著者 : ウィリアム・フォークナー
世界文学の巨人が創出したアメリカ南部の伝説の地ヨクナパトーファの全貌を明かす究極の小説選。作家をノーベル賞に導いた奇跡の作品集を最強の翻訳陣による画期的新訳で。
暴力、スピード、死ー心に傷を負い戦争から帰還した青年の絶望と破滅。ガルシア=マルケス、中上健次ら次代の巨匠へ影響を与えた世界文学史上最高の物語群の始まりとなる傑作の「真の姿」。『サートリス』オリジナル版。記念碑的大作、初の邦訳。
少年時代に受けた屈辱により、南部で人間として認められるには「土地と黒人と立派な家」を持たなければならないと思い知らされたサトペンは、その野望の達成に向けて邁進する。しかし最初の妻に黒人の血が混じっていることを知って捨てた報いにより、築き上げた家庭は内部から崩壊していく。小説表現の限界に挑みながら二十世紀文学の最先端を歩み続けたフォークナーの渾身の大作。
南北戦争が始まる頃、ヨクナパトーファ郡ジェファソンに飄然と現れた得体の知れない男トマス・サトペンは、インディアンから百平方マイルの土地を手に入れ、大いなる家系を創始するべく、町の商人コールドフィールドの娘と結婚する。サトペン家の興隆と崩壊を物語りつつ、アメリカ南部の過去と現在の宿命的な交わりを描いた迫力ある長篇。
アメリカ南部の名門コンプソン家が、古い伝統と因襲のなかで没落してゆく姿を、生命感あふれる文体と斬新な手法で描いた、連作「ヨクナパトーファ・サーガ」中の最高傑作。ノーベル賞作家フォークナーが“自分の臓腑をすっかり書きこんだ”この作品は、アメリカのみならず、二十世紀の世界文学にはかり知れない影響を与えた。
どんな願いもかなえてくれるという魔法の木。誕生日の朝、どこからともなく現われた不思議な少年に誘われ、その木を捜して森をさまよう少女の姿を、美しく、幻想的に描いた文豪フォークナー唯一の童話。
第一次大戦下、フランスの前線部隊に起った反乱をめぐる兵士・市民の物語である。12人のふしぎな兵士を従えた一伍長の受難をキリストの受難に二重写しにしつつ、「生きる苦悩と救い」という人類永遠のテーマを、戦争という人間悪の集約ともいうべき場で執拗に追及したフォークナー破格の思想小説。
第二次世界大戦の衝撃を一つの決定的な契機として、作者は無意味な大量殺人としての「戦争」を現代の世界状況および構造そのものを深く象徴するものとして捉え、そのメカニズムを徹底的にあばき、その根源の地点から人間存在の意味と可能性を未来に向かって把捉しなおそうとする雄勁な文学的企てをここに結実させた。
心を病んだ一人の女の愛する男への妄執を、ゴシック小説仕立ての怪奇・スリル・サスペンスで描き出した表題作「エミリーに薔薇」他7篇を収録。「アザサロム、アブサロム!」「響きと怒り」など、難解をもって鳴る17の長篇が築く険阻な大連峰を踏破する第一歩として、必読の短篇集。