2004年1月発売
19世紀以降の北欧音楽のオムニバス。収録曲をあえてシベリウスやグリーグなどの有名曲に絞らないことで、北欧音楽の多様性と、各作品の底流をなす民族的なメンタリティを俯瞰できる構成となっている。北欧作品への見識を広められる一枚。
アルゲリッチ・ファンにとっては、ラビノヴィチがジャマに思えてしまうかもしれないけれど、彼女と張り合うかのような溌剌とした名演を聴かせてくれる。もちろん2台ピアノではスリリングかつ生き生きとしたやり取りがさらに美しい世界を繰り広げてくれる。オケも上々だ。
制作・出演
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ / ケネス・シリトー / スティーブン・オートン / スティーヴン・ティーズ / デイヴィッド・パイアット / ネヴィル・マリナー / ロバート・スミッセンロンドン交響楽団の首席に就任する2年前の録音。全音域を弱音から強音まで技術上の問題などほとんど存在しないかのようにムラなく吹きこなしている。肩の力が抜けたゆとりすら感じさせる演奏。マリナー/ASMFによるサポートもすっきりとまとまっている。
シフは個々の音を非常にきっちりと磨き上げるが、音色は決して華美にならず、表情も落ち着いている。その意味では第4番との相性がより良いのは疑いの余地はないが、第5番も水準以上の好演奏。ハイティンクの伴奏も過不足なく、きっちりと独奏者を支えている。
夢にハマって沈潜してしまうと何だかぼんやりしてしまいかねないシューマンのロマンを、持ち前のワザを駆使してウツツの世界に繋ぎ止め、耳を覚醒させてくれる快演。アルゲリッチの思い切り、クレーメルの分節凝視、いずれも“スレスレ”だがライヴに面白い。
古楽の成果を取り入れたアーノンクールの新鮮な解釈が光るブラームス。それに応えるクレーメルも素晴らしい。とくにハーゲン弦楽四重奏団のクレメンス・ハーゲンを迎えての二重協奏曲は非常に室内楽的で示唆に富む。これこそがこの作品の本来の姿だろう。
90年代にボーモンが完成させて高い評価を得たCD10枚からなる全集のダイジェスト盤ともいえる一枚。ライバルのルセが同時期にリリースしたものとは対照的なほどにダイナミックで躍動感のある演奏。近接ぎみのマイクセッティングも特徴をよく捉えている。
もう1,000円盤になって再発された。発売当時、大きな話題になったが、あらためて聴いてみても、すごいよ、これは。テクニックもさることながら、編曲がよく出来ている。捨てるところと生かす(浮き上がらす)ところの選択がうまい。1枚持っていても損はしない。★
大作だの偉大な傑作だのというワケではないが、シベリウスのピアノ曲にはかけがえのないシンプルな美しさとナイーヴさがあり、その心の奥深くまで静かに届く調べは、一度聴いたら忘れられない。澄んだ響きにリリカルな詩情を乗せた演奏が実にいい。★
アルゲリッチが、その奔放さの一方でデュオを好むのは興味深い。ここではラビノヴィチと掛け合いでモーツァルトを演奏してる。アレグロの爽快なテンポ感はもちろん、アンダンテで相手の呼吸をはかりながら音を紡ぐ間の面白さ。聴きごたえあるアルバムだ。
3曲とも別の編成でのほうがよく知られているが、この表現力豊かなデュオで聴いてしまうと2台ピアノ作品としての価値を認めざるを得ない。ときに細かな声部が埋もれてしまうこともあるが(作品34bの第1楽章など)、ダイナミズムの幅も広くスケール感たっぷり。
もうこれは人間業ではない! 単なるオーケストラ曲のアレンジという領域をはるかに超えて、2台ピアノの極限まで示してしまった“危ない”世界である。いささか地味な「家庭交響曲」など面白すぎるし、「ラ・ヴァルス」など超絶過ぎてもはや別曲のイメージすら漂う。必携盤。
解釈の深浅よりも、まず指が回るかどうかが問題になる難曲ばかりを集めたアルバムである。録音当時、17歳だったヴェンゲーロフのテクニックは、小憎らしいほど冴えわたっている。パガニーニの曲では、メータが作り出す堂々たる響きも印象に残ることだろう。