著者 : カツセマサヒコ
ー海は、この星の涙の、行き着く先かもしれない。逃げるように移り住んだ土地で十二年ぶりに再会してしまった元恋人、クラスメイトのタイムカプセルを掘り起こしに行く小学生、職場からの逃亡を企てる学校教諭と保育士、絶縁していたはずが新たな子を連れて現れた父親、潰れた八百屋に隠されていた七年間の秘密、若き青年との疑似恋愛に溺れる編集者、癌になった友人と、海岸に打ち上げられた鯨。すべて、この海の街で波のように生まれては消えた、ちいさな物語。
ー出逢って八年。付き合って六年。同棲を始めて二年。もう僕らのあいだに、新鮮な出来事はほとんど残されていない。いつものスペインバルで年上の彼女にプロポーズした青年・雨宮守。長年連れ添った妻に離婚したいと告げられた中年・土方剛。世代も価値観も正反対だったふたりの人生は、社内のある疑惑をきっかけに、変化し始める。夫婦であること、家族であること、働くこと、生活すること、傷つけること、生きること。過去からも未来からも逃れることのできない世の中で、それでも光を求めて彷徨う者たちの物語。
インスタ、X、ユーチューブ、タイムラインを流れる日々に疲れてしまっても、あなたを救う物語がある。心に刺さるSNSのいい話。新時代の小説家が贈る全編新作アンソロジー。ネットミームとなった田舎道で中指を突き立てる少女の写真。その裏に確かに存在した「彼女」の物語とは?(「#ネットミームと私」麻布競馬場) 26歳フリーター、独身女子。ヲタ活の資金集めのために出来心で二次創作絵を販売したら…。(「#いにしえーしょんず」柿原朋哉) ストーカーに襲われてピンチの私を救ったのは、最強だった高校時代の文化祭のテーマ。友達の悲しみも今の私もぶっ飛ばせ!(「#ウルトラサッドアンドグレイトデストロイクラブ」カツセマサヒコ) サブカル女子をこじらせていた私。かつてインスタに投稿した写真に元カレが「いいね」を突然つけて…。(「#ファインダー越しの私の世界」木爾チレン)
駅にまつわる思い出はありますか?再開発できれいになった駅もいいけれど、大好きな人と待ち合わせした、あの古い改札のことは、いつまでも覚えていたい。そう思わせてくれる18の物語が詰まっています。
明大前で開かれた退屈な飲み会。そこで出会った彼女に、一瞬で恋をした。本多劇場で観た舞台。「写ルンです」で撮った江の島。IKEAで買ったセミダブルベッド。フジロックに対抗するために旅をした7月の終わり。世界が彼女で満たされる一方で、社会人になった僕は、“こんなハズじゃなかった人生”に打ちのめされていく。息の詰まる満員電車。夢見た未来とは異なる現在。高円寺の深夜の公園と親友だけが、救いだったあの頃。それでも、振り返れば全てが美しい。人生のマジックアワーを描いた、20代の青春譚。