっても今回はちょっと煮詰まり気味かな?
一歩身を引いて、自身の心と、失われていく風景をしっかりと描いたようなユーミンの暗目の詞が印象深い。リード・トラックの(2)に象徴されるように、これまで以上にサンプリング・キーボードのアレンジが効いている。明暗両方の曲調を作れるさすがの才能。
発売3日間で86万枚を売り上げたそうだ。そうやって、何万枚売れるかとか、彼女が何をテーマにしたとか、内容よりもその種の話題に振りまわされ気味だが、丁寧に新しい試みも随所に盛り込んである。「アニヴァーサリー」のような決定打には欠けるけど。