制作・出演 : 松任谷由実
約2年ぶりとなる33枚目のオリジナル・アルバムは、彼女ならではの映像的な歌詞が紡ぎ出す10篇の恋物語と、イタリア映画を彷彿させるサウンドが絶妙に融合。カラフルでレトロな傑作だ。
ユーミンというアーティストの真骨頂を見たような気がする。それほど素晴らしいトータル・アルバムだ。リゾートを離れても、日常に戻っても、決して色あせることなく心の奥でそっと鳴り続ける、そんな穏やかな力を持っている。メロディも本当に瑞々しい。★
ユーミンのオリジナル約320曲の中からバラード系を中心に選曲されたコンプリート・ラブ・ソング集を2枚組に収録。荒井由実時代と松任谷由実になってからの楽曲から構成された画期的な編集盤だ。
一度聴くだけで印象に残るリズムと、恋愛の移ろいゆくさまを季節や風景とともに切り取っていく詞は健在。その変わらない姿勢に喜びを感じる。一方、Kardelのラップを入れた(1)やアラブ風音楽の(4)なども新鮮で、そこにも彼女の色が存在しているのはさすが。
ユーミンが'78年に発表したアルバム『紅雀』から最新作の『ノーサイド』まで、オリジナル・アルバムでCD化されていなかった12点の総てが、やっとCD化されて出た。'80年12月に発表された『サーフ&スノウ』以前と、ミニ・アルバム『水の中のASIAへ』をはさんで、'81年11月発表の『昨晩お会いしましょう』以降とでは、ユーミンが想定している聴き手が大きく変わっているようだ。荒井由実時代と松任谷由実時代との間にある違いは、歌われている情景のリアリティーの有無だったが、ここではニューミュージックの女王から歌謡曲の女王への歩みが始まったといえるのではなかろうか。より広い幅の聴き手を対象としはじめたのが'81年にシングル「守ってあげたい」のヒットから、ユーミンのアルバム・セールスが飛躍的に伸びているのだから……。 半年に1作のペースでアルバムを発表してきたユーミンも、最新作『ノーサイド』以降はその間隔が長くなりそう。というのも、各作品ともにしっかりと水準を保っていること自体が、実は驚異的なことなのだ。ポップ・スター、ユーミンの歴史のすごさを思い知らされる一方で、これからに期待させる作品群を持っているのがユーミンなのだ。アルバムで味わうユーミンの楽しさの他に、コンサートの楽しさもある人なのである。
80年に発表された10枚目のアルバム。映画『私をスキーに連れてって』の主題歌となった「恋人がサンタクロース」などを含む、夏と冬のリゾートにぴったりの楽曲がならんでいる。
ユーミンの最新アルバムです。荒井由実時代のユーミンを思わせる情景が浮かぶ曲があったりと、高いレベルを保ってアルバム造りをしているのはさすが。ファースト・アルバム『ひこうき雲』へ大きく廻って戻っていったような“女心”が歌われているようです。
歌の中の情景がメロディとサウンドによってリアリティを得ていたユーミンも、時代の気分に追いつかれ、情景の描き方が変って久しい。それでも、リアリティは回復しないままです。といっても、ユーミンのこれまでの作品の中での話でしかないが。