著者 : ス-・グラフトン
かつてはキンジーを威嚇恫喝し、大いに恐れさせていた昔なじみのドーラン警部補も、寄る年波からか健康を害し、今は捜査の第一線から身を引いている。そんな彼が突然訪ねてきた。聞けば、かつての先輩である元刑事のステーシーが癌に冒され、余命いくばくもない。ステーシーの、そしてドーラン自身の心残りになっている事件の解決に手を貸してくれないかと言うのだ。事件は18年前、偶然にも彼ら二人が第一発見者となった他殺死体遺棄事件。郊外の石切場付近に打ち捨てられ腐乱していた、少女のものと思われた死体で、全身に多数の刺し傷が認められた。だが、多くの遺留品にもかかわらず、ついに死体の身元は判明せず、ジェーン・ドウと名付けられたまま、警察の記録書類のなかに埋もれていたのだ。退屈な日常の調査業務にうんざりしていたキンジーは、依頼を引き受ける。だが、二人の老刑事とともに遺体の発見現場に向かったキンジーは、そこで思わぬ事態に直面する…。1969年8月、サンタ・バーバラ郡で発見され、以来今日に至るまで身元不明のままという、現実のジェーン・ドウ事件にインスパイアされて執筆し、全米で大きな反響を呼んだシリーズ最新作。
老医師には、その夜まで特に変わったようすは見られなかった。だが、勤め先の老人ホームでいつものように職員たちに声を掛けたあと、駐車場から車を出して帰宅の途についたはずの彼は、そのまま煙のように消え失せたのだ。当初は警察も事件性は薄いと見ていたが、その後九週間を過ぎても、その消息はまったくつかめなかった…失踪したダウ・パーセル医師の前妻フィオナの依頼で、マスコミを騒がせたこの失踪事件を調査することになったキンジーだったが、調査は遅々として進まない。老医師の家族関係は二度の結婚で複雑に入り組んでいたうえ、勤め先の老人ホームには医療詐欺の疑いがかかっている。69歳のダウを失踪に走らせたのは、どちらの理由なのか?そもそも、彼は自らの意志で失踪したのだろうか?粘り強い調査を続けるキンジーは、やがてある発見をするが…。ファンの熱い支持を受け、好調にミステリ界のトップを走り続ける人気シリーズ。人生と社会の闇に挑む、最新作。
「期限切れの倉庫から出てきた品物に興味はありませんか?あなたに関係した品物のようですが」ある朝キンジーのもとにかかってきた一本の電話が、とっくの昔に封印したはずの思い出を甦らせた。埃まみれの箱の中身は、彼女自身の卒業証書、写真、古い手紙、洗面道具、テープレコーダー…そう、この品々はキンジーが最初の夫、ミッキー・マグルーダーと別れた時、彼のもとに残してきたものだ。当時は優秀な警察官だったミッキーだが、キンジーと離婚した後、職を失い、どこで何をしているのかは彼女も知らなかった。いや、知りたくもなかった。だが、箱の中にあった一通の手紙をきっかけに、キンジーは別れた夫を捜そうと決意する。今は疎遠となった、かつての同僚、友人を辿るキンジー。しかし、十五年振りのミッキーとの再会は、彼女が予想もしない状況で果たされることになった…。キンジーの語られざる過去、最初の夫の秘められた生活、そして明らかになる、二十年前の謎の事件-ミステリ界のトップランナーが贈る、人気シリーズ最新作。
いとこのターシャがわたしに仕事を依頼してきた。カリフォルニアで三本の指に入る大手建設会社、マレック建設の経営者バーダー・マレックが亡くなり、四人の息子が遺産を相続することになったのだが、そのうちのひとりで、十八年ものあいだ行方知れずになっている次男のガイを捜しだしてほしいというのだ。わたしは簡単にガイを見つけだした。かつて一家の厄介者だったガイは、今ではすっかり更生していて、過去の罪を償うべく教会でボランティアをつとめる真面目で実直な人間に生まれ変わっていた。しかし、父の死をきっかけに家族との壊れた関係を修復しようと一家に戻ってきたガイは、就寝中に殴殺され、無残な死体となって発見されてしまう。わたしがガイを見つけだし、連れ帰ってきたのは間違いだったのだろうか?言葉にならない罪悪感と哀しみに心引き裂かれながらも、女探偵キンジー・ミルホーンの孤独な調査がはじまった…。
