著者 : アーウィン・ショー
一九三〇年代の大不況時代を生きる、タクシー運転手や若い夫婦、保安官助手やフットボール選手などの不安と恍惚と激情のドラマから、第二次大戦下の倦怠し惑乱している兵士たちの人生へ、そして、無残でグロテスクな戦後の幻滅を描く現代の物語までー。ショーの全作品を愛しぬいた名訳者が、厳選した短篇を時代順に配列し、まるで長篇小説のように編集した傑作集。“「時代」の歩みが、この作家の鋭敏なレンズを透過して屈折し、現実の情報よりもはるかに現実的なかたちで、あなたの胸に像を結ぶだろう。”劇的な構成と無類に面白い筋の展開を堪能できる十六篇。
ハリウッド、ローマと映画界のきらびやかな世界に生きてきたジャック。中年にさしかかり実績を残し、煩わしいながらも平穏に結婚生活を送ってきた。ある日、仕事でヨーロッパを訪ねたジャックは旧友と会い、過去の記憶をたどっていく。過去は現在と重なり、魅惑的な恋物語を紡いでいく傑作恋愛長篇小説。
軍隊と戦争の罪悪を、エピソードを盛り込み劇的な構成でスリリングに描き出す、ショー初の長編小説。三人の主人公(ナチスに投じるオーストリア人、ユダヤ系アメリカ人、芸術を愛するアメリカ人)は、それぞれ前途に漠然とした不安を抱きながらも、青春を愉しんでいた。そこへ開戦。三人とも戦地に送られ、人間性は破壊され、堕落していく人々をまのあたりにする。
二人のアメリカ青年は、戦争の体験から戦友として信頼しあうようになるが、ナチスを信奉するオーストリアの青年は、有能な兵士になるにつれ人間性を喪失してよく。やがて三人は、バイエルンの森で運命の対決を迎える。『武器よさらば』『禅者と死者』と並ぶ戦争を舞台にした青春小説で1958年には映画化された。
一枚の絵のために祖国ロシアを追放された画家バラノフ。ヒトラーのドイツからも追われアメリカに渡るが…亡命生活を送る画家の悲哀を描く「緑色の裸婦」他六編。第二次大戦から冷戦へ。時代を読みながら、芸術家、中年夫婦、若者たちのすがたをドラマチックな構成力としゃれた語り口で活写するショーの傑作短編集。
ならず者に乱暴されかけた義姉を救ったがために殺された。ジョーダーシュ家の三男トマス。フィルム編集者の姉グレーチェンと実業家の兄ルードルフは、トマスの一人息子ウェズリーの将来を案じるのだが、父を殺した男への復讐を誓うウェズリーは、みずから父の歩んだ不幸な生き方をたどるかのように、ひとり旅立っていく…。苦悩、暴力、愛、情が横溢する壮大な物語世界を展開する“短篇の名手”の、もうひとつの魅力。
伯母グレーチェンがみずから監督した映画に抜擢され、俳優として華々しくデビューを飾ったウェズリー。実父トマスの過去に追い求め、その真の姿を知るにつれ、彼は自分自身の生き方をも見出していのだが、父の生命の奪った男への復讐心は、静かに、だが〓@57F6然と心の底で燃え続けていた…。人気作家ショーが、文学とエンタテインメントの魅力を融合させた名篇『富めるもの貧しきもの』の感動の世界を今ここに甦らせる!
幼なき日の思い出も、恋も、すべてが夏の日の煌く海辺から始まるー。一人の男が、スポーツに夢中になったわけ、初めて女性を知ったときの心理、そしていま、家庭の人となるまでの長い道程で味わった喜びと悩み。人生の機微・哀歓を瑞々しく綴ったショーの秀作長編を、作家・常盤新平の清新な訳で贈る。
第二次世界大戦が終了した1945年。ニューヨーク近郊の町ポート・フィリップの貧しいジョーダーシュ家に生まれ育った姉弟の生活にも転機が訪れていた。中年実業家ボイランとの出会いから奔放な恋愛遍歴を重ねていくグレーチェン、ハイスクールの陸上競技選手で優等生の兄ルードルフ、不敬事件をひき起こし町を追われる弟トマス。自身の価値観にのみしたがい相容れない3人は、それぞれの新たな生活へと足を踏み入れていく…。現代アメリカ文学を代表する人気作家が戦後の混乱した社会を背景に壮大な人間愛のドラマを描いた大ベストセラー長篇。
大学を卒業後、大学院への進学を断念したルードルフは、地元のデパートで要職に就いた。幅広い経営の手腕を発揮する彼は、次第に有能な青年実業家としての名声を築いていく。そして、最愛の女性クロチルドにめぐり逢えたのも束の間、乱交事件を理由に叔父の家を追われ、行き場を失ったトマスは、ボクシングの世界に自分の住む場所を見出そうとしていた。心の底にまだ消えやらぬ互いの愛憎を秘めたまま、運命の糸に操られるよように、2人が思いもよらない再会をする日がやってくる。さまざまな出会いが織りなす人間模様を綴ったショーの代表作。
3人の姉弟は、母親の死によって長い間縛られていたジョーダーシュ家の血の怨念から解き放たれた。グレーチェンは最愛の夫と死に別れ、長く望んでいた学業へ戻ることになる。一方、ルードルフは市長として政治の世界に、トマスはヨットの船長として航海へ出ることになる。3人はそれぞれの求める道を見つけていくが、たがいを理解し合えたと思った矢先、思いもよらない大きな悲劇がかれらを待ちうけていた…。都会的で洗練された短篇の名手として知られるアーウィン・ショーが、家族とは、人間の本質とは何かという問題にとりくんだ傑作長篇。
人生の機微、男と女の心理の綾を、心憎いばかりのみごとな筆致で浮き彫りにするショー。訳すのは、私小説の世界に新しい地平をひらいた直木賞作家。この日米の短編小説の名手がコンビで贈る“人生模様”。「心変わり」「かなしみの家」「不道徳な話」「ニューヨークの喧騒」など、珠玉の13編を収録。
1938年。下況の波は全世界を洗い、マクマホンの勤めるバーにも合理化が訪れていた。店長は安価な出来合いのカクテルを店に出すという。「ニューヨーク一うまいマテニー」がマクマホンの最大の誇りだのに(「モニュメント」)。ニューヨークを舞台に『夏服を着た女たち』の著者が贈る珠玉の短編集第2弾。