著者 : シャロン・サラ
メアリーは夫ダニエルと生後3カ月の愛娘ホープを事故で亡くし、この6年、ずっと悲しみと孤独から抜け出せずにいた。ある日、ふと入った古道具店でにわかにめまいを感じて気を失い、目覚めると、6年前の事故直前の世界に戻っていた。なりふり構わず、メアリーは身を挺して愛する夫と娘の命を救った。夢か現実かもわからぬまま、ただこの時が続けばいいと願うが、気づけばもといた店にまた戻っており、彼女は現実に打ちのめされる。だが帰ろうとしたそのとき、幼い少女と男性の姿が目に飛びこんできた。なんとそれは、愛してやまないダニエルと、6歳になったホープだった!
生まれつき不思議な予知能力を持ち、そのせいで周囲から敬遠されてきたローレルは、都会を離れて亡き祖母が遺してくれた屋敷にひとり移り住むことに。ルイジアナの深い森に囲まれたその美しい屋敷は、地元では“ミモザの園”と呼ばれ愛されていた。ようやく自分の居場所を見つけたローレルだが、ある日そこで思いがけない出会いを果たす。目の前に、毎晩ローレルの夢に出てくる男性ー存在するはずのない空想の世界の恋人が現れたのだ。呆然とするローレルに、彼も戸惑いを隠せない様子で「会いたかったよ」とささやき…。
未来や遠くの出来事が見えてしまうグローリーは、人々から“魔女”と疎まれ、ずっと孤立してきた。ある吹雪の夜、グローリーは凄惨な事故の幻影を見て飛び起きた。横転した車、血まみれの男性…“彼”が助けを求めている!急ぎ病院に駆けつけ、救命に協力したー稀な血液型が一致したのだ。その男性ワイアットに絆を感じつつ、名も告げずに去った数カ月後。何者かによる放火で最愛の父と兄、そして家を失ったグローリーは、恐怖と哀しみに震えながら、虚空を見つめていた。ワイアット、どこにいるの?あなたに会いたい…私を助けて!
オナーはその日、見上げるほど豪奢なマローン家の門をくぐった。かつて誘拐されたマローン財閥の令嬢と判明し、26年ぶりに帰ってきたのだ。代理人トレースとともに。だが、オナーを高慢な親族たちが歓迎するわけもなく、あまつさえ財産目当ての偽物と拒絶した。冷え冷えとした屋敷のなかで、味方はトレースだけだったが、彼の出張中、オナーは暗闇のエレベーターに閉じ込められる。闇を引き裂き、「このあま」と吐き捨てるような声が響きーそして落下してゆくなか、思い浮かぶのはトレースの黒い瞳…。誰もが白い目で見る屋敷で、彼だけが心のよすがだった。居場所を求めて彷徨う、孤独な乙女の祈り。
誰もがうらやむ美貌の持ち主でも、サハラには隠し通してきた傷があった。名家の主人と使用人のあいだに生まれた彼女は、その美しい容姿に目をつけた女主人に無理矢理引きとられ、気の向くときだけ“名家の令嬢”を演じさせられてきたのだ。大人になり、独立して、ようやく手に入れた平穏な日々も束の間、サハラは何者かに命を狙われ始める。過去の影に怯える彼女の前に現れたのは、最強ボディガードとして名高いブレンダンだった。優しくたくましい腕に24時間守られるうち、かたくなに生きてきたサハラの心は少しずつ解けていき…。
各地を転々としながらその日暮らしを続けるクィン。里親からの虐待、孤独、人間不信。彼女の人生は試練の連続だったが、新天地ラスベガスへ向かうその道中でも、新たな試練がクィンを襲う。交通事故現場で少年を保護した直後、何者かの発砲を受けたのだ。しかし、瀕死で警察署に逃げ込んだ彼女は知らなかった。たくましい腕で抱きとめてくれた刑事が、かつて一人だけ心を許した少年ー20年前に同じ里親のもとで絆を結んだ、ニック・サルダーノであることを。あの頃の少年少女は、一人の男と女として、いま再び巡り逢った。
父の介護に明け暮れるタリアは、突然の訃報に驚いた。かつて将来を誓い合ったボウイの父親が何者かの凶弾に倒れたという。7年前、スコットランドの血を引く黒髪の恋人ボウイにプロポーズされ、タリアは幸せだった。だが時を同じくして父がアルツハイマーを発症していることが判明。タリアはこれからの介護の日々を思い、理由は告げぬまま断ったのだった。ボウイは町を去り、二人の仲は終わった。だが父親の死の謎を解くためにボウイが帰郷した今、愛する男性に別れを告げて以来止まっていたタリアの時間は、再び時を刻み始め…。
ヴィクトリアには幼い頃の記憶がない。両親の顔さえ知らず、気がついたときにはひとり里親の家を転々としていた。だからだろう、恋人のブレットにすら完全には心を開けずに、写真家としての仕事に没頭する毎日だ。ある日、撮影旅行から戻ったヴィクトリアは、現像した一枚の写真に目を奪われた。そこに写るのは、むっつりした表情の老いた男ーまったく見覚えのない男だというのに、彼を目にした日から、ヴィクトリアは夜ごと悪夢にうなされるようになる。これは、失われた過去と何か関係があるの?この男はいったい誰…?