久しぶりの休暇を満喫していたわたしのもとに、家主のヘンリーが相談を持ちかけてきた。数カ月前、心臓発作で急死した近所の老人ジョニー・リーの遺族のため、知恵を貸してくれというのだ。第二次世界大戦中に戦闘機パイロットとして活躍したジョニーを軍人墓地に埋葬しようとしたが、軍には彼の在籍記録は残っておらず、途方に暮れているという。わたしはジョニーの昔の仕事仲間とともに彼のアパートを調べるが、彼が軍に在籍していた証拠は見つからない。ジョニーは嘘をついていたのか。その直後、彼のアパートが何者かに侵入され、さらに、部屋の隠し金庫のなかから古びた鍵が発見された。謎が深まるなか、ある夜わたしは一人の男がアパートからバッグを持ち出す現場を偶然目撃する。わたしは男の後を追うが、それが、行方不明の莫大な金の在り処を探す長い旅の始まりになるとは知る由もなかった。
未解決の殺人事件の犠牲者は、生と死の間をさまよい、嘆き悲しんでいる-わたしにはそう見える。ローナ・ケプラーもその一人だった。十カ月前、彼女は死後二週間と思われる腐乱死体となって発見された。警察は殺人事件として捜査したものの、充分な証拠がつかめず、捜査を打ち切ってしまった。が、ローナの母親は娘が殺害されたと確信し、わたしに事件の再調査を依頼してきた。ローナの死後、差出人不明の、彼女が出演しているポルノのヴィデオテープが送られてきたという。調査が進むうち、次々とローナの不可解な面が明らかになってきた。極端な人嫌いにもかかわらず、深夜に男と出歩く癖があったこと。出所が分からない大金を所持していたこと。そして、密かに売春をしていたこと…謎めいた美女は、巧妙な殺人計画の犠牲となったのか。しかも、わたしの身辺にも、何者かの卑劣な罠が迫っていた。女探偵キンジー・ミルホーンの鋭い観察眼が、謎に包まれた事件の裏にある人間心理の暗部をえぐりだす。百万人に愛読されるミステリ界のトップ・シリーズ、待望の最新作。
五年前に死んだはずの不動産会社社長を捜しだしてほしい-保険会社の副社長で、わたしとは古い付きあいのマックが依頼を持ちかけてきた。マックの保険会社が五十万ドルもの保険金を未亡人に支払った直後、当の会社社長がメキシコのリゾートで目撃されたというのだ。問題の男ウェンデル・ジャフィは、当時ヨットで海へ出たきり行方不明となり、後にヨットだけが海上を漂っているのが発見された。遺書があったことと、男が大がかりな不動産詐欺で告訴される寸前だったことから、自殺と断定された。生きているとしたら、なぜ彼は家族のまえにも姿を現わさないのか。どうやって働きもせずに生活しているのか。ウェンデルの生死を確かめるため、わたしは急遽メキシコへ飛んだ。調査にあたる女探偵キンジーの前に、やがて彼女自身のアイデンティティが崩壊しかけるような事件が…人生の岐路に立たされたキンジーが新たな道を歩みだす人気爆発のシリーズ、堂々の第十作。
六年前、妻のイザヘルを射殺した容疑で起訴されたデヴィッド・バーニーは、裁判で無罪の評決を受けた。だが、イザベルの別れた夫は、デヴィッドが莫大な遺産をめあてに殺人を犯したと信じて疑わず、わたしに事件の再調査を依頼してきた。当時、デヴィッドとイザベルは不仲で別居中だったうえ、彼は事件の数カ月前に、殺人に使われたものと同じ型の銃を購入していたという。さらにデヴィッドは裁判の直後、犯行を匂わす発言を知人にもらしていたらしい。新たな手がかりを求め、わたしは事件を探り始めるが、デヴィッドの有罪を裏付ける事実はひとつも見つからない。やはり彼は無実なのか?一カ月後には、法律で定められた出訴期限が切れ、二度と彼を裁判にかけることはできなくなってしまう。あせりを感じ始めたわたしをよそに、タイムリミットは刻々と迫る…。南カリフォルニアの女探偵キンジーがかつてない試練に立ち向かう、人気爆発の全米ベストセラー・シリーズ最新作。
わたし、キンジー・ミルホーンはオフィスとしてカリフォルニア信用保険会社の二階の一室を使っている。そしてそれと引き換えに、ときおり型どおりの保険調査を行ない、不正な保険金請求がないかどうかを調べて、社に提出する。十月末のある午後、こうした疑わしい保険請求の一つがまわされてきた。それはもともと、しばらく前にジョギング中に殺された若い保険精算人が扱っていた一件の書類だった。人的傷害をともなう自動車事故で、ビビアンナ・ディアースなる女性が、むち打ち症、頭痛、筋肉の痙攣などの症状を訴えている。わたしはこの女の実際の居所を追いはじめたが、どうやら女は悪質な保険金詐欺グループとつながりがあるらしい。狡猾きわまりない保険金詐欺の実態を暴くため、わたしは別の女になりすまし、おとり捜査に身を投じることになる。南カリフォルニア、サンタ・テレサに立つ爽快な風、女探偵キンジー・ミルホーンの魅力が爆発する全米ベストセラー最新作。