ジャンル : 演歌・純邦楽・落語 > 落語・演芸
五代目古今亭志ん生の芸をこよなく愛するファンは、いまも少なくない。彼の落語が、若い世代にも支持されていることは驚くべきこどだ。ここでは希少な(2)、桂枝雀もよく取り上げている(3)など4つの噺を収録。江戸の粋を伝え残す噺に改めて敬服。
「宿屋の仇討ち」として知られる(1)、自在な話の逸脱ぶりがおかしい(2)、実在した料理屋を舞台にした珍しい演目(3)を収録。枕は比較的短め、さっぱりとした話ぶり。ちょとした言葉のニュアンスが笑いを生む志ん生ならではの“マジック”は楽しい。
秘蔵のお宝になること請け合い。3食抜いてでも買うべし。急きょ演題を変えて登場した艶笑落語は、「放送なんかではやれない」と自らが言う危ない噺。エッチな内容を生き生きと、しかも芸域に昇華させた志ん生は、やはり不世出の噺家なのだと痛感。
最近は珍しいリレー落語で、昭和30年6月22日にNHKラジオで放送された。登場人物が多く演者には難しい噺だが、そこは実力者2人、メリハリの効いた1席にまとめている。もしこのような試みが復活したなら、私は談志・圓鏡の「粗怱長屋」を聴きたい。
「明鳥」は81年4月、「船徳」は79年7月の高座。ようやくCD化されたということに、まず祝盃。文字通り、目に見えてうまくなっていった時期だけに、その躍動感が伝わってくる。噺家の色気というものは、やはり持って生まれるものなのだ、と改めて思う。
「居残り佐平次」は78年12月、「雛鍔」は81年4月の録音。「居残り」や、まだCDは出ていないが「酢豆腐」のように、何をやっているかわからない風若者を演じると、この人はバツグンの腕を見せる。ちょっと図々しく、ちょっとセコイけど、明るい若者がいい。
「愛宕山」は78年4月、「宿屋の富」は80年10月に三百人劇場で収録。たいこもちの一八の口先男ぶりが、いやになるほど出ている。チャランポランさの演技に男の色気がプンプン出ている志ん朝ならではの若々しさ。長いこと期待されていたひとの化けぶりを。