著者 : アネット・ブロードリック
ベスことエリザベスは里親の家を転々としたつらい生い立ちゆえ、極力、人との関わりを避けて生きてきた。だが、このままではいけないと、苦手なパーティに参加し、知的でなおかつ容姿端麗な実業家のダンと出逢う。初対面なのになぜか懐かしさを覚えたエリザベスは、お堅い自分を捨て、フルネームも素性も明かさぬまま、彼と夢のような一夜を分かち合った。人生で初めて知る喜び…。でも、あまりに性急すぎたかも…。ふと我に返った彼女は、眠るダンを置いて、彼のもとから姿を消した。彼の子を身ごもったとわかったのは、それから数カ月後のことだった。さらには、ダンと会うことはもう二度とないと思っていたのに、彼が謎の女性“ベス”の正体を突き止め、エリザベスの家へやってきた!
病院のベッドで目覚めたとき、わたしは記憶を失っていた。傍らの男性ラウールは、わたしが彼の妻シェリーで、二児の母だと言うが、何も思い出せない。どうやらわたしは自動車事故で九死に一生を得たらしい。退院後、夫とともにパリ郊外の自宅で暮らし始めた。日ごと深まっていく夫への愛情。けれど、いまだ戻らぬ記憶の片隅に奇妙な確信が芽生えたのだー“わたしはシェリーではない”と。(『わたしの中の他人』)。恋人が企む悪事の計画をもれ聞いたホリーは、逃げだしたところを捕まり、無理やり飛行機に乗せられてしまった!ああ、もうおしまいだわ…。死を覚悟したが、運よくパラシュートで脱出に成功した。地上に降り、やっとのことで一軒のキャビンに辿り着くと、そこにはセクシーな男性の姿が。銃口を向けられて名を名乗れと命令され、息をのんだ。何も思い出せないーいったい、私は誰?(『炎のメモリー』)
集中治療室で働く看護師のエリーズは、事故で重傷を負ったデーモンを担当することになった。有名な大企業を牛耳る社長だというが、今はその端整な顔も腫れ、全身を管につながれて、昏睡状態だ。見舞いの家族も来ない彼に寄り添い、耳元で懸命に声をかけるうち、エリーズの心にはいつしか、特別な感情が芽生え始めていた。だめよ、私情を挟んだりしちゃ。そう自分を戒めた矢先、ついにデーモンが意識を取り戻すー視力が失われた状態で。やがて、看護師が同伴するという条件で退院を許された彼は、ためらうエリーズを連れて、湖畔の別荘へ向かい…。
幼稚園で働くジャニンは最近入園してきた少女が気がかりだった。5歳のトリーシャは他の子と遊ばずに大人と一緒にいたがるのだ。話を聞けば、仕事のため街に住む父親に会えなくて寂しいという。ジャニンは事態を黙認できず、家庭訪問をすることにした。少女の父は富と権力を誇る名門キャラウェイ家の次男キャメロン。彼の圧倒的な男らしさに戸惑いつつもジャニンが意見すると、キャメロンは口出しするなと言って真っ向から対立してきた。幼い娘を放っておくなんて、この人は最低の男に違いないわ!彼女は怒りのあまり帰ろうとするが、嵐のせいで足止めされ…。