2004年1月発売
以前はかなり力任せだったり過度に意識的な音楽作りが目についたバレンボイムだが、やはりこういうスーパー・オケを振るようになると、むしろオケとの共同作業という面が強くなってくる。だから演奏にはとくに気負ったところがないが、いささか安全運転かも。
やっぱりこれだけ規模も大きく、複雑な作品だけあって、今まで出た演奏はどれも素晴らしい。本作も、ライヴとは思えない精度の高いアンサンブルと、ライヴならではの、ダイナミックで、熱気があふれたものになっている。まあそれにしても、BPOはさすがだなあ。★
2度目の録音。テンポの緩急、広いダイナミズム、密なアンサンブルと、前回と大きな変わりはないけれど、よりしなやかに、滑らかになっている。2番のハーツェルツェトのフルートがイマイチだけれど、オーケストラはまことに生き生きと、溌剌とした演奏だ。
古今東西、バッハの名曲のアレンジは多種多様存在するが、これは作曲家としても著名なクルト・レーデル自作自演(?)による意義ある一枚。全般にオーソドックスなアレンジのようでありながら、実はなかなか凝った作りであることがわかる。全15曲収録。
なにも無理に弦楽合奏用に編曲しなくてもと思いながら聴くと、あにはからんや。これがすこぶる魅力的なのだ。シトコヴェツキーの編曲も演奏も、原曲のイメージを壊さずに豊かなサウンドを繰り広げてくれる。子守歌のはずだけど、おもしろくて寝てなんかいられない。
今やワーグナー指揮者としてもトップクラスになってしまったバレンボイムによる熱演。シカゴ響の迫力あるブラスの醍醐味を十全に出したフォルテやクレッシェンドは圧巻。とりわけ「マイスタージンガー」や「トリスタン」はそのドラマ性やロマン性を彷彿とさせる秀演。
ナガノは本場仕込みのせいか、輪郭をきっちりと描きながら、これらの曲に必要な淡く柔らかい色彩を非常にうまく、かつ自然に表出している。なまじフランスの団体でなかったからこそ成功したとも考えられるが、この水準でこの価格は、間違いなくお買い得。
19世紀以降の北欧音楽のオムニバス。収録曲をあえてシベリウスやグリーグなどの有名曲に絞らないことで、北欧音楽の多様性と、各作品の底流をなす民族的なメンタリティを俯瞰できる構成となっている。北欧作品への見識を広められる一枚。
アルゲリッチ・ファンにとっては、ラビノヴィチがジャマに思えてしまうかもしれないけれど、彼女と張り合うかのような溌剌とした名演を聴かせてくれる。もちろん2台ピアノではスリリングかつ生き生きとしたやり取りがさらに美しい世界を繰り広げてくれる。オケも上々だ。
制作・出演
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ / ケネス・シリトー / スティーブン・オートン / スティーヴン・ティーズ / デイヴィッド・パイアット / ネヴィル・マリナー / ロバート・スミッセンロンドン交響楽団の首席に就任する2年前の録音。全音域を弱音から強音まで技術上の問題などほとんど存在しないかのようにムラなく吹きこなしている。肩の力が抜けたゆとりすら感じさせる演奏。マリナー/ASMFによるサポートもすっきりとまとまっている。
シフは個々の音を非常にきっちりと磨き上げるが、音色は決して華美にならず、表情も落ち着いている。その意味では第4番との相性がより良いのは疑いの余地はないが、第5番も水準以上の好演奏。ハイティンクの伴奏も過不足なく、きっちりと独奏者を支えている。