著者 : カンバンファ
氷の木の森氷の木の森
すべての音楽家の故郷であり聖地であるエダン。この平和な都市のはずれで惨たらしい殺人が起きた。その中心にいたのは孤高の天才バイオリニスト、アナトーゼ・バイエル。そして、数多の音楽家を魅了し、その命を奪ってきた罪深きバイオリン“黎明”。稀代の音楽家と伝説の名器、導かれた者しかたどり着けない幻の場所『氷の木の森』。数奇な運命がもたらすのは世にも美しい旋律か、残酷な死の呪いかー。世代を超えて愛される韓国ファンタジーの名作待望の邦訳!
惨憺たる光惨憺たる光
私たちの内側はどうしてこんなにも、一寸先も見えない闇なのだろう。まるで誰も住む者のいない、がらんどうの木の洞のように(「ストロベリー・フィールド」)。私はその明かりが怖くてぎゅっと目を閉じた。そのころ、闇より怖いのは光だったから(「夏の正午」)。先輩の浅黒い手に、白くてもろい雪が静かに、そして永遠のごとくゆっくりと舞い落ちた(「初恋」)。光と闇、生と死。心は彷徨いながら揺れ動く。初邦訳作家の十の短編。
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