制作・出演 : 桂文珍
2005年11月19日の、第55回朝日名人会「桂文珍東京独演会2005」からの作品。大阪近郊が草深かった時代を描いた「池田の猪買い」、「包丁間男」を収録した、文珍の意欲が感じられる1枚だ。
間抜けな駕籠の客引きと始末の悪い酔っ払いのからみで笑わせる「住吉駕籠」、船遊びの夫婦喧嘩を芝居がかりにパロディにした「船弁慶」。代表的な上方演目をとびきり楽しく披露する。
「悋気の独楽」は、旦那の“おてかけはん”の秘密を知る丁稚が、嫉妬に燃えるご寮はんに問い詰められて……。時事ネタを取り入れたマクラから爆笑を誘うテンポのいい噺ぶりで、古典落語にできるかぎり革新を試みる“新版古典落語”を見事に作り上げている。
桂文珍が年1回、8月8日にNGK(なんばグランド花月)で開催する八八(はちはち)独演会から、2004年第22回のライヴ。「世帯念仏(小言念仏)」のリニューアル版「新・世帯念仏」とおなじみ「三枚起請」を収録。
落語家・文珍の現在を古典と新作を交えながら世に問うシリーズの15枚目。「宿替え」は東京では「粗忽の釘」と言う。2題とも子供でも知っている大ネタだけに難しいんだとか。細かいところにも小ネタを振って、とっつきやすく仕立てるのがこの人らしさ。
古き味と現代の息吹を融合できる噺家といえば春風亭小朝と桂文珍が東西の双璧。上方話の古典「胴乱の幸助」も文珍の手に掛かると、登場人物がいまも近所に居そうな気になる。「老楽風呂」は逆に、古典に通じる味の新作。聴き比べの楽しさを味わえる。
庄屋さんの死体をあっちにやり、こっちにやって銭を手にする「算段の平兵衛」をはじめ、文珍はしっかりと噺を聞かせる分だけ、さげをあっさり味にしている。文楽の知識がなくても納得できる噺「新版・豊竹屋」では、義太夫語りで注文をして笑いを誘う。
「夢」を主題に据えた二題を語る。富くじものの(1)はまあ普通だが、うたた寝をして見た(はずだが一切記憶していない)夢の内容をめぐって騒動が広がっていく(2)に、不条理劇に近い味わいが。桂米朝師匠が語り直した古典に、文珍がさらに手を加えたものだそうだ。
2002年8月の文珍独演会(なんばグランド花月)からの「青菜」では、植木屋をテンポよく好演している。お出入り先の旦那夫婦のやり取りで“その菜(名)も喰ろう(九郎)判官”とあったのを、家に帰って真似る植木屋が哀しく可笑しい。
“下手の横好き”の義太夫・浄瑠璃語り大好きたちが長屋の軒付けをする「軒付け」は、これはもう病気。女にもてたいと、ガサツな男が長唄のひとつでもと、お師匠さんの所に行く「稽古屋」など、文珍はマクラで現代の噺に翻案してから一気呵成に展開していく。
東西NHKレギュラー対決。西は『新・クイズ日本人の質問』の桂文珍が登場。2002年に20回を迎えた恒例の8月8日独演会のライヴ録音で、上方の大ネタ長講がたっぷりと味わえる1枚だ。
2001年11月の東京独演会の音源。マクラの巧さは、枝雀亡きいま、上方落語ではトップ独走。2作とも上方ならではの噺だが、それだけに所作による笑いの比重が大で、その意味では“音”だけの勝負というのはいささか気の毒。ま、そこは聴き手の想像力の問題でもあるけど。
2000年と2001年のなんばグランド花月での桂文珍独演会のライヴ録音。捕らえた鷺と空中に舞い上がる「鷺捕り」と、上方落語の名作「不動坊」をじっくりと楽しむ。
桂文珍東京独演会2000のライヴ録音。約45分にもおよぶ大作「らくだ」での文珍の絶妙な語りと笑いに圧倒される。往年の名人たちの名演とはひと味違う、新しい時代の「らくだ」。
古典からニューウェイヴまで幅広いレパートリーをこなす桂文珍。バラエティ番組などでもおなじみの彼の新作の中の代表作「老婆の休日」などを収めたライヴ盤。
2000年8月8日に大阪・なんばグランド花月劇場で行なわれた第16回桂文珍独演会の模様を収録。上方落語の「はてなの茶碗」と江戸落語「星野屋」の組み合わせの妙が楽しめる名演だ。
みずから「枕の方が面白い」と認める文珍だが、近年は本篇の方も随分と味わいが深くなってきた。あちこちに枝雀の語り口の影響がみられるものの、現代の観客に合わせたアレンジも活きて、「蔵丁稚」のサゲのタイミングなど見事な呼吸といえるだろう。
昨年8月8日の独演会での録音。五十路に入って“刈り入れ”の時期を迎えた文珍らしく、たたみこむようなテンポの良さは変わらないが、サラリとした味わいがそこここに感じられ、噺を包み込めるようなスケールの大きな藝人への第一歩を踏み出した。