著者 : ジョン・アーヴィング
本人が思っているよりは有名な作家フワン・ディエゴは、死んだ友人との古い約束を果たすため、ニューヨークからフィリピンへの旅に出る。独身作家のこの感傷旅行は、いつしか道連れとなった怪しい美人母娘との性的関係を深めつつ(ただしバイアグラ頼み)、夢となって現われる少年時代の記憶に彩られてゆく。メキシコで生まれ育ったフワン・ディエゴは14歳。人の心が読め、ちょっとした予知能力を持つ13歳の妹ルペといつもいっしょだ。娼婦で教会付きの掃除婦でもある母は育児放棄同然。ゴミ捨て場のボスが兄妹を庇護していた。燃えさかるゴミの山から本を拾いだしては独学で学ぶフワン・ディエゴに、心優しい修道士が目をかける。ある日、不慮の事故で足に障碍を負った少年は、妹とともに教会の孤児院に引き取られ、やがて“驚異のサーカス”へ。悲喜劇の巨匠による、待望の最新長篇!
フワン・ディエゴとルペの兄妹が肌身離さず抱えているコーヒー缶にはー教会で突然こと切れた母と、ルペの初恋のアメリカ人兵役拒否者、死んだ子犬、教会の聖母像のもげた鼻、それらぜんぶのー遺灰が入っていた。“驚異のサーカス”にライオンの読心術師として迎えられたルペは、自分と兄の未来を予見して、ひそかにある行動を決意する。ルペの死後、思いがけないカップルの養子となったフワン・ディエゴは、アメリカで新たな人生を歩みはじめる。40年後、54歳のフワン・ディエゴは、雪のニューヨークから香港を経てようやくフィリピンに到着。創作科の元教え子で現地の人気作家となったクラークに鬱陶しいほど歓待される。リゾートに滞在するフワン・ディエゴの前に、謎のセクシー母娘がまたもや出没。現在と過去を行きつもどりつする作家の旅は、いったいどこへー?デビューから半世紀、ひとの一生をまるごと描き、現代文学を切り拓いてきたアーヴィングの、14作目の最新長篇!
美しい図書館司書に恋をした少年は、ハンサムで冷酷なレスリング選手にも惹かれていたー。不安と憧れの間で揺れ動きながら、少年は自らの性を発見してゆく。愛と笑いと切なさにあふれた傑作長篇。
友人たちも、姿を消した父も、それぞれに性の秘密を抱えていた。性的少数者たちが教えてくれた、さまざまな愛のかたち。エイズの時代に去って行った、友人たちの面影ー。ある小説家の半世紀にわたる生と性の物語。
ニューハンプシャーの山あいの小さな林業の町に暮らす、料理人とその息子。ある夜、寝室から漏れるただならぬ呻き声を聞いた息子は、父親が熊に襲われていると思い込み、ベッドの上の何者かをフライパンで撲殺してしまう。それは父の愛人であり、悪いことに町の悪辣な治安官の情婦でもあった。そして二人の逃避行が始まるー。構想20年!半自伝的大長篇。
追っ手を逃れてニューハンプシャーからボストンへ、そしてヴァーモントへ移り住んだ料理人とその息子。成人した息子は作家として成功し、父親となるが、やがて愛する者たちを次々に失ってしまう。運命に導かれるように、気づけば彼は故郷の町の川のほとりに辿り着き、かつて自分を守ってくれた樵の物語を書き始めるー。ハートフルで壮大、待望の最新長篇。
女の誘いは決して断らないモテモテのテレビ記者、パトリック・ウォーリングフォード。インドでサーカスの取材中、ライオンに左手を食われてしまう。5年後、手の提供者が現れ、移植のチャンスに舞い上がるパトリック。だが、手の元持ち主の妻ドリスが「手の面会権」を主張し、会いに来てー。希代の色男と一世一代の決意を秘めた女の運命的な恋を描く、ロマンティック・コメディ。
ドリスはオットー・ジュニアを無事出産する。これまで出会ったどの女性よりもドリスを愛し始めたパトリック。だが、彼女の愛情は、死んだ夫のものであった彼の左手だけに捧げられているようだ。そんななか、移植された左手は、暗緑色に変色してしまう。パトリックの恋の行方やいかにー。シニカルなストーリーを通し、本当の愛とは何かをユーモラスに問い掛ける、恋愛小説の傑作。
1958年、4歳の少女ルースは両親の寝室から聞こえてくる奇妙な音に目覚め、母とアルバイトの少年エディの情事を目撃した。死んだ兄たちの写真が貼り巡らされた家。浮気をくり返す絵本作家の父。悲しみに凍りついた母は、息子たちの写真だけをもって姿を消した。この夏の出来事が幼いルースと16歳のエディの心に残したものは…。20世紀アメリカ文学を代表するベストセラー。
1990年、いまや世界的人気作家のルースは、三文小説家のエディと再会する。母マリアンについて訊ねるルース。マリアンを忘れられないエディ。それから5年後、ルースは幼子を抱えた未亡人。エディは相変わらずの独身暮らし。そこに謎のミステリ作家の存在がからみあって…。-『ガープの世界』以降、もっとも愉快で説得力のあるアーヴィングの最高傑作!(ニューヨークタイムズ)。
〈ある種の感染症〉により、放尿時の異常な痛みに苦しむ男、フレッド・トランパーは、古代低地ノルド語で書かれた神話を研究する大学院生である。将来の見込みは殆どない。しかもスキーのアメリカ代表選手ビギーを妊娠させたことで父の逆鱗に触れ、援助を絶たれてしまう。息子コルムも生まれたものの、トランパーの生活はいっこうに落ち着かない…。ファニーで切ない青春小説。
トランパーは遂に家出し、旧友メリルに会うためウィーンへ飛ぶが、行方不明だった彼はドナウ河で水死していたことがわかる。その上、帰国してみれば、妻ビギーはトランパーの親友と結婚していた。傷心のトランパーはニューヨークで映画製作に加わり、トゥルペンという女性と暮らし始めるが…。現実から逃げ続けてきたトランパーに救いは訪れるのか?コミカルな現代の寓話。
歴史小説家である「僕」には、ウィーンで数奇な育ちをしたウチという妻がいる。一方、「僕」の友人で大学でレスリングのコーチをしているセイヴァリンは、ウィーンで知り合ったヤンキー娘のイーディスと結婚した。これら2組のカップルのユーモラスで鮮烈な夫婦交換の物語を通して浮かびあるがる現代人の内面風景とは?『熊を放つ』と『ガープの世界』をつなぐJ・アーヴィング会心の力編。
フロイトの招きでウィーンに移住したペリー一家は、第二次ホテル・ニューハンプシャーを開業、ホテル住まいの売春婦や過激派たちとともに新生活をはじめる。熊のスージーの登場、リリーの小説、過激派のオペラ座爆破計画…さまざまな事件を折りこみながら、物語はつづく。現実というおとぎ話の中で、傷つき血を流し死んでゆくすべての人々に贈る、美しくも悲しい愛のおとぎ話。
結婚したガープは3編の小説を発表し幸福な毎日を送るが、妻ヘレンの浮気に端を発した自動車事故で1人の子供を喪い、ガープ夫妻も重傷を負う。女性に対する暴力をテーマに、傷ついた心と体を癒しつつ書いた小説は全米にセンセーションを巻き起こした。一躍ベストセラー作家となったガープは悲劇的結末への道を歩み出していたー。現代をコミカルに描く、アーヴィングの代表作。