著者 : グレーアム・グリーン
人妻サラとの道ならぬ恋から1年半。なぜ彼女は去っていったのかー捨てきれぬ情と憎しみとの狭間で煩悶する作家ベンドリックスは、その雨の夜、サラの夫ヘンリーと邂逅する妻の行動を疑い、悩む夫を言葉巧みに説得した作家は、自らの妬心を隠し、サラを探偵に監視させることに成功するが…。鮮やかなミステリのように明かされる真実とは。究極の愛と神の存在を問う永遠の名篇。名作新訳コレクション。
人と交わらず孤独に暮らしていた老人が、ある日最高権力者である将軍に呼び出されて戸惑う様子を淡々と描いた「最後の言葉」。メキシコの田舎町を休暇で訪れた男が、偶然手に入れた大金を社会のために使おうと考えたことによって思いがけない事態を招く「宝くじ」-本邦初紹介となる未完の表題作をはじめとする、十六短篇を収録。移りゆく世界と人々の心情に向けられたイギリスの巨匠の冷静な視線を味わえる傑作短篇集。
西アフリカの植民地で警察副署長を務めるスコービーは、芸術家肌で気まぐれな妻ルイーズに手を焼いていた。南に移住したいという妻の願いを叶えるため、彼は地元の悪党に金を借りて費用を作り、彼女を送り出す。間近に迫った彼の引退まで別居生活となるが、それが彼女の希望だった。だが、やもめ暮らしをはじめたスコービーの前に、事故で夫を失った若い女ヘレンが現われ…英文学史上に燦然と輝く恋愛小説の最高傑作。
さえない中年会計係のぼくと若い恋人のケアリーは、つましい結婚式を計画していた。ところが、勤め先の有力者の気まぐれな勧めにさからえず、高級リゾートのモンテ・カルロで式をあげることに。市長立会いの挙式、美しい海、そして豪華ヨットが待つ港町へむかったぼくたちはしかし、ギャンブルをめぐる不器用な愛のすれちがいにはまりこむー丸谷才一の名訳で贈る巨匠の異色恋愛喜劇。著作リスト・年譜を収録した保存版。
戒律を冒した神父はそれでも神聖なのか?酒を手放せず、農家の女と関係を持ち私生児までもうけてしまう通称「ウィスキー坊主」は、教会を悪と信じる警部の執拗な追跡を受け、道なき道を行く必死の逃亡を続けていた。だが、逮捕を焦る警部が、なじみの神父を匿う信心深い村人を見せしめに射殺し始めた時、神父は大きな決断を迫られるー共産主義革命の嵐が吹き荒れる灼熱の1930年代メキシコを舞台にした巨匠の最高傑作。