1993年11月25日発売
作編曲家として幅広く活躍中の久米のリーダー作。久米は元スクェア、はにわオールスターズのキーボード奏者で、ここではアコースティック・ピアノをフィーチャーしている。テーマはアジア。架空の未来都市としてのアジアを表現しているような音楽だ。
個性派として知られるピアニスト、宮沢明子の名演集から、モーツァルトのピアノ・ソナタ全集第1巻。1774年、18歳のモーツァルトがザルツブルグで書いた一連のソナタから第1番灰愛4番が収められている。粒立ちの明瞭な音の瑞々しさが心に残る。
73年の録音で、宮沢明子らしいエネルギッシュでメリハリのきいた演奏だ。勢いがある。高度成長まっしぐらの日本を思い出すような。時代とともに音も、演奏スタイルも変わっていく。もちろん、日本人初のモーツァルト・ピアノ・ソナタ全集の価値は不変。
全集盤として出ていたLPセットの、分売・CD化であり、1枚1000円の廉価盤。根強い人気をもっているピアニスト、宮沢明子は、優しく語りかけるように、あるいは力強い主張をぶつけるように、多彩な表情をみせながら、心のこもった演奏に努めている。
オーディオ評論家としても高名な菅野沖彦氏が、まだバリバリのミキサーとして活躍していた頃の名録音。ベーゼンドルファーで奏でる宮沢明子のおおらかなモーツァルトを、克明なサウンドで収録している。アレグロ楽章の切れ味はいまだに新鮮そのもの。
一音一音を大切にし、そこに音楽を吹き込んでいくタイプの宮沢明子にはこうした方向性がぴったりだと思う。(多分)お気に入りのベーゼンドルファーの少しくぐもった音色が、そこに深みを加える。ピアノへの愛情が伝わってくるアルバムだ。
宮沢明子の“モーツァルト”、今あらためて聴きなおしてみると、小品だからこそかもしれないが、やわらかくて、かろやかで、のびやかでロマンティックで、これがなかなかに素敵。音楽の流れが自然で、理屈っぽくないから、誰にも聴きやすい演奏。
宮沢明子の70年代前半の録音。たしか“実力派”として大いに売り出しをかけていた頃のものだと思う。彼女の演奏は非常に透明度が高く、ここに聴くショパンのノクターンでも決してムードに溺れることがない。今でも十分に通用する内容のアルバムだ。
このアルバムは入間市民会館のホールで録音したということだが、響きがやや少なめで狭いスタジオで録音したような感じだ。演奏はロマンティックな宮沢明子らしく濃やかで女性的。弱音が美しいが全体に線が細くもう一歩深い音色と大きな音楽づくりが欲しい。
しっかりとしたテクニックと構築性に裏打ちされた自信。それが没個性になりがちな表現に面白さを添える。74年10月、東京での録音である。通常よりやや速めのテンポは良い意味での緊張感を醸しだし、特に(2)(3)の小品を個性的に聴かせる。
タイトルが示すとおり、ここではベーゼンドルファー・インペリアルという楽器の魅力が最大限に生かされるプログラミングがなされている。20年も前の録音だけに宮沢の演奏はまだ円熟の域には達していないが、様式を的確に把握する力はすでに相当のものだ。